次の日の放課後。
今日は臨時の職員会議がひらかれ、部活はなしになった。クラスの情報屋の亜北さんの話によると、昨日ニュースでやってた「簿価炉山ばらばら殺人事件」が原因らしい。
「え~怖くね?」
「やだ~心配~」
「俺らで犯人捕まえようぜwww」
といったたわいもない会話が今クラスでもかわされている。
「ね~今日リンちゃん家行っていい?」
急に視界の端からミクちゃんが滑りこんでくる。
「え・・・別にいいけど?」
「やったあ~~~~~!!」
急にミクちゃんが両手をあげて喜ぶ。
クラスの全員がいっせいにミクちゃんの方を向く。
「あ~・・・え~と・・・・・えへへへっw」
ミクちゃんが恥ずかしそうに頬を赤らめながら言う。
クラスの男子はミクちゃんを明らかにいやらしそうな目でみて、すぐ自分の関心事に戻っていった。
ミクちゃんはすごいクラスで人気だ。いいな~
「そろそろいこうか」
「うん」
しばらくした後、ミクちゃんと私は「鏡音」と書かれた表札のある家の前に立っていた。
私はドアノブを軽くひねった。ドアは控えめな音を立ててあいた。
「ただいま~」
「おじゃましますッ」
リビングから声がかえってきた。
「おかえりなさい~あらあ~ミクちゃん久しぶり~どうぞあがって」
ミクちゃんは明らかに動揺した顔でおじゃまします、と小さくつぶやいた。
私は首をかしげたが、それ以上は深く考えなかった。
*
*
*
*
部屋に入るとミクちゃんは早速、「作曲!!」と書かれたノートを取り出した。
「そういえば秋の学祭の曲作りのことなんだけどさ~これでいい?」
ミクちゃんが私に向かってノートを広げる。
私はノートを読み上げる。
「歌はいい 私の世界が広がるから 歌が好き 私を育ててくれるから(中略)」
「けっこういいと思うよw」
「ホント!!」
ミクちゃんが飛び上がって喜ぶ。
「そうと決まったからには、学祭必ず成功させようね!!」
「うん!!」
私たちはハイタッチをした。すごい楽しかった。
あの後は、しばらくたわいもない話を少しして、お開きになった。
私はギターを取り出し、ミクちゃんの丸っこいクセ字で書き写してもらった歌詞と、TAB譜を傍らに置き、ギターのチューニングを合わせると、ギターを爪弾いた。
「なんでこんなにビブラート多いのwww」
一人でそんな突っ込みをいれながら、ギターを弾いた。
次の日。私は今日珍しく朝練があることをすっかり忘れていた。
すぐに制服に着替え、ギターをひっつかみ、あわただしく家を出た。
曲がり角を曲がると、近所のおばさんに声をかけられた。
「リンちゃんおはよう~」
「おはようございます」
「そういえばリンちゃん、最近お母さんとお父さんを見てないけど、なにかあったの?」
私は最後までおばさんの話を聞かずに家へ引き返した。
すべて思い出してしまった。
でも私は認めない。
「認めない」ために、忘れてたのに。
続
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