あるとき、時計職人の親方が僕に言った。


「おい小僧。よく聞け。
 
 歯車は たとえ丸くなくたって、
 お互いの形が合ってればクルクル回る。

 人間だって同じだ。

 
 人はみんながみんな
 綺麗な丸ってわけじゃねえ。

 少しは複雑な形をしたやつだっているもんさ。


 だけどな、お互いがお互い
 形をけずるなり なんなり合わせていって

 あとは真ん中の芯さえしっかりしてりゃあ
 いつかはクルクル回りだすもんなんだよ。


 最初は少しぐらい形が違ったって
 回ってる間に削れて何とかならあ。

 たくさんつながりゃ それこそ自分より
 倍ぐらい大きい機械だって動かせる。


 まあ、最初は誰かが自分の力で
 自分の歯車を回さなきゃなんねえけどな。

 そういうことを常に考えて、歯車を作れよ!」



僕は 正直めんどくさいなあと思ったけれど

そんな話を聞いた手前


「そうですね、親方!」


と一言だけ答えた。

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時計職人と歯車

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投稿日:2015/11/30 19:32:23

文字数:419文字

カテゴリ:小説

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