「ルカ姉、ねえルカ姉。」

楽譜を手にミクがか細い声で私を呼ぶ。
私がふとミクを見れば、ミクは呆けた顔で楽譜を見つめていた。

「今私はこうして歌っているけれど。」

ミクは、少しだけきゅっと眉を寄せる。
緑色の髪がゆらり、揺らめいて、私はただ意味もなくそれを眺めた。

「いつか、私の喉から声が出てこなくなってしまう日がきたら、」

私はいらなくなってしまうんでしょうね。

かさり。ミクの手にある楽譜が擦れる。ミクは特別悲しそうでも辛そうでも、楽しそうでもなかった。無心と、表現するんだと思う。なんだか全部を理解しているようだった。全部を知ったみたいだった。
でも、ミクはまだ全然知らないと思う。いつか、もし声が出なくなったミクが存在するときがきたとき、私達がどんな思いをするかとか、そういうのは、ミクは絶対にわからないと思う。
悲しむんだろうな、とか、泣いてくれるだろうな、とか、そんな曖昧な予想しか立てられないと思う。
実際私は、そういう場面に立った事がないから、私がどんな風に思うかなんて、私もわからないけど、けど。でも、絶対に。

「ミクはいらなくならないわ。」
「・・・そうかなあ。」

ミクは少しだけ笑った。
ねえミク、多分私は、筆舌につくし難い思いにかられるに違いないわ。
悲しいなんて、そんなちっぽけな言葉で表せないくらいの、・・・私も、なんて言ったらいいか分からないけど、とりあえず、死んじゃうくらい、痛い気持ちを味わうと思うわ。
ミク、あなたはいらなくないわ。いらなくないのよ。

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

要るか要らないかの話

小説ってどう書くんだろ。喉が痛くて声が出ないので書いたんです。

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投稿日:2010/03/24 21:56:04

文字数:651文字

カテゴリ:その他

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