まずさつまいも(1本)を自転車1分にあるスーパーマーケットまで買いに行く。
買いに戻ったら、なんとなく皮を剥いちゃう。
次にレンジで「温め」のボタンを押し、チン! する。

1分後──。
チンし終えたら、茶碗の上に乗せて──スプーンで潰す。

「ぐっ……ふぬっ」

なんかこれ固いな……と思い、5分の1(5分の4はなんとか潰した)を試しに齧ってみると、中心部分がまだ生っぽかった。

「…………」

無言で剥いた皮を入れてあるゴミ袋の中にそれをダストシュートした。

そして念のため茶碗の中に入ってある<潰したさつまいも>を、もう一回レンジの「温め」ボタンを押してチン! した。

1分後──。
冷蔵庫から牛乳を取り出し、迷わずかけた。
……するとコーンフレークみたいに<潰したさつまいも>が浸かってしまった。
まあいいやと割り切りながら、さっきまでさつまいもを潰すのに使っていたスプーンでそれを食べた。(ちなみに作るのに少なくとも30分ぐらいかかっている)

「…………」

正直に言おう。
美味いか不味いだったら、不味いに近い。

まずさつまいもが生っぽい。
牛乳浸りすぎワロタ。
さつまいもが生っぽい。(大事なことなので2回言いました)

私、雪りんごは<失敗作>を無言で食べながら、こんなことを考えたのだった。

──さつまいもは中まで通るようにしなきゃ、と。




delicious【withかなりあ荘】





そもそも私が突拍子にこんなことを始めたきっかけは──よくよく考えてみると、ない。
ホントに唐突に「昔作ってたやつ食べたいなぁ……」と昨日の夜思ったのだ。
それで火曜から金曜まで面談だったから授業が4時間で、放課後の図書委員のイベントの「図書館祭り」のスタンプ係の仕事を全うしてからスグに家に帰り、スグにさつまいもを買いにいった。

そして冒頭に至る──と。

ちなみにさっきから連発している「昔作ったやつ」とは、その名の通り、私が小学生の低学年ぐらいのとき、夏休みに祖父母の家で年上や同い年のイトコともにさつまいもの簡単おやつのことである。
記憶の限りでは、「皮は剥いている」、「潰す」、「牛乳を混ぜる」のだが……結果は冒頭に至る。

昔の味はよく覚えていないが、味わうためにちまちまちまちまちまちまと食べていた記憶があるので、美味しいはずなのだが……一体何処で何を間違ってしまったのだろうか?

それに、それの名前も思い出せずにいた。
「いも」という単語がついていた気がする。
……「おいもちゃんアイス」か? いや違うな、だってこれは「村●さん(お店の名前)」のデザートなのだから。

そして1分ぐらいの時間を費やした結果、これを「いもを潰したやつ」と呼ぶことにした。
そのまんますぎではあるが、正直こんなことで悩んでいるのも面倒だ。(本音)

とりあえず今度は「中まで温めて」再チャレンジしようと、もう一回スーパーマーケットに向かった。

……え? お前馬鹿だろって?
──そうだよ、どうせ私は馬鹿だよ!
期末テストで、5教科のうち数学しか平均いかなかったぐらいの馬鹿ですが、何か!?

 *

お店のテープをピッと貼ったさつまいも(本日2本目)を手にし、かなりあ荘に戻ってきた。
2階に続く金属製の階段を上る。
すると、青色の髪をした美少女──ゆるとすれ違った。

「あ、りんごだー!」
「ゆるだー!」

何だか酷く久しぶりなような気がするのは気のせいだろうか。
まあ、それはともかく──

「何でさつまいも持ってるの?」
「ああ、これはおやつを作ろうかなって思って──そういう君こそ何でチョーク持ってるのかな?」
「おやつかー、美味しそうだね! ──ズバリ、護身用!」
「…………」

チョークが護身用になるだなんて……
私は、清々しいほどの笑顔で答えたゆるの認識を、「面白い先輩のような同い年の人」から「怒らせちゃいけない人」に改めた。
それにゆるの必殺技「チョークアタック」はとても痛いと聞くし、絶対ゆるとしるるさんだけは怒らせないようにしよう。
私はそう心の中でそっと決心した。

