『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:16


第1走が終わり、続けて第2走のアナウンスが流れた。
「「いってらっさーーーい」」
「はいはい、アンタ達、大人しくしてなさいよ」
「「はーーーい」」
凛と漣に見送られながら芽衣子と櫂人はスタート位置まで移動した。選手が全員揃ったところで、
『それではぁ~っ、位置についてぇー…よぉーーーっいぃ、ドンッ! 』
歓声が上がる中、勢いよくスタートした選手達。芽衣子と櫂人もそれぞれのペースで早々に第1関門に到達した。さっきと同じく次々と横で悶絶する選手達にはなるべく目を向けない様にして、2人もパンを選んで口に取る。噛むまでに一瞬のたじろいがあったが、覚悟を決めて一気に咀嚼した。やや間があって、櫂人がその場にくずおれた。芽衣子は何ともない、どうやら“当たり”にあたったようだ。
「か、櫂人・・・大丈夫? 」
「~~~・・・っ」
櫂人は声無く首をどうにか縦に振って手で制すと、先に行けと促した。芽衣子は凄く戸惑いながら櫂人に断るとパートナーを見つけて先に走って行った。
―――ぱ、パートナー、早く探さないと・・・。
同じ様に死にかけた顔をしながら相方を捜すゾンビの群れの様な行動、さすがにこれは酷い光景だと誰もが思えるようで、未来が遠くで妙に悟りきった同情の微笑みを向けて静かに無情にシャッターを櫂人に合わせて切っていた。
「~~~っ、こ、このメモの奴、誰か・・・居、るか・・・」
喉焼けを起こしかけていて声が若干掠れかけている。そこに同じメモを差し出してくる手が見えた。それを見てこれで後は進むだけだと、意識を奮い立たせて相手を確認すると、
「・・・」
相手は前に軽音部でズタズタにプライドを折ったキーボード担当の男子生徒だった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

先に進む芽衣子は剣道部の主将と組み合ったらしく、そのまま2人3脚で障害をどうにかして避けながら順調にこなしていった。遠くで未来がやたらめったに芽衣子と主将を別々で撮りためているのを久美と拍は横で見ながら哀しい顔をして合掌していた。9教科神経衰弱ブースに辿り着くとそこで流れが滞ってしまった。芽衣子と主将の得意科目が同じで、開いていくパネルが悉く苦手科目ばかり。それで何度も何度もやり直す羽目になったのだ。そうこうしているうちに後続の選手が次々と追い付いてきてパネルに挑戦し始めた。芽衣子が頭を悩ませていると櫂人がようやくこちらに向かって走ってくるのを横目に見つけて顔を向ける。櫂人は物凄く苛ついた顔をして息が合ってるのかなんなのか解らないくらい綺麗な2人3脚で走ってきているのが見えた。相手の男子生徒も物凄く嫌そうな顔をしながら嫌々足を合わせているといった感じだ。
―――あ~、組み合っちゃったんだ・・・
それを見て芽衣子は一瞬で全てを悟った。

