部屋に戻った時、外はもう明るくなっていた。浬音はまるで子供が身を守る様に身を固くして眠っていた。傷が痛むのか、少しうなされて寝苦しそうだった。
「浬音?浬音、大丈夫か?」
「う…ん…うぅっ…!」
悪い夢でも見てるのだろうか、苦しそうに涙を零して、手は宙を掴み、声を殺してうなされていた。
「浬音…大丈夫…もう大丈夫だから…。」
「…ハァッ!ハァッ!…ハァ…密…さん…?私…?」
「うなされてた。」
「ごめんなさい…。」
「何で謝る?我慢しなくて良い…痛いなら大声で泣いて良い、寂しいなら側に居てやる、
助けてやるって言っただろ?」
「そんなに…甘えられません…。」
泣きそうな浬音をそっと抱き寄せた。浬音は一体どれだけの辛さに耐えて来たんだろう…?騎士さんのメールには傷の診断の他に『亀裂骨折を放置されていた疑いあり、又全身の傷は素手で一度や二度殴られて出来た物ではない』と付け足してあった。この小さい体で、絶望を刻まれる程傷付けられて…そう考えるとたまらなかった。
「甘えて良いから…もっと頼って良いから。」
「密さん…密さん…!」
微かに震えながらしがみ付いてくれる。触れられるのは苦手だけど…浬音には触れて欲しいと、頼って欲しいと思った。どの位そうして居ただろうか、少し落ち着いた浬音に話を切り出した。
「賞金1億円のゲーム…ですか?」
「うん。ウチの会社、と言うか、大元の会社が企画したプロジェクトの一環でね。
半年前から参加者を募集してたんだ。」
「それに、お兄ちゃんが?」
「だった、と言うべきかな、朝吹琉人は参加資格を剥奪された。」
「私の…せい、ですか?」
「朝吹琉人はお前が暴力を受けているのを知りながら助けなかった。それはお前のせい
では無く、本人の責任だ。」
「………。」
「社長は朝吹琉人の代わりに、妹であるお前を参加させると決めた。もう両親にも了解
を得ている。」
「えっ?!わ…私が?!そ、そんな!無理です!賞金とか…よく判らないけど絶対無理です!
辞退します!」
首をぶんぶん振って拒否した。出来るなら俺だって参加させたくない。だけど辞退すれば最悪あの家に戻される可能性だってある。それだけはさせられない。それならまだ、目の届く場所で安全が保証されたゲームの中の方が安心だ。
「俺が守る。制限もあって思う様に出来ないかも知れないけど、それでも俺が
浬音を守る。」
「密さん…でも私…私なんかが人前に出たら、皆気持ち悪いって思うんじゃ…
お母様みたいにイライラさせたり…。」
「浬音は綺麗だ。少しも気持ち悪くなんて無い。こんな傷付けた奴も、気持ち悪いって
言った奴も、お前に触れようとした朝吹琉人も殴り殺したい程許せない。」
「…っ!」
「ねぇ…守らせて?浬音。」
「ひ…密さん!参加します!参加しますから…!」
浬音の声で我に返ると真っ赤な顔をした浬音を見下ろしている自分が居た。話してる内に押し倒してたらしい。
「ごめん…つい…。」
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…属性?
DollsGame-17.ルピナス-
冷静に何て事しやがる
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