「今度のお休み、皆で動物園にでも行こうか」

マスターがそう言ってくれたのは、秋も深まったある日の事だった。

「どうぶつえん! わぁい、行くですー!」
「はしゃぎすぎないようにね。うっかりはぐれたら、おやつにされちゃうよ?」

小躍りしそうな勢いのサイトに釘を刺す。初めての遠出だし、『種KAITO』のサイトは手乗りサイズだ。
自覚が無いのか解ってないのか、サイトは むっと頬を膨れさせた。

「ますたー、おおきいのがいじわる言うです」
「いやリアルに在り得る……ライオンの檻とかに迷い込んじゃったらペロっとひと呑み……!」

コドモの不平に答えるにも真顔――流石は俺のマスターです。
得たりと口角を上げる俺と対照的に、サイトは「えぇっ」と顔色を悪くする。けど、そこで終わらないのがサイトで……

「ま、負けないですー!」
「って戦う気?!」
「そこは迷わない方に尽力しなよ!」

握り拳で宣言するちびっこに、マスターとふたり、慌ててツッコミを入れる羽目になったのだった。



 * * * * *



そうして足を運んだ動物園で、サイトも俺も充分楽しんで。
ほんの少し、マスターと行動を別にした――その途端、事件は起きた。

「君、ちょっといいかな」
「はい? 何で――ぅわ?! 何する……っ」
「"KA-P-01"、刻印を確認。ターゲットに間違いありません。確保します」

――『 確 保 』?



何とか振り払って逃げ出して、サイトとふたり身を潜める。

「おおきいの、悪者におそわれたです。なんで?」
「わかんないよ……でも、多分あれは、」

"KA-P-01"を探してたあいつらは、

「俺を造ったラボか、メーカーの関係者だ」



逃げ隠れするだけなら簡単だった。≪VOCALOID≫の聴力を以ってすれば、追っ手の足音や息遣いで位置を推測するくらいは可能だ。

だけど、マスターが狙われた。

「だめです おおきいの、捕まるですっ」
「捕まりに行くんだよ、狙いは俺だ。だからマスターはお前が護るんだ――いいな、サイト」
「お――お、兄――」



 * * * * *



マスターに手出しをさせない為に捕まって、気が付いたら暗い狭い部屋に閉じ込められていた。
此処は何処だろう。俺はどうなるんだろう。不安で、怖くて堪らない。帰りたい。



 「≪KA-P≫は大人しくしているようだな。今の内にさっさと済ませろ」
 「はい。しかし、やはりこのままでは無理です。プロテクトが」
 「そうか。では、」

 「 邪 魔 な 記 憶 の 消 去 を 」



――マスター。貴女の処に、帰りたいです。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【KAos×KAITOful】Crossfade【予告】

次はこういうのを書きます予告。
あくまでも『予告』なので、多少変更が入る可能性もありますが^^;
『KAos~』&『KAITOful~』と少々リンクした話になります。

両方を読んでいないと設定とか微妙だと思うので、「前のバージョン」にそれぞれの概要を載せておきます。全力でネタバレなので、これから読もうかな?という方は回避推奨です。
ついでに新シリーズの登場人物もちょろっとご紹介。

 * * * * *
【KAITOの種 本家様:http://piapro.jp/content/aa6z5yee9omge6m2

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ブログで進捗報告してます。各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

閲覧数:303

投稿日:2010/11/25 18:05:10

文字数:1,108文字

カテゴリ:その他

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