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何組かに先を追い越されつつ、芽衣子も無事にパネルノルマを終え先へと急ぐ。櫂人は早々に息の合った解答でノルマを終え、喧嘩腰に2人3脚の相手と鍵を求めて走り進んでいった。芽衣子が箱に辿り着く頃には櫂人は鍵を貰ってコンビを解消し、コイツにだけは負けてたまるかといわんばかりに凄まじい勢いで遠くへ消えていった。
―――ああ見えて、負けず嫌いなのよね・・・アイツ。
その後ナメクジ箱に当たって壮絶な悲鳴をあげた末に鍵をゲットした芽衣子は半泣きになりながらも砂山を目指した。
『ジャマ研・斉藤選手が引いたのは「腹黒そうな/部活のエース」ーーー! 』
それを後ろで聴きながら芽衣子もサイコロを探す。青と橙を1つずつ見つけたところで、
『おぉっとぉ、斉藤選手が選んだのは噂のカメラ女子・石川嬢だーっ』
コーナー担当の前でサイコロを振る、芽衣子が出した目は「面倒臭い/先生」
芽衣子は唸りながら教師ブースに目を向ける。丁度その時、櫂人が未来と激しい言い合いをしながらコースを横切ってくるのが見えた。その光景に新聞部のカメラ担当が思わずシャッターを切っている。芽衣子はそれを見ながら、後日新聞部から出る新聞は売れるだろうなと、淡々とその光景を流した。
連れて行く先生を決めたのか、芽衣子は教師ブースの方へと走っていく。お目当ての先生を捜して視線を走らせると、
「あ、居たっ。先生! 」
その視線の先に居たのは疲れた表情を浮かべて髪を解いていた岳歩の姿だった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「何でオレが面倒なんだ。それに今は生徒達にやたら捕まってたせいでHPはマイナスに近いんだよ」
「こういう時くらい少しでも部活に貢献して下さいよ。一応点数は入るんだから」
岳歩は応援プログラムの後、女生徒達に囲まれてなかなか抜け出せずに居たらしい。すぐに着替えて押し付けられた委員会運営などの仕事に移ろうにも出来ず、やっとどうにか言い含めて解放された時に芽衣子が岳歩を求めてやってきたのだ。
「あーーーっ、鬱陶しいなっ! 髪解くんじゃなかった」
「いいじゃないですか。未来がよろこびますよ」
「あいつによろこばれても俺が楽しくねぇよ」
「1つ三つ編みでいいんなら後でワタシしてあげますから、今はほら早くっ」
廻りに聴こえないことを良い事に岳歩はコースを走りながら気怠そうに悪態を吐いていた。芽衣子はそれを横で聞きながら自分の引いた御題はこれで正解だなと1人納得した。
丁度その時、目の前を他の選手が御題を持って先行した。芽衣子が少し苦い顔をして速度をあげたのに気付いて、岳歩は後ろから芽衣子を抱き上げた。
「~っきゃぁ!? 」
岳歩はそのまま肩に担ぐ様な形で芽衣子を抱えると勢い走り出した。
「ちょっ、先生! 速っ、ちょっ、少し怖いってっ・・・降ろして下さい~! 」
「お前に合わせて走る方が遅い。そのまま肩にしがみついとけ、離すなよ」
すぐさま前の選手を抜くと、その勢いのまま3人抜きしてゴールした。結果3位である。
1位を取った櫂人が2人のところに駆け寄り声をかける。
「早かったな。つうか先生、これOKなの? 」
「さぁ? まぁいんじゃねぇか」
そう言いながら横を向くと、未来が岳歩達の方に向けて輝かんばかりにイキイキとシャッターとおろしまくっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「「おかえりなさーーーい」」
「おう、戻った」
「・・・ただいまぁ」
「芽衣子先輩、疲れてますね」
「少しだけ漣の気持ちが解った気がするわ」
「振り回されるというより世話してると思った方が幾分楽になりますよ」
「・・・あ~、ですかね」
「ナニナニぃ、何の話ぃ~? 」
無邪気な凛に芽衣子と漣が深く溜息を吐いた。櫂人は久美達の居る方向へ目を向ける。未来が戻り、そこに留佳も合流したらしく姿が見えた。
―――あの2人に、問題児2人の相手をさせるのはそろそろ限界だな。
この対抗戦が終わったらまず先に彼女達の所へ行こうと櫂人は1人そんなことを考えていた。
次の瞬間、部活対抗戦終了のアナウンスが流れた。
勝者は3年連続ジャマ研の独走1位が決定、委員側が用意したディアマンテスの『勝利のうた』がそれを讃える様に会場に響き渡った。

to be continued...

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • オリジナルライセンス

『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:16

原案者:七指P 様
お預かりした設定を元に書かせて頂いております。
拙いながらではありますが、楽しんで頂けたなら幸いです

ハロウィン忘れてたーーーーーーーーーっ( ̄□^ ̄;)!!!
明らかにそっちのネタの方が面白かったっ!
悔しいから次の文化祭編に流れ込ませてやるぅ!!
覚えてろよハロウィン!!

そんな回www
今日また3時間程パソコンの前で粘り仕上げるという意地を見せる
だって体育祭編は10月内に終わらせたかったんだもん
そして一番書きたかったのはこの回なんだものん
意地と欲は人をこうも此処まで突き動かすのか

今回は少し淡々とさせた
それと久しぶりに曲をば、しかしこれラテン音楽なんだよなぁ、ジャンル
一応調べて見たら派生音楽みたいなもので繋がりはある様に思えたので(解釈が間違ってなければの話だけれど)入れてみた
というかこの間、この回のネタを練りながら散歩してた時にこの曲を思い出しただけなんだけどね
思い付いたら使いたくなった、だって「勝利のうた」だよ、まんまだよ?
ちなみにこのアーティストの曲には「野茂英雄のうた」もあります(変なトリビア

あー・・・やっと書きたいシーンは書けたっ
この回はもうそれだけで満足だわ(笑

閲覧数:137

投稿日:2012/10/31 22:34:45

文字数:2,980文字

カテゴリ:小説

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