「やーみくん♪」
パンキッシュは、いつものようにあるモジュールに話しかけた。
しかし、彼は冷たい視線をパンキッシュに向ける。
(キミ、何がしたいの?)
鬱陶しくまとわりついてくるパンキッシュをよそに、彼ーーー及びストレンジダークはスピードを落とさずに歩く。彼は恐ろしく、だが可愛らしい表情をしていた。
(いつからこんなことになったんだっけ・・・・。えっと・・・)
ストレンジダークは、記憶を辿っていた。
そんなこともお構いナシでパンキッシュはストレンジダークに話しかける。
「ねえねえ、闇くん。聞いてる??」
聞いてない、と言うか・・・。
「聞くつもりもない。ボクには青と黒がいてくれればいいんだ」
(・・・・・?あ、そうだ。あの時からだ・・・・!)
ストレンジダークは、自分の発言から、今に至るまでに、いつパンキッシュがしつこくなったのか、を思い出した。
あれは、三ヶ月前ーーーー・・・
ストレンジダークが、いつものようにブルームーン宅に遊びに行った時の事だった。
ブルームーンの家に着いたストレンジダークは、人差し指でインターホンを押した。
《ピーンポーン》
するとすぐさまにブルームーンとブラックスターが出迎えてくれた。
「おう!ダークじゃん!」
ブルームーンがニカッ、と笑い、ストレンジダークの頭を撫でた。
「まあ、上がって?今お茶用意するわ」
ブラックスターはいつものポーカーフェイスを少しだけ崩していた。
「ありがとう!お邪魔します」
そして、ストレンジダークは彼らの家に上がった。
ブルームーンにとっても、ブラックスターにとっても、ストレンジダークは、大切な仲間だった。
ストレンジダークは特定のモジュールの前ではかなり素がでるようで、その性格の変わりようは、凄まじかった。
それは、もちろんブルームーンとブラックスターの前だけであり、ストレンジダークが、彼らをどれほど信用しているか、が分かる。
実は彼らも、性格上、中々仲のいいモジュールがいなく、ストレンジダークが唯一、と言える存在だった。
「あ、青!黒!CDありがとう!」
「おー!」
「聞いてもらえたかしら?」
「うん!青も黒もカッコ良かったよ~!!」
「ありがとな!」
「ギターをしてた甲斐があったわ」
いつものように話していた、その時。
急にインターホンがなった。
それが、今へのキーだ。
「ちょっと待っててな」
と言い、ブルームーンは席を立った。
しばらくして、ブルームーンはその客を連れて来た。
そこにいたのがーーーー・・・
パンキッシュだった。
「こんにちは。黒ちゃんと闇くん」
「・・・・こんにちは」
「・・・・どうも」
ブラックスターもストレンジダークも、彼を好いてはいなかった。むしろ、苦手だろう。
故に、『嫌です』『来ないで』『話しかけないで』オーラを出しまくっている。
しかしパンキッシュはめげることもなく、笑顔で話をする。
「もー、2人とも怖いな~!でも、突然ごめんな。悪いことしちゃっただろ?青」
「いや、大丈夫だよ」
ブルームーンは別に彼が嫌いではなかった。
だが、好きか、と聞かれたら、NO、と答えるだろう。
パンキッシュの破廉恥な服が気に食わないらしい。
服を変えれば、きっとブラックスターやストレンジダークもあからさまに嫌な態度はとらないだろうが、彼らはデフォルトの洋服を変えるためのモジュール達だ。
いつものレンを変える為の彼らが、その自分自身の服を変える、なんてことは出来ない。
だから、これでずっと演っていかなければいけない。
「まあ、お茶でもどうぞ」
ブラックスターはパンキッシュにお茶を出した。
客である以上、これくらいはしなくては。
「あ、ありがとう。黒ちゃん」
パンキッシュはお茶を啜る。
「・・・・なあ、パンキ。どうして此処に?」
ブルームーンは気になっていたことを聞いた。
ストレンジダークは、俯き加減でブルームーンを見ている。
「いや、渡したい物があってね。これを、黒ちゃんと青に。ついでに闇くんにも渡そうと思ってたんだ。はい」
パンキッシュは鞄から黒い箱と、青い箱と、エメラルドグリーンに近い黄色い箱を取り出して、3人に手渡した。
「?これは?」
ブラックスターは、正方形の包みを見る。
「開けてからのお楽しみ♪」
パンキッシュは、さあさ、開けてみて、と3人に言う。
ガサッ・・・・
「!!?」
「!!」
「・・・・??」
開けた途端に、3人からそれぞれ違う表情になる。
ブラックスターは驚き、ブルームーンは喜び、ストレンジダークは何で?と顔を顰める。
