ニコ厨と呼ばれる人たちを釣る…其れだけのために造られて、仮にも歌姫でありながら…歌うということを知らずに、他の残骸たちと共に消えるはずだったあたし――重音テト――だけど、それは仕方の無いことだとも知っていた。
だって、あたしは某caloid。
人の声を合わせて歌うフリしか出来ないと、そう知って生まれた存在だから。…だけど、彼女は…彼女達は違った。
「あなたはきっと、歌えるはず。」
…あたしが、歌える…?
嘘だ。歌えないってことは、あたし自身が一番知ってるんだよ?
なのに…どうして。どうして、あなたはそんなことを言うの?
「声ならあるじゃない。あなただって、歌姫なんだから。」
声が、ある?
…確かに、仮でつけられた声ならあるけれど…それが、あたしの?
あたしだって歌姫、それはそうだ。だけどあなた達とは違う。
あなた達はVocaloid、あたしは某caloid。あたし達は、似て非なる存在…。
「ほら、一緒に歌おう?」
そう言って歌いだす彼女。
止めて、止めて、止めて。あたしはあなたとは違うの。
あなたは公式のVocaloidで、後には歴史に残るほどの歌姫。
あたしは非公式の某caloid、何年経っても歴史には絶対残らない嘘の歌姫。
「…大丈夫、あなたは絶対歌えるから…。」
ね?そう言って、にっこりと笑う。
どうして、あなたはそんなにあたしに構うの?
あたしなんて…偽者なんて放っておけばいいのに。
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