君は いまさら・・・ なんていうのかな。
自嘲の笑みを浮かべてメモリから君の名前を探し出す。
あいつに伝えなきゃいけない言葉があるから―――
夏の午後。
蝉がうるさく鳴いている。
「・・・っ、ばか!!」
ばしゃっ、・・・とよくドラマにある感じで彼女に水をかけられた。
ずぶぬれだっていうのに頭はやたら醒めている。
予想通りの反応。
しょうがない・・・よな。
「お、お客様。タオルお使いになられますか?」
「・・・いりません。」
テーブルのはじにちょこんとおいてある
レシート――どうやら水でぬれてはないなかったようだ――を
とってレジに向かう。
周りからは好奇の目線。
でも今の俺にそんなもんは気にならない。
だって
「サヨナラ。」
今日でこの街をでるんだから。
人でごった返す駅のホーム。
俺の荷物はいつも一緒だった相棒のギターと
ちょっとの荷物が入ったショルダーバック。
『4番線―――列車が到着いたします。』
無機質なアナウンス。
俺の門出には見送りなんているはずもない。
さびしくはない。
後悔しないって決めたんだ。
始まりの一歩ふみだして列車にのる。
ここで俺の今までの人生は終わる。
今までの記憶もすべて捨て去って。
ただ・・・あいつの最後に見た泣きそうな顔が、
心にちくりと刺さったような気がしたけど。
乗った列車の中、窓の外の真っ暗な様子を見てまどろむ。
(ねぇ。もし今この瞬間にさ 世界が消える ってなったらさどうする?。)
(・・・なんだよ、急に。そんなことあるわけないだろ。)
(だからもしだってば・・・。)
(で?)
(はぁ。夢というものがないなぁ!!)
(なくてけっこう。)
(むー。)
(じゃあおまえはどうなんだよ?)
(わたし?えーっと・・・)
(ぜったいはなれない!!)
(なんだよそれっ。)
(ちょっと!!わらうなぁ!!)
ぱちっと目を開く。
「ゆ、ゆめ?」
『・・・に到着いたしました。』
あいつとの記憶。
振り返らないはずだったのにな。
「っと、降りなきゃ。」
でも物思いにふけっている時間なんて俺にはない。
「レオくーん!!」
駅を出てすぐの場所に見知った顔を見つけた。
「ちわっす。」
「よかったー。迷ってるかと思ったよ。」
ニコニコと笑って出迎えてくれたのは春沢さん。
「そんなへましませんって。」
俺を"引っ張り出して"くれた人。
「じゃあさっそく事務所に行こうか。」
「はい。」
そしてあいつのことも知ってる。
「そういえばさ、あのかわいこちゃん。どうしたの?」
「えっと…」
「あ、言いにくいなら言わなくていいからね!!」
事務所へ向かう車内で唐突に春沢さんが話しかけてきた。
俺がどんな選択をしたのか気づいてるんだろう。
空気を読んでかどうかは知らないがそれ以上話すことはなかった。
「君がレオ君だね。」
「峰レオです。よろしくお願いします。」
春沢さんと別れて俺の担当になるという人と話すことになった。
「知ってるかもしれないがこの事務所の概要を話させてもらう。」
春沢さんからも聞いていたが、
ここはインディーズバンドとかローカルで音楽活動をしてる若者を支援するための会社。
ちょっとしたオーディションに半分本気、半分気まぐれでだした音源が
ここのお偉いさんの耳に留まったらしく
俺の雇用が決まった、というわけだ。
人生って分かんないもんだな。
「だいたいこんな感じかな。レオ君にはソロとして活動してもらうことになる。」
「分かりました。」
「よし、じゃあとりあえず寮に行こうか。」
「ふぅ・・・。」
今日も一日疲れた。
部屋に帰った瞬間、ベッドにダイブする。
ここに来てちょうど2か月経った。
夏真っ盛りだったこの場所がもう秋のにおいを漂わせている。
最近ではちょこちょこ活動の範囲も広がってそれなりに忙しい一日をおくっている。
「忙しいのはいいことだっていうけどな・・・」
天井を見上げてつぶやく。
『ちょっと名前が売れてきてるからって調子のるなよ』
『どうせすぐ落ちるんだろ』
『最近調子がよくないわね』
『その曲はイマイチじゃないか?』
先輩、同期からは妬まれてトレーナーには不調だと言われ
春沢さんには曲のキレがわるいといわれる。
「やることやってんのに」
弱音は吐かないと決めてきた。
でも、
「ちょっと限界きてんのか?」
そう自覚した瞬間、がばっと起き上がり携帯に手を伸ばす。
そういえば今日は重要な電話するから帰ったら手放すなって言われてたのにな。
カチカチとボタンを操作する。
こっちで知り合ったやつらのメールが2、3通来ている。
「あとは、っと・・・」
留守電??
しかも非通知。
耳にあてて内容を確認する。
「これで重要なやつだったら笑えないないな。」
『レオ…くんですか?』
っ!!
う、そだろ。
『この間のラジオ、聞きました。』
『元気そうで安心した。』
『・・・がんばってね。』
切れた。
「マジかよ。」
あの声、口調・・・。
「くっそ。」
弱ってる時にかけてくんなよ。
自覚していなかったしずくが一粒落ちた。
「しょっぱ。」
その唇にあたったその一粒は
まるであのはじめてのキスのように
しょっぱくて甘かった。
「最後の言葉、バレてたのかな。」
思い出すのはあいつに初めて会ったとき。
気持ちを自覚したとき。
初めて思いが通じたとき。
全部が全部不揃いで
なんで一緒にいれるの
なんてしょっちゅう言われた。
それでも、
心だけは通じてたと思うんだ。
そして、今も
思い切ってメモリを開く。
どうやっても消せなかった君のアドレス。
「いつかきっと、いや絶対。」
"お前に俺の大きな花が空に浮かぶのを見せてやる。"
都会の濁った夜空を
見上げて
誓った。
空へ誓う、君に。
absorbの名曲『Fire◎Flower』で自己解釈文を書いてみました。
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Messenger-メッセンジャー-
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So this is why we are fair and square at the race
Besides we never do any kind of cheating at all
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DJ ANDREA
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