風が啼く
月が空を泳ぐ。
暁が鳴りをひそめて、甘い歌が世界を染め変えていく――――
青嵐に包まれて
無数のヒカリが咲き乱れるこの場所で、
おやすみ。
大河の真ん中で、浮かぶ丘の上でひとり照らされて
そよぐ草の香に、包まれている。
流れる水の音はさながら竪琴のように
空っぽなこの身を抜けて
すべてを忘れられる場所、
すべてを思い出せる場所。
寝待月夜
花園の中で黒土に横たわって、
君の笑顔を
思い出している。
夜露が唇を湿らせて、ほんのり香る霊薬(アムリタ)の味
傷に沁みない月の光、静謐に。
月下美人のつぼみがほころぶ音を
そばで聴いててもいいかい、眠るまで。
明日、
もし世界が滅ぶとしたら――――
新月夜
遠くに燃えるは三角標の灯(ひ)
今宵この庭の花は
誰のために咲くのだろう。
ああ、君もここを訪れるだろうか
騒がしい明日とたおやかに絶えゆく夜の間に。
思考を閉ざし
今はただ眠る――――
明日を生きるために、落ちゆく螺旋の中に休息を求めて。
星雲(ほしぐも)に見護られ
夜と朝が出逢うこの空の下で、
おやすみ。
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