魔女がやって来た

いいな　いいな　採れたていいな
蜥蜴の着ぐるみ果樹園
今度全部奪いに行こう
拾った鱗の鞄を持って
いいな　いいな　安くていいな
燻ぶる行進　商店街
今度全部奪いに行こう
死体の振りして脅かして
いいな　いいな　速くていいな
車輪を転がす用心棒...

あまねく星落ちた小雪の頃
土くれに変わり行くのを目にし
赤い円匙（えんし）片手、少年が一人
ポツリと私の前にしゃがみこんだ
サクリと音を立てて抉るのは
月が目を背けるような物で
痩せた腕は黒く荒んでゆく
これは私、エムリの木の話
どれだけ語ろうとも話そうともなじろうとも届かない言葉
沢山の葉、揺れる...

１
君が僕を
はじめて呼んだ日を
桜の色よりも
淡く綺麗に
覚えているんだ
色褪せないままに
月日は経ち
変わるものの中で今
君と出会った時と同じ息をする...

あんたら腹が減ったら
飴を舐めりゃいいよ
砕かないように舐めな
色が変わるやつだから
遠くの街で暴動さ
この飴一つで戦争さ
あたしゃ関係ないけれど
酷い話だね
先回り　電柱の陰で　強請るのは紙芝居
ほら　空から空の包み紙　大盛況...

凍えた両手に息を吹きかけて
絡まる寒さに震えてる
今日も同じ場所で迷っているけど
心の羅針はいつも君を指す
荒れてても　凪いでいても　僕はこの航路を行く
海原を駆け抜け　その場所へ
離れても　泣いていても　遠く霞んでも
心のどこかに君がいる限り
時はあるがまま無為に過ぎていく
所在も掴めず怯えてる...

見つけたんだ
うずくまっている
誰なんだろうか
分からないんだ
昼を過ぎて
傾いていく
太陽の陰と
戯れていた
手こずっていた
冷え切ったとこに...