1.オンラインRPG  その2


私のパソコンがゲームデータをダウンロードしている間、レンはお弁当を食べながら自分のパソコンのほうでゲームをしている。しかし、よく見ると画面を見ているだけでほとんど操作をしていない。するとどうしたことか、テレビを見るようになった。
 
「レン君、今、ゲームをしてたんじゃ・・・。」
 
 私はレンに尋ねた。
 
「えー?あーいいの、いいの、今放置して稼いでるだけだからさ、別にいいの。」

 私は彼が何を言っているのかさっぱり分からなかった。しかし、この日から数週間後、レンの言ったことを理解し、彼と同じことをやるようになるとはこの時の私は夢にも思っていなかった。
 
「よーし、リン、画面見てみろよ。」

 私のパソコンの準備が整ったらしく。レンはテレビを消した。
 自分のパソコンの画面を見るとゲームのオープニングムービーが流れていた。壮大なスケールの世界観、鎧を身につけ剣を持った人間、人間のようで人間でない人間と同じ言葉を話す人?達、妖精と呼ばれる生き物、ドラゴンやそういった怪物等がオーケストラ演奏の迫力のある音楽に合わせて次々と登場してくる。率直な感想、私は男の子が好きそうなよくあるただのゲームだなと思った。ゲームの内容まで見たわけでもないのに、私はこんなものに夢中になっているレンも子供だなと年下の男の子を見るような目でレンを見た。いつの間にかレンは自分のパソコンのほうに手を向けており、その目は真剣そのものである。
 
「それじゃーよ、まずお前のID作るからよ。スタートボタンクリックしてみろよ。」

 めんどくさいことになってしまった。他にやらなきゃいけないことがたくさんあるのに。まぁ、でもしかたないか。私はしばらくレンの遊びに付き合うことにした。
 
「お前が入るサーバは俺と同じな、メアド入れてー、パスワード決めてー、そしたらキャラ作るんだよ。男か女か選ぶんだぜ。」

 当然私は女なので女性のキャラクター、それと種族を人間に決めた。しかし、レンがこう言い出した。

 「あーそのまま、女ってのはあぶないなー。お前男にしとけよ、いや、なんつーかさー、ネットの世界ってのは危険が多いからな、変な大人ってのがいるんだよ、いろいろとな。だから男にしとけ。」
 
 正直私はどうでもよかったのでレンの言うとおりにした。そうしてこのゲームでの世界における私の分身MASATOが生まれた。別に名前に由来や意味はない。その時頭に浮かんできただけだ。
 この後も戦闘タイプだの使う武器、出身地をどこにするか等、これから何処かに働きにでも行くのかと思うくらいいろいろと質問が続いていった。そしていつの間にか母が帰宅していた。
 
 「リン、いないのー?」
 
 母が私の部屋をノックしている。
 
 「レン、リン知らない? あら?」
 
 母がこちらの部屋に入ってきた。一つのパソコンの前に横に並んで座っている私達を不思議そうに見てこう言った。
 
 「あら、めずらしい。2人仲良く座っちゃって、ちゃんとご飯は食べたの?」
 
 私達姉弟は普段あまり一緒にいることはない、朝学校に行くときくらいである。なので私達が一緒にいる姿を見て母はどこかうれしそうに見えた。
 
 「今日もお父さん遅くなりそうね。」 
 
 そう言うと母は私達が食べたお弁当の空箱を持って部屋を出て行った。私達の両親は優しい。めったに怒ったり、しつけがましいことは言わない。おそらくそれは普段ほとんど一緒にいるとこができないのでどこか私たちに申し訳ないという思いがあるせいなのかもしれない。
 私達のパソコンは当然両親が買ってくれたものだ。中学に進学したときレンがほしいとねだり始め、両親はためらうこともせずに買ってあげるとレンに約束した。そして頼んだわけでもないのに私にも買ってくれた。今のレンのパソコンはその時のものではなく2台目になっている。私にも新しいのもを買ってくれると両親は言ってくれたが別に必要ないので、壊れたらでいいよと私は遠慮した。
 

1、オンラインRPGその3へ続く

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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ネットゲームで出会った人達  1 オンラインRPG その2

レンが放置して稼ぐというシーンがあります。その意味を簡単に説明します。
実際にあるオンラインゲームでは、そのゲームによっていろいろとコツやテクニックがあるわけですが、中には時間が経過をすることによって何かを得るといったこともあります。
私が実際にやったことのあるものでは有名なところで三国無双オンライン。戦場に一人行って終了までほったらかしにして終わったらアイテムをもらえます。これを繰り返すことで現実世界のお金を消費することなく貴重なアイテムが手に入ります。
 他にもそのゲームによってさまざまな放置プレイというやり方があります。

閲覧数:77

投稿日:2010/10/17 13:14:59

文字数:1,704文字

カテゴリ:小説

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