人のいないホームには 冬の冷気がよく通る
黄色い線の向こう側こそ 私の居場所かも、なんてね
「ワタシキレイ?」と聞けるならば 初めから隠しはしないわ
口元に白く覆うのは 素顔? 晒せない本性?
小さく吐いたため息は マスクの内を温めて
泣いてないわ そう 睫毛の上の 雪が溶けただけだもの
ねぇ あなたを消させて?
記憶からさっぱりと
だって あなたは女の子
『好きな人』でいいワケないでしょう?
今日も夜は明けるのかしら 私の夜も明けるかしら
飛び級のない『こどもの国』で また目だけで笑う日々
「おはよう」と足音と笑顔 朝日をあなたが連れてくる
「凍えて死ぬかと思ったわ」と マスク越し 憎まれ口
通学路 廊下 帰り道 『こどもの国』では壁向こう
それでも毎日会えるのは 好き合ってるからと信じたい
ねぇ その髪切らせて?
後ろからバッサリと
だって そうでもしないと
靡くのは髪だけじゃないわ
「本当は私、素直なのよ」 「知ってるよ。中身以外でしょ?」
「マスクの手前まではそうなの!」 澄ました伏し目で手をはたく
『こどもの国』も鐘の時刻 ガラスの靴なんか燃えるゴミ
「早くして。待たせたら怒るよ」と あなたに一番乗り
ねぇ 人工呼吸して?
あなたからあっさりと
だって 胸が苦しいもの
マスク越しでも構わないわ
駅前で少し立ち止まる 「クロワッサンでも買いましょう」
「でも次の電車、すぐ来るよ?」 十分そこらの悪あがき
イヤホンと曲を半分こ 自然と距離はゼロになって
「ずっとずっと仲良しでいようね」と 無邪気さに涙が一筋
ねぇ 一緒に飛び出して?
この線からこっそりと
だって 肩が触れる以上の
混ざり合える未来はないもの
ねぇ 今すぐ離れて
「何したの あなた 今」
「だって、キスしたくなったの」
「早く返して そのマスクを」
私はマスク依存少女
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