いつか名付けた野良猫 今日は未だ来ないようだ
独りになりたがるのに 寂しがるんだねえ?
拝啓、そぼ降る雨の夜々 魂暗い午前三時
並べられた標本の中で夢を見ていた
幼子の吐く駄々のように 喧(ののめ)き呻(うめ)く波のように
傅(かしず)くように縋るように今日を生きて《明日も生きた》
落日に消ゆ街のように 寝台で膿む花のように
泥雨を翔ける鳥のようにその身を汚して
さめざめ落ちていく暗涙の雨に溺れて
生きた温度すら無くしてしまった
繋がれたその手をどうか離してくれないか
あなたの温度すら奪ってしまうから
拝啓、篠突く雨の午後 茶色の翅は濡れに濡れて
割れた毒薬の壜の中で息を殺した
悼(いた)みに咽ぶ痛みさえも 物狂おしい孤独さえも
別離に流す泪さえもとうに枯れて《今は眠れ》
飢(かつ)え求めた光を追え 白い提琴(ヴァイオリン)の鳴る方へ
全て漠とした夢の中で君に会えた
吐き捨てては過ぎる深泥の日々に沈んで
確かなしるしすら淀んでしまった
差し伸べたその手をどうかしまってくれないか
あなたのその手すら汚してしまうから
古く色の褪せた一冊の詩編に
とうに捨て去ったあの日の僕を見た
自分が自分であり続ける限り
毎夜、悲しみを数えるのだろう
さめざめ落ちていく暗涙の雨に溺れて
生きた温度すら無くしてしまった
繋がれたその手をどうか離してくれないか
あなたの温度すら奪ってしまうから
夜の雨が見せた陸(ろく)でもないような悪夢さ
光の届かない天幕の舞台だ
ここにいることさえ叶わぬのならばいいさ
あなたを照らす灯になれるのであれば
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