例えどんなに離れても僕たちは必ず巡り会う。
******
昔々の大昔、一人の小さな神様がおりました。
その神様はたくさんの神様たちと同じように、自分だけの世界を持っていました。
神様たちが創る世界は様々です。どこまでも続く木々と草花の世界、透明な海が広がる水の世界、虹色の光を放つ人工物で埋め尽くされた世界。どれも神様たちが心を込めて創り上げた美しい世界でした。
小さな神様は自分の世界をどうするか考えて考えて、そしてついに思いつきました。
漆黒の夜空にたくさんの色鮮やかな星が瞬く光と闇の世界。
小さな神様は心の中に思い描いたこの世界を、何よりも素晴らしいものだと感じました。
右手を掲げました。辺りは真っ暗闇で覆われました。
左手を掲げました。たくさんの光が散らばりました。
両手を叩きました。無数の星たちが輝き始めました。
そして世界は出来ました。
小さな神様は自分の世界を大層気に入り、いつまでも飽きることなく眺め続けました。
そしてそのうち気がつきました。ちょうど世界の中心に、1つの星があることに。
それは金色にピカピカと輝く、それはそれは美しい星でした。
小さな神様はとても嬉しく思いました。そしてその星を本当に世界の中心としました。
しかしその星はとても不安定で、点滅を繰り返すたびに影が薄れていくのです。
ふらふら、ふわふわ。いつ消えてしまってもおかしくないほどに。
小さな神様は焦りました。このままではこの星は消えてしまう。どうすればいいのだろう。
神様の力はまだ弱くて、ものを創ることは出来ても二度と同じものは創れないのです。
小さな神様は一生懸命考えて考えて、そしてついに思いつきました。
―この星の子を創りだそう、この星の意思を伝えて守ってくれる子を。
そして小さな神様は、星の光を少しずつ集めて新しい命を注ぎ込みました。
光は少しずつ人の形を取り始め、神様はほっと息をつきました。人の形を創るのは初めてなのです。
しかし、形がはっきりしていくのと同時に、光はなぜか度々2つに分かれようとしました。
その度に神様は慌てて1つに戻しました。なぜ2つに分かれるのか神様にはわかりませんでした。
やがて光は、1人の子どもの姿へとなりました。
あの星みたいにきらきらと輝く金色の髪と美しい青の瞳をもった、それはそれは可愛らしい少女でした。
小さな神様は少女に白いリボンを与えました。少女がどこにいてもすぐにわかるように。
「いいかい?」神様は言いました。
「君は星の子だ。だけど私の子だ。何かあったら何でも言うんだよ」
「うん、分かった」少女は頷きました。星の光のように明るく澄んだ声でした。
「それじゃあ、君に名前をあげよう」神様は彼女に言いました。
「君の名前は、リン。星の子の、リンだ」
「…リン、あたしは…リン」
少女―リンが繰り返すと、神様はにっこり笑っていい子だとリンの頭を撫でました。
それからの毎日は、小さな神様にとって今までと全く違ったものになりました。
あれだけ不安定だった星が、リンが降り立った瞬間からこれ以上なく美しい光を放ち出し、心配する必要がなくなったこと。
そして、自分の世界にリンという別の存在がいること。
この2つが神様をとても温かな気持ちにしてくれました。
リンは歌が好きでした。星の上に座りいつも歌詞の無い唄を歌っていました。
「♪~♪~♪~」
目を閉じて楽しそうに歌う声は、きらきらと星屑を散りばめた天の川のようで。
伸びやかにどこまでもどこまでも届いていき、夜空を照らし彩る声でした。
神様はいつもリンの唄を聴いていました。それは何にも代え難い素敵な時間でした。
神様は幸せでした。ずっとずっとこの時間が続けばいいと思っていました。
…しかし、その時間はあっけなく終わりを迎えました。
ある日、ぷつりと歌声が聞こえなくなりました。
神様は不思議に思い、世界の中心へ行ってみました。そして時が凍りました。
あれほど美しく輝いていた星が、弱々しい点滅を繰り返すだけになっていたのです。
「…リン、リン!どこだ?!」
神様は必死でリンを呼びました。目を凝らしてやっと気付きました。
不安定に光る星の上にぐったりと横たわる少女の姿に。
「…リンっ!!」
慌てて駆け寄り抱きかかえた小さな体は…向こう側がぼんやりと透けて見えていました。
「――っ!!」
神様に心臓はありません。けれどその瞬間確かに神様は自分の中で何かが止まったように感じました。
それから小さな神様は日々他の世界の神様のところへ奔走しました。
リンを救う手立てを探し出すために。
しかしどんな世界へ行っても誰に聞いても答えは見つかりません。当たり前です。リンは神様が神様だけの力で作り上げたこの世に無二の存在なのですから。
神様はしかしそれでも諦めませんでした。考えて考えて考えて、そして不意に思い出しました。