──そのときだった。

何かが大きなカブのように引っこ抜かれた音が聞こえ、次の瞬間、二人の人物の悲鳴が響いた。

『うわああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!』
『ぎゃああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!』

続いてドシーン! という音も聞こえ、後は静寂だけが続いた。

しらけるかなりあ荘。

顔を見合わせる私とゆる。
やがてその沈黙を破るかのように、ゆるは恐る恐る口を開いた。

「……今のって」
「……ターンドッグさん、だよね?」
「……あとさっきの悲鳴って」
「……兄さんと、ターンドッグさん?」

私が皆まで言うよりも先に、ゆるはターンドッグさんの部屋──「201号室」にダッシュした。
まあ、ダッシュする距離もほとんどないのだが、とにかく、ゆるが最初に「201号室」に向かった。

「ターンドッグさん!? 兄さん!? どうしたんですか!?」

叩くようにノックをし、扉の向こう側に呼びかけるゆる。
二人とも大丈夫か!? と私も心の中で二人の身を案じた。

「い、いいですか!? ここは2階ですよ。だから犯人の逃走経路はこのドアだけなんです! だけどドアの前には私とゆるがいます! だからもう逃げられませんよ! 大人しく観念してください! ──ってあーっ! 兄さんだったら2階から普通に飛び降りれるんだったぁーっ!」
「さっきから何言ってんのりんご!?」
「何だよ……密室もクソもないじゃないかぁ……」

一人、勝手に落ち込む私。
するとドア越しからも、

『いや……そもそも俺ら死んでないから……』

推理小説の読みすぎの私にツッコミを入れたターンドッグさんの声が何処か苦しそうだったことに、密室の夢をいとも簡単に打ち破られ軽いショックを受けた私は気づけなかった。

「あ、無事なんですか……そうですか……」
『なんかどっちか死んでほしいような言い方だな!?』
「別にそんなことないです。私はそこまで残忍じゃありません」

確かにいつかは推理小説みたいに難しい殺人事件に直面してみたい! という願望は密かにある。
だが、決してターンドッグさんに死んでほしいという思いは微塵もない。

そういえばゆるはさっきから何をやっているのだろう。
鍵穴に針金を差し込んでコチョコチョやってるが、まさか……

『……あ! そうだ! いいか二人とも! 絶対部屋に入ってきたらダメだからな! 絶対だぞ!』
「え……」

ゆるの声とともに、カチャリ、という音が響いた。
たとえていうなら、数々の密室殺人事件が描かれ、某5人アイドルグループAのリーダーOが主演のドラマもやり、来年の1月3日にドラマSPもやる予定の推理小説のように──鍵が開いた。

「もう開いちゃったんですけど」
『え』

そう言うと、ゆるは問答無用でドアを開けた。
私もゆるの横に立ち、部屋の中の様子を窺う。

──そこには、目を疑うような光景が繰り広げられていることを、このときの私たちはまだ知るよしもなかった。



ヴォカロ町のボーカロイドたちがこの世界に行き来するために使っているPCの前に、二人はいた。

ターンドッグさんは床の上で仰向けに、兄さんはターンドッグさんの上にうつ伏せで。
もっと簡単にいうのなら、「兄さんに押し倒されたかのように」二人は倒れていた。
しかも兄さんの顔はターンドッグさんの男っぽい胸に埋めるようにあり、もし二人が服を着ていない状態──つまり全裸──だったら、今頃18禁になっているだろう。

それはともかく──

「……………………」

目の前の状況に呆然となるゆる。

「……………………」

口をパクパク動かすターンドッグさん。

「……………………」

そして、実は興奮しているのを決して悟られないよう、口の中で歯と歯の間に舌をいれ、それで必死にニヤニヤを抑える私──。

とにかく、カオスだった。

「……こ、このバカイトがまたPCにマフラーを引っ掛けちまったみたいで、引っ張ったんだよ! そ、そしたら勢い余ってこうなっちまったんだ! それにこのバカイトも何処か頭でも打ったのか全然起きないし……だから! 決して! 俺たちは! そういうのじゃ! ないんだ!」

