バシィ!と力強い音とともにアタシはボロアパートのクソ床に叩きつけられていた。
脳震盪でも起こしたんじゃないかと思うほど頭が揺れて、立ち上がれない。
だけど、お父さんはそんなことお構いなしに今度は腹を蹴ってきて、アタシはそれをもろに食らい、飛び跳ねる。
「そんな成績じゃ俺よりいい給料が出る仕事に就けないんだよ!お前にはたんまり稼いでもらって老後を養ってもらわなきゃいけないんだよ!」
こんな小学生にはほとんど無縁であり、意味の分からない言葉を吐きながら、ドスッ、ドスッという音を立ててアタシの体を蹴り続けていた。
「お父さん。そんなにしなくても・・・」
「お前はこんな成績の娘の味方をするのかよ!」
お父さんはお母さんが次の言葉を言う前に暴行を加え、お母さんがお腹を押さえてその場にうずくまると、その横を通り過ぎて玄関から出て行った。
これが小学四年生のアタシの毎日だった・・・。
1年ほど経っただろうか。私は小学五年生になっていた。
「皆で卒業生のためにカードを作りましょう。」
先生はそう言って厚紙と色とりどりの紙を回して、個人に鉄製のハサミを渡して回った。
「グミはどんなの作るー?」
前の席の友達が真後ろを向いてそう問いかけてきた。
「アタシは・・・」
結局何にも作業ができないまま時間は終わってしまい、「残りは宿題でーす。」と言われて帰された。
「アタシはどんなカードを作ればいいんだろ・・・。」
アタシには下校友達というのがいなかったので、つい独り言になってしまう傾向があった。
「どうせなら綺麗なのが作りたいなぁ。黄色とか赤とか明るい色でつーくろ。」
アタシは上機嫌にスキップをしながら家に帰りつき、鍵を開け、中に入ってランドセルを投げ捨て、卓袱台のところに座ってさっきのカードの材料を広げた。
「動物とかはちょっと幼すぎるしなー・・・。」
とか、また独り言を言いながら飾紙を切り貼りしていると時計は7時を回って、そろそろ両親が帰ってくる時間が近づいてきた。
そう思うと今まで上機嫌だった気持は一気に下がり、アタシは散らかしていた紙を集め始めた。
「もう我慢ならない!!」
アタシはその大きな怒声を聞き、身をびくりと震わせた。
「お前家の前で何のつもりだ。おい!」
最近聞かない怯えたようなお父さんの声と、知らない女性の声が聞こえている。しかもその声はどんどん大きくなり、近づいてくる。
もう、ドアのすぐ向こうにいる。
そう思ったとたんにバタンと大きな音を立てて扉が取れ、内側に倒れてきた。
「もう私はあなたの暴力に耐えられない。だから・・・」
そう言うと背中に持っていた大ぶりのナイフをお父さんのお腹に突き立て、抜き、さらに突き刺した。
「お母さん!?」
お父さんはお母さんと距離を取ろうとして後退したが、卓袱台に足を取られその場でひっくり返る。集めた色紙が舞い上がり、お父さんの上から吹雪のように舞い降り、散乱する。
「恵、もう安心して。お父さんを殺して二人で楽になりましょう。」
お母さんの眼は普段と違い、眼の奥の光が感じられなかった。
「お母さん!」
その言葉はお母さんに届かず、お母さんはアタシの横を通り抜け、再びお父さんにのしかかった。
「あなたが悪いのよ!あなたが!私と!恵を!・・・!!」
両手でナイフを持ち、何度も何度もお父さんのお腹に突き刺す姿はすでにアタシの知っているお母さんではなかった。
「死ねえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっぇえっえ!!!!!!!」
最後の一撃とばかりにお腹にナイフを刺した時、飛び散ったその血がぴしゃっと、私の頬に・・・
《ニュースです。昨日、午後7時過ぎ、○○県のアパートで殺人事件が起きました。アパートに住んでいた夫婦が・・・》
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想