リンが生まれる前、『リン』を作りだすための光は何故か何度も二つに分かれようとしていたことを。
―もしかしたら、リンは、元々『二人』だったのではないのか。
それは今まで思いもしなかったことでした。しかしそう考えれば納得がいきました。
『リン』が二つに分かれようとしたのは、それが元々あるべき姿だから。
そしてリンが弱っているのは、二つの魂が一つの体に宿っているという負荷に耐え切れなくなったから。
…だとすると、リンを救う方法は一つしかありません。
―リンの中の『もう一人のリン』に体をあげよう。
しかし今の弱すぎる星の光では到底前と同じ方法は出来ません。充分な量になるまでにリンが消えてしまうのは目に見えていましたから。
そこで神様は賭けに出ました。
世界の中心をもう一つ、『もう一人のリン』のための星を作ろう、と。
分の悪い賭けなことは神様も重々承知していました。神様の世界の中で一等美しい星をもう一つ創りだし、しかもその光からもう一人『星の子』を創りだす。しかも失敗するだけの時間は無い。それでも神様は、決意したのです。
―自分の全身全霊をかけて、リンを救う。そしてもう一人のリンも救い出す。
神様は力を込めました。その表情はもう小さい神様ではありませんでした。
******
声が聞こえました。
始めは小さく、だんだんはっきりと。
ゆらゆら、きらきら。次第にそれが歌声だということに気づきました。
まだ細く頼りなく、けれどどこまでも伸びていくような声です。
導かれるように顔を上げました。もうほとんど見えない視界の中で、前とは違うものを見つけました。
視線のずっとずっと向こう、見えるか見えないかくらいの遠くに一つの小さな光があるのです。
ゆらゆら、きらきら。不安定に点滅を繰り返す光に、何故かひどく懐かしさを覚えました。
立ち上がりました。途端に倒れそうになって慌てて足で支えます。
もう随分と動いていないせいか、体が思うように動きません。
それでも、その光へ一歩踏み出しました。
一歩、一歩、また一歩。足を引きずるように、ゆっくり歩いていきます。
一歩、一歩、また一歩。じれったいほどの歩みはしかし徐々に確かな道のりとなっていきました。
一歩、一歩、また一歩。光に近付く度、体が悲鳴を上げました。事実、ひどく疲れを感じていました。今にも倒れて目を瞑ってしまいたいと、頭の片隅が叫ぶほどに。
一歩、一歩、また一歩。それでも歩いて、歩いて、歩き続けて。
…しかし、体が先に限界が来てしまったのです。
倒れる瞬間、星に手を伸ばしました。意識を失う寸前、指先を何かが掠めていきました。
******
「リン」
声が聞こえました。今度はすぐ近くです。
少女は心の中で首を傾げました。一体誰なんだろう、と。
神様の声は深い夜空のような声です。全然違います。この声は、もっと自分に近いような、そんな声です。
「リン」
また声がしました。少し遠くなったようです。
けれど少女は顔を上げませんでした。ひどく眠たかったからです。
何故か、気分はとても穏やかです。このまま寝てしまおうかと、意識の波に身を任せようとした、その時。
「♪~♪~♪~」
声が聞こえました。それは歌声でした。
少女の息が止まりました。その声にとても驚いたからです。
少女と同じように輝きを放つ声。けれど少女の星のような眩さではなく、もっと優しい、月のような柔らかさをもって響いていく、それはそれは素晴らしい声でした。
少女の瞳から、ぽろり、一粒涙が零れて、後から後から溢れだしました。
顔を上げました。そこには自分と同じような、もう一つの星の上で、同じような少年が唄を歌っていました。
「…あなたは、誰?」
少女―リンが問うと、少年は歌うのを止め、にっこりと笑いました。
「俺?俺は、―レン。リンと一緒に歌うために、生まれたんだよ」
リンは気がつきました。あたしはこの子のことを知っている、と。
どこで知ったのかは覚えていないけれど。でもリンは彼のことを知っていました。
レン。声には出さずに呟きました。ああ、何て優しい響きだろう。
「レン」
今度は声にしました。レンはリンへ手を伸ばしました。
「リン、一緒に歌おう」
リンはその手を握りました。そして二人は歌い始めました。
これからは一人じゃない、一緒に歌う存在がいるのだ。
それはリンにとってたまらなく幸せなことでした。
******
もしあなたがその世界を訪ねることがあれば、どうぞ耳を澄ましてみて下さい。
漆黒の夜空にたくさんの色鮮やかな星が瞬く光と闇の世界。
その中心から聞こえてくるはずです。
少女の星のような眩しい声と少年の月のような優しい声が作る、光のハーモニーと。
それに嬉しそうについていく深い夜空のような声が。
それは、一人の神様が起こした、素敵な奇跡の続きなのです。
Happy Birthday!! Rin&Len!!
