「お姉ちゃん、みんなを呼んできたよ」

ミクはメイコの部屋を訪れると、皆を居間に集合させたことを伝える。
集合をかけた本人はというと専用端末を操作中である。どうやらデータ受信と印刷を行って
いるようだ。

「ん、ありがとう。
 ミクも先に行ってて。もうちょっとしたら私も行くから」
「うん、わかった」

そういって遠ざかるミクの足音を感じつつ、微笑を浮かべながらメイコは一人つぶやいた。
「また、忙しくなりそうね」


~*~*~*~ 居間にて ~*~*~*~

「レン、そのみかんちょうだい」
「んじゃ、そのバナナくれよ」
「は~。コタツに入ってのアイスは最高だなあ」
「あ~、わたしも何かもってくればよかったかなあ。ネギジュースとか」
「「「それはやめて」」」

そんな、いつも通りの会話を繰り広げている彼らを見て、メイコはついつい微笑ましい
気持ちになってしまうのを隠せなかった。
(やっぱりいいものね、こういうのは)と。

「んで、メイコ姉。
 どーしたのさ、急にみんな集めて」

居間に入ってくるなり、レンが質問を投げかける。

「ええ。さっきマスターと研究所の両方から連絡があったの。
 CVシリーズ最新型、CV03がついに発表されたそうだから、皆にも伝えておこうと思って」

「メイ姉、それマジで!?」
「ついに来たかあ~」
「どんなコなのかな~。楽しみだね。
 ねえ、お兄ちゃんはどんなコだと思う?」
「ん~、03は女性だよね。ということは、リンとレンの“妹”っていうことになるのかな」

皆それぞれが思い思いの感想を述べるが、その表情はどれも嬉しそうだ。
特にリン・レンの2名は常日頃から末っ子扱いされているからなのか、自分が目上の立場になれる
ことが地味に嬉しいらしい。
が、メイコの言葉がそれにちょっぴり水を差す。

「う~ん、“妹”…になるかは微妙なトコかもしれないわね」
「へ?」
「メイコ姉、微妙…ってどういうことさ?」

メイコの意味深な発言に、一瞬固まるリン&レン。
そこに微妙、という言葉に反応したミクが自覚なしの爆弾投下を試みる。

「わかった! 実は男の子なんでしょ!」
「ミク姉、それはないわ」
「ねーよ」
「そ、それは無いと思うよ?」
「いくらなんでもそれはないわ。
 ただでさえヘンタイの近似値(裸マフラー・女装)が二人もいるってのに、
 これ以上増えてたまるもんですか」

相変らずのボケに総ツッコミをくらって撃沈するミクと、何気に酷いことを言われた男性陣からの
抗議を他所に、メイコが手持ちの紙に記されたCV03の情報について説明を開始する。
しかし最後に言われた件に関してミク&リンからの擁護がまったく無いのがちょっとアレだ。

「プロフィールと設定を読むわね。
 『名前:巡音ルカ(めぐりね・るか)
  年齢:20歳
  身長:162cm
  体重:45kg

  得意ジャンル  :ラテン・ジャズ~エスノ系ポップス/ハウス~エレクトロニカ系ダンス
  得意な曲のテンポ:65~145BPM
  得意な音域   :D3~D5

  バーチャル・シンガー『巡音ルカ』は、声優「浅川 悠」さんが演じるクールでちょっぴり
  ミステリアスなキャラクター・ボイスを元に造り上げられた、ボーカル・アンドロイド=
  VOCALOID(ボーカロイド)です。

  本作では、初の試みとして日本語と英語の2つの音声データベースを搭載したバイリンガル
  女性シンガーとなっています。よって、今までのボーカル音源では実現が難しかった、
  日本語に英語が交じる現代的なポップスを流暢にこなすのは勿論、ワールドワイドな音楽にも
  対応するため、汎用性が高いのが特徴です。また、"ムーディーかつハスキーな女声"を
  コンセプトに収録されたクールな声質で、中域から高域まで広めの音域をフォロー。
  ハウスなどの定番ダンス系からディープな電子音楽、またはジャジー/ブルージーな大人びた
  サウンドにも対応します』
 (以上、キャラクターボーカルシリーズ・03『巡音ルカ』紹介ページより部分転載)

 …だそうよ。
 続いて開発陣からのコメントね。

 『CV03は、昨日発表させて頂きました"巡"をキーワードとするVOCALOIDで、
  『巡音ルカ』(めぐりね・るか)が正式な名称となります。
  「(より広い世界で)音が巡り、歌が流れる、伝達する」といった意味性の連結で、
  ルカの「ル」は"流れ"を意味します。「カ」は"歌"、"香り"など空気中を流れ伝わる現象を
  指し示します。
  (言葉の壁をある程度越えて)空間を移動/反射する"巡る音"の意味と、
  「流れる歌、流れる香り」など、時間軸上で刻々と変化し、受け手が送り手との距離を
  意識しなければいけない伝達する現象を盛り込みました。

  作り手の意図が、(より多くの人というよりは)より文化の違う様々な人が聞いてくれるかも
  知れないという方向に向かい、我々が文化の違う民俗音楽を聴いた時のような新鮮な違和感
  (異国の空気感)を『巡音ルカ』が運んでくれる事を期待します。

  日本人にとっての英語歌詞の意味、英語圏に人にとっての和製英語のフレーズの聞こえ方、
  そして機械による歌声の賛否など、聴く人の立場(文化)によって全然違う意味に聞こえる
  音があると思います。今回は、それがインターネット上で紡がれて行くことを踏まえて、
  『巡音ルカ』の歌が様々な人たちのPCで"流れて"欲しいなと思います』
 (以上、メディアファージブログ2009/01/06分より部分転載)

 …以上よ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説】-「巡音ルカ」発表の日 Chapter1-【ギャグ系】

少し遅れましたが、「巡音ルカ」の発表に伴って執筆したギャグ系の中篇小説です。

一応、キャラの書き分けっていうか口調で誰が誰だかわかるようにしたつもりですが…
どうでしょう?

レンとカイトですが、どちらかというとぶっきらぼうな口調の方がレンです。
ミクとリンの場合は、相手の台詞に話す相手がわかる様な箇所(今回だとお兄ちゃん、など)を入れて逃げてますw

2009/01/30 文字読み動画としてニコニコにUPしてみました。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm5998444

閲覧数:753

投稿日:2009/01/08 23:10:42

文字数:2,357文字

カテゴリ:小説

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