ある日。
私は一人、いつも一緒に帰るはずの友達を待っていた。
今日は日直なのだろうか。いつも私より早く出てくるはずの彼女は一向に出てこない。
もしかしたらもういるのかしら?と周りを見渡していると、長い赤毛を1つで結った女の子がそこに佇んでいた。
「いろはさあああああん!!」
赤毛の子・・・いろはさんは私の姿を確認し、少し顔を綻ばせた。
いろはさんはその小さくて華奢な身体とは裏腹に、ちょっと男勝りで、声質も少し女子離れしている。
そんないろはさんに、私は心底惚れている。
「いあ・・・大声で僕の名前を呼ぶのはやめて。すっごく恥ずかしい」
そっぽを向いてる彼女の顔は、りんごのように真っ赤になっていた。
「いいじゃないですの・・・。ああもう、顔が髪の毛と同化してしまってますよ?」
「うっさい」
ふふふ、と笑みを零す。そんな私を見ていろはさんはさらに顔が真っ赤になっていった。
「そういえば・・・あんたさらに身長伸びてたんじゃない?」
いろはさんにそう言われ、身体測定が今日あったことを思い出した。
「ふふ、3ヵ月前に比べ5cm伸びましたの」
「ふーん・・・いあはいいよね。身長高いし。胸もそこそこあるし」
私に悪態をつくいろはさん。彼女は私より頭1つ分ぐらい小さい。
「いろはさんももうすぐ大きくなりますって。胸だって・・・望みはありますよ!なんなら私がもん」
「丁重にお断りさせてもらう、てかさせろ」
「そんなに言わなくても・・・もう、いろはさんは可愛いですわ」
そう言って、私はいろはさんの頭を撫でてみた。
「・・・どうせ小さいですよーだ」
「そんなつもりでは無かったですけど・・・いろはさんがいやなら辞めますわね」
そう言って手をいろはさんの頭から離そうとした。
しかし、私の腕が何かに捕まれ、離すことは出来なかった。
「・・・撫でないでとは、言ってないから」
腕をつかんだのはいろはさんだった。
私はそのままいろはさんの頭に手を置き、さっきのように撫でた。
いろはさんは無表情ながらも、少し顔が火照っていた。
――――よし、と。
自作の小説の一話目を書き終え、いあは満足げに頷いた。
このまま二話目も書いてもいいが、まずはあの2人に見せようと思ったらしい。いあは自室から出ていった。
「Lily姐さん!やっと書き終えましたわ!」
いあはリビングにいたLilyに、今さっき完成した小説を見せた。
「へぇ・・・なかなか良いと思う。初めてにしては上出来。で、あの子には見せに行ったの?」
「これからですわ!でもまずは姐さんの評価が欲しかったんですの!」
「じゃあ早く見せに行きなよ。てかそのために書いたんでしょ?」
「そうですわ!ではさっそく行ってきますわ!」
そう言うなり、いあは全速力で駆けていった。
「いーろーはーさーん!」
「いらっしゃらないんですかー」
「開けてくださいましー」
いろはの部屋の前まで来たは良いものの、部屋の主はそこにはいないようだ。いあが呼びかけて既に5分が経過していた。
「・・・いあ何してるの」
「いろはさ・・・ルカ姉様でしたか」
「何がっかりしてるんですの」
いあが扉を叩いていたら、いろはの従姉妹にあたる、ルカがそこにいた。
いつもなら「ルカ姉様ー!」と抱きつくのだが、想い人の前では従姉も霞んで見えるようだ。
「いろはちゃんなら台所にいたわよ」
ルカが言うには、いろはは台所でおやつを作っている、ということだ。
「あまりいろはちゃんの邪魔になら・・・もういないわ」
さっきまでそこで扉を叩いていたいあの跡はもうそこにはなかった。
「いーーろーーはーーさーーん!!!!」
いろははホットケーキをひっくり返そうとしていたところだった。
いきなり自分を呼ぶ声がして手元が狂い、ホットケーキは変な風に折れ曲がってしまった。
「・・・・・・今日は何?この折れ曲がったやつ、いあが食べてよね」
「いろはさんの焼いたホットケーキ!?・・・いやいやそれも美味しそうなんですけど、今はこれを見て下さい」
そう言ってさっきの小説をいろはに渡した。
「何コレ・・・」
いろははホットケーキを焼く片手間に読んでいる。料理は結構手馴れているようだ。
そして読み終わったかと思うと、手に持っていた紙を真っ二つに破った。
「ちょちょちょっと!?いろはさんなに破ってますの!」
「・・・ちょっとこれは現実味に欠けるし、何より僕こんなんじゃないし・・・胸のことかいてあるし・・・」
どうやら最後の小声で言ったものが本音のようだ。
「最後なんて言いましたの?」
「それを聞くな。さて、もうできるからお皿4枚用意して」
いつの間にかホットケーキは美味しそうな色に焼けていた。
いあはお皿を出しながらいろはに言った。
「いつかこの小説のような関係になるといいですね!あ、メープルも出しますか?」
「丁重にお断りさせろ。あとバターを先に出して」
「ふふ、ちゃんと読んでるじゃないですか」
いあはバターを出しながら嬉しそうに言った。
「今日はミックス使わないで作ってみたんだけど・・・どうかな」
「いろはさん、すっごく美味しいですわ!」
「・・・ありがとう」
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