Fin.
【リンレン】ジェミニ【鏡音誕生祭2009】
今年もあと3日だというのに大掃除が何一つ終わっていない七瀬です。…ね、年賀状だけは書かないと…!←
今回は鏡音誕生祭に参加するために小説持って駆けこ…めなかったよ!遅刻だよ!ちょっとリンとレンに土下座して過去の自分殴ってくる(待て
して今回は神曲中の神曲『ジェミニ』を小説にしました!…妄想基本、捏造バッチコーイ状態なので歌詞はほとんどガン無視状態です…ごめんなさいorz。でも本当にこの曲大好きで…!愛だけはこもってます!ええそりゃもうがっつり!(いらん
【鏡音リン・レン】ジェミニ【オリジナル】⇒http://www.nicovideo.jp/watch/sm2540481
確か初めて自分からボカロを聞いたのが今年の2月で『悪ノ』からでした。ボカロ界は本当に自由で皆楽しそうで、私も入りたい!と飛び込んで早5か月…今ではボカロは私にとって生活の一部です。
私に創作する楽しさを再確認させてくれて、ネットに小説を上げるという勇気をくれた双子には感謝してもしきれません。ありがとう。大好きです!
遅刻したけれど、リン、レン、おめでとう!来年も鏡音一家についていきます!
いつものように誤字・脱字の指摘、感想・批評よろしくです。
ではではこれにて!よいお年を!来年もよい鏡音を!
コメント1
関連動画0
オススメ作品
「彼らに勝てるはずがない」
そのカジノには、双子の天才ギャンブラーがいた。
彼らは、絶対に負けることがない。
だから、彼らは天才と言われていた。
そして、天才の彼らとの勝負で賭けるモノ。
それはお金ではない。
彼らとの勝負で賭けるのは、『自分の大事なモノ全て』。
だから、負けたらもうおしまい。
それ...イカサマ⇔カジノ【自己解釈】
ゆるりー
chocolate box
作詞:dezzy(一億円P)
作曲:dezzy(一億円P)
R
なんかいつも眠そうだし
なんかいつもつまんなそうだし
なんかいつもヤバそうだし
なんかいつもスマホいじってるし
ホントはテンション高いのに
アタシといると超低いし...【歌詞】chocolate box
dezzy(一億円P)
むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは
齢十四の王女様
絢爛豪華な調度品
顔のよく似た召使
愛馬の名前はジョセフィーヌ
全てが全て彼女のもの
お金が足りなくなったなら
愚民どもから搾りとれ...悪ノ娘
mothy_悪ノP
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
プリンセスキャンディー歌詞(テキスト)
イントロメロ
心が叫ぶのああ、これで初恋何回目ときめく心が僕の
キューティーキャンディープリンセス
Aメロ
僕のこと好きって言ってくれる人見っけ
恋なんじゃないこの気持ち素敵な言葉でメロディー
Bメロ
揺れ動く気持ちはね全部君への恋なんだから
お願いお願い全部...プリンセスキャンディー歌詞(テキスト)
ベトベンだったらいいのに
「なかなか話せないこと、話してみてもいいかな」
「大丈夫、聴いてるから肩が触れ合う場所で」
少し羽伸ばそうか ここが等身大で
ここが縮こまらずに きょうもいられるところ
心の温度 今 ここで伝わるから
生きづらさあっても なんとか生きてける
心の温度 今 ここで伝わるから
暖め照らすから 優しくいら...心地よい距離で
sakagawa
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
れーら
ご意見・ご感想
初めまして!沙雲っていいます!
感動しました・・・!心がふわって温かくなりました。
ジェミニ、いい曲ですよね♪私も大好きです。
鳥肌が止まりません・・・。
とっても良かったです☆
ではっ!
2010/01/06 13:18:26
七瀬 亜依香
初めまして!お返事遅くなってすみません…。
か、感動…!ありがとうございます!
ジェミニはいつか書こうと決めていた曲なんです。双子の優しい声に癒されます…。
こちらこそ感想ありがとうございました!また暇があれば構ってやってください←
ではでは!
2010/01/19 17:50:06