この小説は言わずと知れた名曲、カンタレラのMEIKOバージョンと合わせてみたを小説化したものです。
カイメイ前提のミクメイ要素があります。苦手な方はご注意ください。
MEIKO=メイリーナ、KAITO=カイザレ、ミク=ミクレツィア、MEITO=メイアーノです。
自己解釈の個人的妄想の産物なので、多少はそういった部分もありますが、
ほとんどが歴史や人物像に真に迫っていません。二次創作の偽造設定です。
それでも許して頂けるお心の広い方のみお読みください。
読んでくださる方々のお暇つぶしになれるなら幸いです。
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メイリーナは予想以上に〝美しい〟女性だった。
長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳や、抜群といってもいい均等が取れたプロポーションは一瞥で異性を虜にする媚びた艶を含んでいる。
ミクレツィアを含め痩せた身体つきをしている女性が多い貴族の娘より、何倍も魅惑的で肉感的だろう。
だが、ミクレツィアは目の前に居るメイリーナには気づかれない様に、美しく整った眉を潜めた。
確かに美しい容姿をしている事はしていたが、想像していた様な「絶世」と冠するほどではなかった。
貴族の娘には痩身をしている女性が多い事には多いが、豊満な身体つきしている者もいないわけではない。
正直、あの兄がこの女性に惹かれる要素があるとは、到底思えなかった。
「木漏れ日が心地よいですね。」
「・・・そうですわね。」
急に話しかけられ内身慌てながらも、外見には出さずに答える。
今、二人がいるのは庭にある薔薇園の中心に建てられた東屋だ。
ここのところ天候が悪くこんな清々とした天気は久しぶりだったので、たまには屋外で紅茶でも飲もうと考え庭の薔薇園を訪れると、そこには従姉妹であるメイリーナがいた。
昨日は簡単な自己紹介で別れてしまったので、元から彼女に興味抱いていたミクレツィアは一緒に紅茶でも飲んで話をしないかと持ちかけた。
案の定、彼女は断らなかった。
機転がききそうだったし、断れば相手に不愉快な思いをさせてしまう事を懸念していた様だった。
「そういえば、ミクレツィア様はご成婚を控えていらっしゃるとか?」
「・・ええ、そうですわ。」
唐突にメイリーナが口を開いた。
言葉の真意が測りかねて、ミクレツィアは怪訝に思う。
「その、不躾な質問だとは理解してはいるのですが、お相手をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
ああ、とその言葉にミクレツィアは合点する。
その声音には単純な好奇心も含まれていたが、気遣いの情も受けてとれた。
彼女なりに心配してくれているのだろう。
彼女は兄や自分の様に表層的に優しいのではなく、本当に情け深いのであろう。
「ええ、メイアーノ様ですわ。メイアーノ・ジュリフォルツァ様。」
その言葉にメイリーナは目を見開いた。
「メ、メイアーノ・ジュリフォルツァ様ですか?ま、まさか、あの王太子殿下の?」
「ええ、そうですわ。メイアーノ・ジュリフォルツァ王太子様。」
その返答にメイリーナはより一層目を見開く。
当然だ、と思う。
確かにボカロジア家は名門貴族だ。この国屈指といってもいい。
だが所詮「貴族」、だ。王族ではない。
いくら由緒正しい大貴族とはいえ、簡単に王族との、ましてや次期国王との婚姻関係を結べるなど並大抵のものではない。
まして、メイアーノ王太子は異国でも噂になるほど有望で優しく、おまけに美男子であるのは貴族問わず国民の間でも承知の事実であった。
実際、王家との関係を持ちたい貴族の娘どころか他国の王族の娘とすら、縁談話はあった。
だが、ミクレツィアは山ほどいる婚約者候補の中から選ばれた。
ミクレツィアが婚約者に選ばれたのは、彼女が一際目を引く美しい容姿をしている事も要因の一つではあったが、ほとんどは死んだ父や兄の政治的取引の賜物であった。
そのぐらい、死んだ父や兄の政治的手腕は恐ろしいほど優れていた。
「そ・・それでは、ミクレツィア様は次期、王妃様となられるのですね。」
「ええ、そうなるでしょうね。」
半ば呆然としながらも、メイリーナが答える。
「そ、それは、おめでとうございます。」
「ええ、ありがとうございますわ。」
戸惑いながらもメイリーナが微笑みながら祝福の言葉を述べた。
その言葉や表情には嫉妬や悪意などといった、負の感情は露ほども籠っていなかった。
ミクレツィアは久しぶりに真人を見た様な気がした。
何となく初めて、本当に今初めて何故兄が彼女にあれほど執着しているのかが、分かった様な気がした。
目の前の女性は純真だというか、無欲だというか、〝負〟といった感情には露ほども縁がない様に思う。
聖人とは、この人のようなひとをいうかもしれない。
そして人間は、自分とは違うと思ったものに惹かれるものだ。
だからだと、思う。
ミクレツィアとカイザレは、かなりといっていいほど好みが似通っていた。
そう、かなりといっていいほど。
「天気が、悪くなってきましたね。」
その言葉に現実に引き戻される。
随分長い間物思いに耽っていた様で、ついさっきまで良かった筈の天候は灰色の雲が空を覆い尽くすほどに悪くなっていた。
「え・・・ええ、もうお屋敷に戻りましょうか。」
と、急いで言葉を返し、大理石でできた椅子から立ち上がる。
こんなに慌てた日は、今日が初めてだった。
正直、彼女にこの一族の血が流れているのかと、本当に不思議に思う。
代々後継者にだけ口伝されるため、ミクレツィアは使用した事も見た事すらもないが、ボカロジア家には一族代々に製法が伝わる「カンタレラ」という劇薬があるらしい。
血の様に赤い液体状の味の良い毒薬と噂されている。
とにかく、先祖代々にそんな物が使われるほどボカロジア家の歴史は血塗られていた。
そんな家系に彼女の様な人間がいる事自体、おかしいのだ。
戻る途中、ふと視線を感じ館を見上げると、兄であるカイザレが屋敷の一室からこちらを眺めていた。確かあの部屋は兄の書斎だったと思う。
ミクレツィアとカイザレの視線がぶつかる。
そしてミクレツィアに向かって、何かを呟く。
声は当然ながら聞こえなかったが、口の動きは読み取れた。
『言った通り、〝美しい〟人だろう?』
そして、不敵な笑みを顔に浮かべた。
偉そうな態度に若干苛立つも、これには頷くしかなかった。
そう、彼女は今まで見た他の誰よりも〝美しい〟。
カンタレラ <カイメイ> 第三話
カンタレラ<カイメイ>の第三話です!
前回のあとがきでは、ミクメイやカイメイに発展するには時間が掛かると書いたのですが、これはもうミクレツィアはメイリーナの事を好きになりかけているのではないだろうか・・・・・。
でも、でも自覚するのはまだ先の予定です!!
・・・・多分。(←絶対予定とは違う
おまけに、また改名したボーカロイドが出てきました。
改名とか許せない方、本当にごめんなさい!!!!(←じゃあ、するなよ
本当のカンタレラは雪の様に白い粉薬だという事は分かってはいるのですが、改変させて頂きました。・・・すみません。
毎回書いているのですが、この無駄に長い駄文を読んでも続きを読んでくださるという寛大すぎる方がいらっしゃったら、そちらの方も読んでくださると嬉しいです。
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