ルイと名乗った女性は瞳を妖しく輝かせていた。
目が合った瞬間、背筋が凍りついたような感覚に襲われた。さっきから何かがおかしいと感じていた。しかし、何がおかしいのか自分自身よくわからなかったし、みんなはもうルイという存在に違和感を感じていないようだった。
さきほどまで、みんなはあんなに巡 ルイに反発していたというのに、今はもういつもの穏やかなクラスに戻っている。テトの顔からも、ルイに対する疑惑が消えていた。
それにしても、ルイ(先生)はクラスのみんなを一瞬で納得させる話術でも知っていたのだろうか。ならば、ぜひその話術を聞いてみたかった。……私は、あの雑音のせいで聞けなかったのだから。
(???)
私はさっき言った自分の言葉に疑問を持った。
…………ざつおん??
雑音って……何の話…………?
あれ、あれっ?
さっきまで、雑音の意味を知っていたはずなのに……思い出せない。
何の話だったっけ……。
確か、確か突然見知らぬ女性が教室に入ってきて、みんなが疑問を持って………それから……
それから?
んっ?見知らぬ女性って……誰の事?
今、教卓にいるのは、巡 ルイ先生だ。私たちの担任の先生………。
頭がボ~ッとしてくる。これ以上考えれば、派手に倒れてしまいそうだ。
「大丈夫…?」
誰かの声で、私は我に返った。
気付けば、先生が目の前で心配そうに私の顔をのぞき込んでいる。
「せ……先生…」
「鏡音さん、大丈夫…?顔色悪いわ。保健室に、」
「だ、大丈夫です……!昨日、寝るの遅くて…、顔色が悪いのはただの寝不足ですから、本当に大丈夫です。」
私はウソの理由を話した。
そう、別に考えなくていい。あれは巡 ルイ先生。私たちの担任の先生。別に違和感など何一つない。
私、ホント何考えてんだろ。笑っちゃうね……。
先生は安心したのか、ほほ笑みを浮かべた。そして、私にしか聞こえない小声でこう言った。
「そう、それでいいのよ。それで。」
意味がわからなかった。
「先生…!どういう意……」
聞こうと思ったのだが、他のクラスメイトの声でかき消されてしまった。
先生は、きれいな桃色の髪をなびかせて元気よく手をたたいた。
「さあ!みんなのお待ちかね、転校生をそろそろ紹介しようかしら!」
「「「イエーーーイ!!!」」」
もう、クラスは大盛り上がり!
「女子か!?男子か!?」 「私、その子見たよ!!」などと転校生を勝手に想像する声が巻き上がった。
その転校生は、私の双子の弟なんだから、など考えながら空気を読み、みんなと話を合わせた。
テトと話したり、みんなと話したり。
このクラスは本当に明るい。きっと、レンもすぐに慣れるよ。
ガラッ
ドアが開く。
レンの姿が、
そこに――……。
私、ずっと待ってたんだ。いつかレンと一緒に学校に行きたいなあってずっと、ずっと。
それが今、叶うんだね。……ねえ、レン……。
気付けば、クラスが笑いに包まれていた。
なんで!?
おそる、おそるレンを見る。
「……え……」
レンが、………倒れてた。…いや、倒れたんじゃない。
バナナの皮で滑って、
転んだ。
***
その後、レンはこう語る。
もう、バナナ食べない。
***
「……ぷっ」
思わず、私も笑いを吐き出す。
なんで、バナナの皮で転んだか、つっこみどころまんさいだが、今は考えないでおこう。
レンは赤面し、悲鳴(?)を上げた。
***
「えーっと、レン君はこれからバナナを学校に持ってこないでくださいね」
「はい。…はい」
レンは未だに赤面している。
結局、レンの席は私の隣になった。
「やっぱり、リンとレンって双子だったんだね」
テトが、ほほをふくらませ言った。
「ごめんごめん。だましたわけじゃないから」
「どうかなー」
テトは会話を楽しんでいるようだった。
――休み時間
私は用事があったので、職員室へと向かった。
◆◆◆巡音ルカ 静かな庭園にて◆◆◆
ここなら人がいない。
私はそういう理由で、庭園に向かった。
予想通り、庭園には誰もいなかった。
私は静かに歌を歌う。
「――~***♪*♪♪」
少し経って、通信がつながった。
「ルカ様。こちら、ネルです。どうなさいましたか?そちらの方は、上手に事は進んでいらっしゃいますか?」
私は答える。
「ええ、おかげさまで。『巡 ルイ』っていうウソの名前を使ったんだけど、だれも気付かなかったわ。私が巡音ルカだってこと。」
「さっすがです!尊敬しちゃいますうっっ!!」
「ふふっ………。だけど…」
「……だけど?」
私は拳をつくる。
「あの、鏡音リンって子は意外だったわ。私の歌詠式(かえいしき)が、一回で効かなかったの。」
「えっ!!ルカ様の『操り魔法』がですか?」
「ええ……。きっと、あの子は『歌の結晶』を持っている……。そして鏡音レンにもね……」
「……なるほど」
「……もうそろそろ行くわ。あの二人の事をお願い」
「かしこまりました」
そして、通信がとぎれた。
「また、邪魔者が増えたわ……」
嫌な風が吹いた様な気がした。
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