『リンって、子供っぽい声』
『ロリだろwww』




幼い私は成長を望んだ。
短い手足、平らな胸、幼い声、何もかもが私をオトナになりたがらせた。

「ねぇ、レン、私大人になりたいな。」
「ふぅん」



ある朝目が覚めると、なんだか昨日よりも髪が長くなっている気がした。
ボーカロイドも成長することができるんだ、


次の朝目が覚めると、視点がちょっとだけ高くなっている気がした。靴、変えてないのに。
もしかして、身長も伸びてる?


その次の朝には下着がきつくなり、またその次の朝には服を取り替えなければならなくなった。


「レン、私大きくなってるみたい!レンも、早く大きくなるといいね!」
「そう、よかったね。俺、今日はもう寝るや。」



いつのまにかレンの背も追い越し、毎朝起きるたびに鏡を見るのが楽しみになった。
そして、ある朝目が覚め、鏡を見ると、

背が高く、大人の女性の、リンがいた。

「わぁ…すごい…」
鏡に手を触れると、鏡の中の私も触れ返してきて、私は変わりきった自分の姿にしばし見とれた。
「そうだ、レンにも見せてあげなくっちゃ!」



レン、どんな顔をするだろ。キレイって言ってくれるかな?
照れくさそうに笑って、可愛いって言ってくれるかな?


「レン!」
扉を開けた。










しん…
静まり返った部屋には、布団。
「レン?いないの?」
返事はない、返事はない、いない、いない、いない。

布団の中にあったのは、子供の小さな服。
とても14才が着るようには見えない。まるで、幼児のような。どうしt



---あぁ
-------------------!!










ボーカロイドッテセイチョウデキルンダカミガナガクナッテイルシンチョウモタカクナッテイルフクガキツイカラダガオオキイハヤクオオキクナリタイ


ボーカロイドに成長なんてできるわけがなかったんだ。
構成されているデータの量は、造られたときのまま増えることなんてありえない。


そして、
レンがここにいない事実
こんな早朝から仕事があるわけがないという現実
布団の中に服だけ残されている事実
14歳には到底着られない大きさの服という現実


リンだけがここにいる事実
14×2歳程の体つきという現実





ぴゃ嗚呼ああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁaaaaaaaaaAh!!!!!!!!
「げほっ、、がほっ、、」
閾値を越えた出力に、喉がきしむ。
声とは関係なく体が震える。

今となっては、どうして、なんて問いをしたところで意味がない。既にレンはいないのだから。
ただ、目の前にあるものだけが現実。
レンは消えた。私は成長した。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!レンがいないなら何の意味もない!なにもかもしょうがない!」
「私が、成長を願ったから、」

日に日に身長が高くなったと思っていたのは、彼もちぢんでいたから。
日に日にレンの寝ている時間が長くなっていったのは、彼が自分という存在を保てなくなってきていたから。


あのとき私がオトナを願わなければ。
もっと早く、成長を異常だと感じていたら。



こんなことにはならなかった?









ずいぶん呆けていたようで、外を見るともう夕焼けだった。
涙が枯れるという意味を初めて知った。

ぜんぶ、夢だったらいいのに。
そう願って私はレンの布団に寝た。


「あっ」
真夜中、嫌な夢を見た気がして目が覚めた。
私が、レンの首を、絞めて。


けど、一番見たかった悪夢は夢でなく現実のままで、やはり私は28歳の体のまま、レンのものだった小さな布団に寝ていた。広い部屋に、ひとり。



ああ。
やっぱり、彼はもういない。
レンのゼロとイチが含まれているであろう体を、自分の手で抱きしめた。



(核融合炉にさ、飛び込んでみたいと思う。」
そしたら、すべて許されるような気がして。)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説】炉心融解 melt down

炉心融解を聴いて、衝動的に書いた小説です。
設定などは勝手に作ってしまいました。

炉心融解、大好きです。

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原作様『炉心融解』irohaさん(胃痛P)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5602903

閲覧数:1,382

投稿日:2008/12/22 10:55:22

文字数:1,678文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • 零奈@受験生につき更新低下・・・

    初めて見た炉心融解の小説がこれでした。
    最初に聞いた時音源だけだったからリンはロリンではなくレンの首を絞めてると思ってました。
    後でロリンだと知った時はなんともいえない気分でしたね。
    仲間がいましたよぉw
    これからも頑張ってください!

    2010/12/29 15:23:43

    • じゃすみんてぃー

      じゃすみんてぃー

      >零奈さん
      拙い文を読んで頂き、ありがとうございます。
      少しでも気に入っていただけたなら嬉しいです

      2011/02/13 12:45:34

  • じゃすみんてぃー

    >灰音さん
    ありがとうございます!初めの2行で読む気をなくさせそうな文章ですが、こんな解釈もできるんだなぁ、と思ってもらえたら幸いです。

    2009/07/02 19:54:50

  • 灰音

    灰音

    ご意見・ご感想

    凄いです!(はじめましてなのに失礼でごめんなさい!)こんな素敵な解釈があることにびっくりしてしまってorz
    途中の叫び声に思わず戦慄しました
    これからも頑張って下さいねっ

    2009/06/26 15:58:45

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