病気さん http://piapro.jp/t/Rtm8
より、広所恐怖症さんと宿主さんのお話(広所恐怖症さんはまとめ3より)
僕の宿主さんはどうやらパソコンで何かをするのが好きなようで。今日も僕はそれをこっそり見ている。
「・・・ねえ」
宿主さんに呼ばれたため「ん?」と返事をする。
「あなたって、そういやトイレはどうしているの?あと、食事」
「病気さんはトイレに行かないよ。あと、食事もしない」
「ふーん・・・」
納得したようにうんうんと頷いた後、ヘッドフォンを付けてまたパソコンに向かう。
ヘッドフォンを付けたってことは、今は話しかけられないってことになる。
では、様子見の続きでもしよう。
後日。
フーが来た。ってことは、宿主さんは風邪をひいたのか。
「はじめまして!フーちゃんなのだ!」
「・・・・・・誰?この人のパソコンの前でヒーローポーズを決めているお子ちゃまは」
「お子ちゃまじゃないのだ。フーちゃんなのだ!」
「ああ、風邪の病気さん」
相変わらずだな。彼女はフーのいう事は聞いていないようだ。
「あー、じゃあ私風邪ひいたのか」
少し項垂れる宿主さん。フーはむくれている。
ん?なんだか少しおかしい・・・?
「フー、どうしたの?」と、聞いてみた。
「トイレ!あと、おなかすいた!でも先にトイレ!」
そう言って、彼女は部屋から出て行った。
「・・・ロクロウ?」
宿主さんの冷たい言葉が刺さる。
「何かな?」の返事は焦り声。
「病気さんはトイレ行かないしご飯食べないんじゃないの?」
「・・・病気それぞれ症状それぞれ人それぞれ」
「え?」
「病気それぞれ症状それぞれ人それぞれだから!」
「いやいやいや。どうかと思うよ?」
「・・・君の蜜柑食べたの僕ですごめんなさい」
流れに任せて謝った。
「は!?あれロクロウだったの!?なんか減ってると思ったら・・・・あ、じゃあ」
悪い顔になった。彼女の探求心に火が付いたのだろう。
「ロクロウって、ほかの人からは見えないの?それならロクロウとせっする私はどう見えるの?」
「・・・」
少し意外な質問だったので驚いた。でも僕は淡々と答えた。
「空っぽのロッカーに向かってしゃべっている引きこもりの女の子、だね」
「何それ変人じゃない。うわ最悪」
やれやれといった感じ首を振った彼女。
次の質問は、「フーはどう見えるの?」と言うものだった。
「それは見える人には普通の女の子だね」
「・・・違いは?」
「・・・幽霊と妖怪の違いだと思ってくれればいいよ」
「なるほど・・・」
彼女は頷いて納得してくれたようだ。この答えはもしもの時のために、前にu2さんやオーガさんに聞いたものだけどね。
「ま。深く考えても仕方ないや」
うーんと背伸びをして、僕が入っているロッカーの格子窓に顔を近づける。
ゴン、という音は僕は思わずのけぞってロッカーに頭をぶつけたからだ。
「・・・何か?」
「んー、顔。良く見えないけど、かっこいいのかなって思て?」
「・・・かっこよければどうするんだい?」
「・・・よければ、」
何を言おうとしたのだろうか。その答えは彼女の母親の声によってかき消された。
どうやら、フーが勝手に冷蔵庫のものを食べているらしい。
「ネットで知り合った友達」とごまかしたそうだ。
そのあと目と目が合ったが、思わずお互いに目をそらした。
彼女の部屋は狭い。そんな中に2人きり。だけど僕はロッカーの中。出る気はない。
この距離感は、きっとまだ変わらないのだろう。
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