バンクシア


ねえ 誰?そこにいるのは その大きなお腹は何?
そこには私がいるべき 渦巻く怨情 笑顔で封じ込めた
「おめでとう よかったね」と 心にもなく はしゃいでみせる
私はただの「友達」と 嫌でも突きつけられた事実
抑えようと 暴れ狂う 淀んだ波が 胸をひりつかせる
募る意趣は 燐火となり この手の先に 灯り 地へと伸びる
怒涛と化す想いは身を食い破り 玉響(たまゆら)に逢魔時(おうまがとき)を呑み込む
風寒の宴の野は坩堝(るつぼ)と化し 村人は残らず火に捲かれゆく
莫連(ばくれん)もその胎仔も 焦土の塵埃と散れ 己の立場知るがいい

幾年 時は流れて 貴方の側 支える私
これでいい こうあるべきなの 夢見心地の 蜜月の日々
ある日の白日の頃 家の扉を叩く小さな音
開けると そこにいたのは 瀬の小さな一人の男の子
「実は道に迷って…」遠慮がちに彼は話す
「それなら私、案内するよ」彼を導き 少し前を歩く
「どこから来たの?」「東の村です」「少し遠いね」
「狩りの獲物を追ううちに… ずる賢くて 隠れるのが上手いんです もう長いこと探し続けています」
無人の山のふもとを巡る 沼の中から覗く幾つもの割れた酒器
しまったと顔に出たらもう遅い 彼は見ていた 全てを そして呟く

「こ い つ だ」

泥濘に体が埋まり抜け出せない ねえ助けてそこで何をしてるの
手を伸ばして服を掴み剥ぎ取れば へばりついた火傷が全て語る
瞋恚(しんい)に満ちた瞳と尖り声が 母の仇村の仇と詰(なじ)る
油の雨炎の種降り注ぎ 瞬く間に業火となりて襲う
猛る朱は皮膚を犯し 悲鳴さえも焦がしていく
いやだなんでだしてたすけてああああああああああああああああああああああああああああああ

あの山火事で 村人は全員死んだ
あの日 生まれていなかった者を除いて

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

バンクシア

ぼかえり2024夏 投稿作品

閲覧数:5

投稿日:2024/08/29 17:54:37

文字数:774文字

カテゴリ:歌詞

クリップボードにコピーしました