~No.1~
2-Bの教室はいつもと変わりない風景だった。
窓際の片隅で藤波零は、松川裕也と一緒にいながらそう思っていた。いじめもなく仲のいいクラスメイトたちの何気ない会話をBGMにしながら、幼なじみの裕也と何気ない会話を交わしていた。
「っげ…1限ウザ木じゃんかよ。あいつの授業さっぱりなんだよな~。」
思い出したかのように嫌そうな顔を浮かべる裕也。
「裕也には、どの授業も同じだろ?」
からかい半分で言う零は朝コンビニで買った飴を舐めた。
「はははっ、そうなんだけどな。それでも零は頭よすぎなんだよ。」
「勉強しなさすぎの裕也には、少しの勉強もかなりなんだな。」
そんなありふれた日常のありふれた会話にも変化は訪れた。
「そういや知ってるか?今日、転校生が来るらしいぞ。しかも女子だっ!」
「転校生?」
裕也は女子に重点をおいて言うが、零は時季に珍しい転校生にあまり興味がなかった。ただ昨日の少女が気になっていた。
「零どうかしたか?」
反応の薄い幼なじみが気になった。
「昨日な…。」
昨夜見た少女の話をしようとした時、チャイムが聞こえ担任の佐々木が教室に入ってきた。佐々木は見た目は悪くないのだが、おどおどした性格やどもるために全く人気がなかった。
「え…えっと、今日は…て、転校生がっ…います…。」
佐々木の一言で普段ではあり得ない沈黙が訪れては、一斉にみんなドアへと視線を向け釘付けとなった。零も何気なくドアから入ってくる少女に目を向けると、なぜか目を離すことができないものを感じた。同時に、昨日見た少女だとわかった。
「じっ…こ紹介…を…」
「はい。」
静かな穏やかな声。それでも、転校生特有の緊張や愛想笑いもない。それどころか、人を寄せ付けない強い声でもあった。
「涼風鈴です。よろしくお願いします。」
まるでこれ以上聞くなと言っているのかような口調。しかし、そんな事を気にも止めず、1人質問を投げ掛けた。
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