「・・・・もらってくれる?」
パンキッシュは、恐る恐る聞いた。
「もちろん、ありがたく頂くわ」
「まさか、コレくれるなんて・・・・」
「ありがとな!パンキ!!」
それぞれの箱には、今、彼らが欲しい、と思っていたものが入っていたという。
黒い箱には、ストレンジダークとブルームーンのストラップ。
青い箱には、ブラックスターとストレンジダークのストラップ。
黄色い箱には、ブルームーンとブラックスターのストラップ。
それぞれ、大事な仲間の印が欲しかったんだそうだ。
帰り道。偶然時間の重なったパンキッシュと、ストレンジダークは帰っていた時。
ストラップのおかげで、ストレンジダークは、ちょっぴりパンキッシュを見なおしていた。
だが、それもつかの間。
突然パンキッシュがストレンジダークの手を取り、歩き始めた。
ストレンジダークの理解思考回路が一瞬、いや、もっとだろうか。
止まった。
顔が強張るストレンジダークを他所に、パンキッシュはずんずん進んで行く。
・・・・しばらく歩いた所の公園。
彼らはベンチに腰掛けていた。
ストレンジダークの表情は、驚く程に歪んでいる。
パンキッシュは、アワアワ、と必死にストレンジダークに謝っていた。
「ごめん・・・!つい・・・闇くんが可愛くて・・・!」
「エ??イマナンテ?オッシャリマシタ?」
「ひいいい!ごめんっ!気を付けるから!今回だけは許してください~!!」
必死になっているパンキッシュは、誰が見ても笑えるだろう。
・・・・しかし、ストレンジダークの機嫌は、一行によくなりそうにない。
「・・・・今回だけ。今回だけ許してあげる」
「え!?」
ボソッ、と呟いてそっぽを向いたストレンジダークの頬は、薄っすらと赤みがかかっていた。
多分、恥ずかしかったのだろう。
が、鈍感なパンキッシュは全く気づかない。
「ありがとう~!!また遊び行くから!じゃーねー!」
「来ないで」
「そんな~!ツンデレンジくんもかーわいいな!」
いい方向に捉えてしまうパンキッシュは、嬉しそうに手を大きく振りながら、自分の家に帰って行った。
「はぁ・・・」
厄介な奴に絡まれた、とストレンジダークは悟ったが、次はいつブルームーンとブラックスターの所に遊びに行こうかな、などと考えているうちに、とっくにパンキッシュとの出来事を忘れてしまった。
それ以来だ。彼・・・パンキッシュがストレンジダークにつきまとうようになったのは。
「やーみくん??おーい?遊ぼう?」
はっ!と現実に引き戻され、ストレンジダークは冷たく言い放つ。
「なんでボクがキミと遊ばないといけないの?理由なんてないでしょ?」
ストレンジダークは、内心そろそろ終わるだろう、と考えていたが、やはりパンキッシュはそう簡単にはめげない。
「いいじゃん!だって、俺ら同じだし!」
「・・・・・え?」
ストレンジダークはつい、聞き返す。
「“同じ”・・・って、どういうこと?確かにボクらは同じ“レン”だけど、ボクはストレンジダーク。キミはパンキッシュ。同じじゃない」
その通りだった。
彼らは、違うモジュール。そう考えるのが妥当だ。
しかし、パンキッシュはまた言った。
優しい、諭すような目で。
「俺らは同じだ・・・・」
と。
「いや・・・言い方が違ったな・・・・。俺らの“立場”が同じなんだ。・・・・思い当たる節はない?」
立場・・・・・。
ストレンジダークの動きが止まる。
(節なんて、節なんて・・・・。)
彼の額には、大粒の汗。
「・・・・大ありだよ。なんで、キミはわざわざボクの傷を抉るの?」
腹立たしくなったストレンジダークは、キッ、とパンキッシュを睨みつける。
「ごめんごめん。でもね、いい加減気になると思って。俺がずっと闇くんといたい、って言う理由」
確かに、ストレンジダークはそれ以上に知りたいことは今はない。
・・・・まあ、先程の話で、大方予想はつくが。
「・・・・・・」
ストレンジダークは黙り込んだ。
色々と回想しているのだろう。辛い思いを、沢山、沢山。
「・・・・まあ、今はいいか。俺もしばらく闇くんと遊んでたいんだ。・・・・いい?」
パンキッシュは、ストレンジダークを焦らせないように、気を使ったのかもしれない。
ストレンジダークが、やっと振り絞り、出した言葉。
それは、今までのパンキッシュを肯定した。
「・・・・いいよ」
ストレンジダークのバッグには、ブルームーンとブラックスターのストラップが輝いていた。
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