ちなみに言うのを忘れていたが、ターンドッグさんたちはPCのほうに足、私たちがいるドアのほうに顔が向いている。
ターンドッグさんは仰向けのため、顔を逆さにしながら私たちに叫んでいることになる。
正直言うと若干怖い。

そしてなかなか起きない兄さんの下で、必死に弁解を叫ぶターンドッグさん。
顔を逆さにした状態で話しかけられても怖いだけなので、今だ固まっているゆるの代わりに、私は口を開いた。

「……もしかして、私たちがそんなことでターンドッグさんを嫌うと思いますか?」
「…………」

黙る、ということはどうやら肯定らしい。
私は出来るだけ笑顔を浮かべてこう言った。

「ふふ、ターンドッグさん、それは杞憂にすぎませんよ? 一体どれだけターンドッグさんを見てきたと思ってるんですか。それぐらいでターンドッグさんのことを嫌いになるほど、私たちの絆は捨てたもんじゃありませんよ!」
「ゆ、雪りんごさん……!」

だからその逆さの顔でこちらを向かないでください。
怖いです、ホラー級です。

それに──

「ヘタレに見せて実は結構攻める系男子×ちょっと変態気質あるけど頼れるお兄さん系男子ktkr!」
「……んん? 今なんか言いました?」
「いいやなんでも」

おっと危ない危ない。
ついつい本音を口走ってしまった。
まあボソボソ声だったからギリギリ聞き取られずにすんだようだけれど。

そう、本音を言うと、私はこの状況にとっても興奮しているのだ!(あれ、なんかこれさっきも書いたような気が……)

そして何を隠そう、私は腐女子なのだ!
実は内心「ホモォォォォォォォォォォォォォォォ! ヘタレに見せてry×ちょっと変態気質ryとかマジ美味しすぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! いやいや逆でも美味しいんだけどね!? でも、ヘタレryは言葉攻めでちょいちょい変態気質ryをおちょくるかーらーのー一気に襲っちゃうパターンだったら薄い本が厚くなるね! ああああああそれでもって受けが羞恥で顔真っ赤&涙目だったらもうバリムシャペロォ┌(┌^o^)┐」と荒ぶってたりしていたのだ。
ただそれを頑張って口に出さないようにしていただけで。



閑話休憩。

私は依然ポーカーフェイスを装ったまま「ね? ゆる」と、会話の矛先をまだ隣で固まっている彼女に向けると、ようやく意識が現実に戻ってきたらしく、「う……うん!」と元気よく答えた。

それと同タイミングに、ようやく兄さんも目を覚ました。
まあ、目を覚ました瞬間「うわあ!?」と驚いた様子だったけれど。
いいねえ、薄い本が厚くなるネタが増えるよ……!┌(┌^q^)┐

「オイバカイトぉ! 俺はなぁ、お前のせいで大変な目に遭ったんだからな! 罰としてそのマフラーを漂白剤と一緒に洗濯しなきゃ気がすまねぇ!」
「えぇ!? ご、ゴメンって! だからそれだけはやめてぇぇぇぇぇ!」

ターンドッグさんは起き上がったばかりの兄さんを怒りのまま蹴り飛ばし、それでもまだ足りないのか、兄さんを脅し始めた。
それに対し兄さんは渾身の土下座で謝る。
だがターンドッグさんは無慈悲にも「そのマフラー貸しやがれ!」と怒鳴った。

それを蚊帳の外で眺めていた私たちは、何か嫌な予感を感じ取り、そそくさと逃げるように「201号室」を出て行く。
そして何事もなかったようにそれぞれの部屋に戻ると、私はさきほどの再チャレンジを試みたのだった。

