4~“ケジメ”
「うっ、うっ・・・レンくぅ~ん」
三久の涙で俺のシャツがにじむ、少し暖かい。
この状況どうしたものかな・・・。よし、この手があった!!
「よし、今日は夕食、俺が作ってやるよ」
「なん、で?」
なんで、って言われてもな・・・。
「ま、とにかく任せろ、な?」
「うん、わかった・・・」
少し落ち着いたな。よし。
「向こうに座ってろ・・・」
「うん・・・」
三久が奥の部屋へゆっくりと歩いて行った。
キッチンに立つ俺、さて何作るかな・・・。
「ん、意外に美味しい・・・」
オムライスと味噌汁をパクパク食べる三久を、愛おしそうに見つめる俺。
「何見てんの?」
「いや、別に・・・」
食べるとこも可愛いね。なんて言ったら殴るだろ、お前。
「レンが料理できるなんて超意外なんだけどぉ」
「お前なぁ・・・言っとくけど俺、洋食屋でバイトしてたんだぜ」
誇らしげに言う俺、ジト目の三久。
「でもさぁ、このオムライス普通のと味が違う・・・なんか白いし」
「ああ、ホワイトソースかけたんだよ」
三久が飲んでいた味噌汁を吹き出した。
「うわぁ~意外!!意外すぎて吹いたわ」
「ホワイトソースなんて洋食の基本だろが!!それにバターと小麦粉と生クリームさえあれば電子レンジでも作れるぜ」
「自慢げに言うな」
ちぇっ、完全復活しやがって・・・。
「味噌汁も具沢山だよね」
「味噌汁はあまりもんぶち込める、万能スープさ」
「・・・ずぼらシェフ」
「う・る・さ・い」
俺キレるよ、そういや俺たちの世代はMKGって言ってたっけ。
それにしても、うまそうに食うな・・・。
オムライスと味噌汁を一気に食べ終えて、三久がばんっとテーブルを叩いた。
俺はビクッと本能的な反応をした。
「よし決めた!!」
「何を?」
「私、明日“ケジメ”つけてくるから・・・」
「何の?」
「帰ってきたら話すから」
その後そのことについて触れなかった、そして寝るまでギターの練習をして過ごした。
三久はまだFが弾けない・・・。
翌朝、起きると三久がいなかった。
ギターもなかった。
テーブルには置き手紙と鍵が置いてあった。
『ケジメをつけてきます。2、3日したら帰ってくるから・・・あと、部屋自由に使っていいから~三久より~』
三久のケジメとは何だろうか・・・。
俺は首をかしげる。
今日も晴天、少し暑い。
俺は今日もギターを構えて、前を向き、息を吸って1925を歌いだす。
「いたいけなモーション~、振り切れるテンション~」
今日は私服姿のメイコちゃんがいる。最後までいるつもりだろう。
「お疲れさまでした。今日もかっこよかったです!!」
メイコちゃんが、差し入れらしい水を渡しながら言った。
「ありがとう」
「いえいえ」
メイコちゃんがにっと笑った。可愛い。
三久の笑顔がやんちゃな女の子の笑顔なら、メイコの笑顔は清楚なお嬢様の笑顔である。
「それでなんですが・・・この後暇ですか?」
「何で?」
メイコちゃんが頬をぽっと染めて言った。
「私今日、有給取ったんです。それで、お食事でもどうかなと・・・」
「別に、いいけど」
食事に誘われた~!!
けど少しだけ三久の事を思ってしまう。
素直に喜べない。
その後なんか高級な日本料理店に行き、酒を飲んだり、酒を飲んだり、酒を飲んだり・・・した。
三久の前では、悪影響を及ぼすと思って酒は飲まなかった。
でも今は三久がいない&メイコちゃんがいるんで、かなり飲んでしまった。
夜の公園のベンチ。
人はいない、照明が遊具をかすかに照らすだけだった。
酔いに酔った俺とメイコちゃんはここで一休憩していた。
「かなり飲んじゃた~」
へべれけメイコちゃんが言った。
「俺も~」
俺も結構酔っていた。
「こんなことやってると、会社の疲れなんか吹っ飛びますね~」
「俺なんて無職だから、羨ましいすっよ~」
メイコちゃんがふくれっ面になった。
「会社なんて、最悪な場所です。入社したのはいいものの、いざ入ってみると・・・お茶くみやコピーばっかりさせられて、自分の仕事あるのにですよ?それなのにノルマノルマってうるさいし・・・」
「大変っすね~」
「でしょ~!!」
メイコちゃんの暴走は止まらない。
「あと、セクハラ。女にも人権あるっつーの!!」
「そいいう人間、最低っすよね」
「でしょ、でしょ~!!」
メイコちゃんって、酔うとやけに饒舌だよな。
そんなことを思った時、メイコちゃんがこちらを向いて顔を近づけてきた。
「私、真剣なんですよ」
「何が?」
なぜわからないの?という顔をして、メイコが言った。
「私、真剣に三橋さんの事、好きなんですよ?一目惚れなんてしないと思ってたのに、こんなになるなんて・・・」
俺はうつむく・・・。
しばらく無言の時間が続いた。
まだ俺は、答えが見いだせないんだと思う。
三久のことを言ってしまうか・・・。
・・・いや、ダメだ。まだダメだ。
「キス・・・してもいいですか?」
メイコちゃんはそう言って、目を閉じてどんどん顔を近づけてくる・・・。
俺の頭の中に三久の顔が浮かぶ・・・。どうすればいいんだろう。
人生の歯車が狂ってく音がする。
1925から始まるストーリー~その4~
ここまでこんな駄文にお付き合いいただき、本当にありがとうございます!!
この妄想劇も佳境です。
三久の失踪&メイコの気持ち・・・。
そして三久の“ケジメ”とは!?
美味しいオムライス食べたいです(´▽`)
この作品へのご意見ご感想、喜んでお待ちしております!!
1925から始まるストーリー
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