結果、一応美味くできた……と思う。
それに最後の最後で「そういえば仕上げにラップで丸くしてたな」と思い出し、私は性欲的にも食欲的にも、お腹を満足させることが出来たのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

delicious【withかなりあ荘】

ホモォなアクシデント以外(つまりおやつ作ってる部分)は実際今日やったことですww
ホントは2回目の作ってるシーンも書きたかったんですけど、面倒くさくなったのでやめました(理由ェ

あとホモォな部分に関しては、前にターンドッグさんに黒りんごにさせられたので、別にいいかなーと。
あと男だから(((自重
反省はしている、だが後悔はしてない(キリッ)←

閲覧数:211

投稿日:2013/12/12 23:03:01

文字数:4,972文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    その他

    いもつぶしたやつ、つくるりんごかわいい
    目を丸くしているゆるりーさんかわいい

    おもしろだったら、ゆるりーさんとりんごがトップ2だよね、やっぱりw

    【りんごは、カーテン(5)、安物電子レンジ(10)を手に入れた】
    カーテン:毎朝、清花ちゃんがしゃーしにくるやつ
    電子レンジ:個人用電子レンジ……ただし、リビングのと同時に使用するとブレーカー落ちる

    2013/12/13 20:46:56

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      私はかわいくないです
      ゆるはかわいいですよね

      えー? 私は面白くなんかないですよ?
      トップ2ならゆるとターンドッグでしょう?ww

      わーい、ありがとうございます!
      私もついにバルスされるんですね……(((
      ちょっwwそれフツーに使いにくいじゃないですかww

      2013/12/27 17:29:19

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    ラ……ラッキースケベの次はホモォですか……w
    黒りんごの件がお気に召さなかったなら文句は言いませんがねww
    でも黒りんごの時は最後救われたじゃないですかー。
    もうちょっと救われてもいいんじゃない?(図々しい
    これじゃカイトDEAD ENDだよ、マフラー本体なんだぜ?(マジっすか

    正しい対処法はこうだ!
    ①カイトはマフラーを掴んで一本背負いで引き抜く
    ②即座にマフラーで手足を縛る
    ③縄で縛りなおしてからマフラーを取り、カイトを漂白剤に付け込む
    ④マフラーをあなたに高値で売り付ける
    ね、簡単でしょ?(おい

    さつまいもは美味しいよね。
    でもジャガイモも美味しいと思うんだ。
    あと冬はみかんが一番おいしいんだっっ(お前は何を話してるんだ

    で、何?
    カイトに押し倒されて仰向けのまま二人と対峙してんの俺?
    それさぁ、二人の服装によっては俺しるるさんとどっぐちゃんに怒られた上どっぐちゃんに頼まれた清花ちゃんに祟られちゃうよね!?
    あなたたちどんだけ俺をラッキースケベさせたいのかな!?ww

    まぁ結構ボロクソ言いましたけど、
    正直最後まで「こんにゃろwwww何てことしてくれるこの受験生めwwwだけど悔しい……笑っちゃうげほっげほっ」状態でしたわww
    とりあえず次回俺を使う時はルカさんを付けて頂戴(おい
    あともうすぐネルネル・ネルネクリスマスセールやるよ!どっぐちゃんフィギュアとシルルスコープは今のうちにどうぞ!!

    2013/12/12 23:58:06

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      いえいえ、別に黒りんごがお気に召さなかったわけではありませんよ?ww
      ただ私はドアを壊すほどの脚力を持っていないだけでして……(そこかよ
      それに一番の理由は「ターンドッグさんが男だから」ですし!←

      マフラー本体とかなにそれ私得じゃないですか……!(ぇ
      マフラーは高値で買わせていただきます!(^q^)←
      あ、よかったら?の写真も高値で買います!←

      ミカン美味いですよねw

      それもいいじゃないんでしょうか!(歓喜)←
      そうなったときは私は厄払いのグッズ買ってきてあげますよ(適当)

      喜んで(?)くれたのなら幸いですww

      え? 何言ってるんですか?
      そんなラッキースケベがあると思って?
      そんなこといってますと、次は兄さんとキスさせんぞ(腐女子が脅すんじゃない

      2013/12/27 17:24:07

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