☆幼稚園
♪ハッピーバースデー
メッセージ:
「かわいいリンへ
おたんじょうび
おめでとう!
おじいちゃんより」
大きなリボンをしたリンちゃんに、大きな箱が届きました。
「わぁ!
こんなにおおきなプレゼントみたことないよ!
なんだろう?」
箱を開けると、いすにすわった青い目のお人形がおはなししました。
「はじめまして、おじょうさん。ぼくは カイト。一しょに あそびましょう」
「すごい!おおきいね!かっこいい!」
うれしそうにリンちゃんは抱きつきます。
「ありがとう!お礼に お歌を歌います」
お人形はきれいな声で楽しそうに歌いました。
「わぁ!こんなにうたがうまいおにんぎょうはじめてみたよ!あそぼう!」
♪おひめさまごっこ
リンちゃんは白いお気に入りのワンピースを着て、カイトに白いお花のかんむりをつくってあげました。
「わたしは おひめさま!
あなたは おうじ!」
ふたりは手をとっておどります。
「それじゃあ
白いお馬でおむかえしよう!」
カイトは元気に言いました。
「そんなのいらない!
おひめさまは
きいろいおおきなくるまで
いちばんはじめにのりこむの!」
リンちゃんはもっと元気に言いました。
♪しゃぼん玉
ふたりはしゃぼん玉をふいています。
「かいと しゃぼんだま
どこまでとぶの」
「かいと しゃぼんだま
なにいろなの」
カイトは少し考えてから言いました。
「どこまでも とぶといいね」
「赤から青へ、緑から、リンちゃんの色になるんだよ」
すると、リンちゃんはニコニコと
「それならしあわせだね!」
と土をいじりながら笑いました。
♪アルプス一万尺
お母さんがごはんを作っている間、リンちゃんはねむそうでした。
「なにかおはなしして」
「それよりアルプス一万尺しましょう」
カイトはリンちゃんに新しい遊びを教えてくれました。
「これはね海の向こうの歌だったんだよ」
リンちゃんはテレビの女ゆうさんにむ中で、聞いていません。
「これはね山を登る歌になったんだよ」
きがつけば、ねています。
♪チューリップ
短いズボンにリボンをつけたリンちゃんには友だちがいます。二つむすびのミクちゃんと、長いかみのルカちゃんです。
「はじめまして!ぼくはカイトです、一しょにあそびましょう」
ふたりはすぐにカイトを気に入って、よんにんでおりがみであそびました。
♪おままごと
ミクちゃんはいつも月曜日にリンちゃんの家に来るようになりました。
ルカちゃんは金曜日に来ます。
「カイトおにいちゃんうたって」
「カイトおにいちゃんおどって」
リンちゃんはおもしろくありません。
「カイトはおにいちゃんじゃないもん」
「みんなリンより
カイトとあそびたいんだ」
そうして泣き出しました。
♪おてつだい
「リンいがいのひとと
あそばないでね」
そして月曜日ミクちゃんが来て
カイトは言いました。
「ごめんね、ママのお手伝いがあるからあそべないんだ」
金曜日も同じことを言いました。
カイトはシャボン玉を飛ばした庭でせんたくものを干しています。
♪ないしょ話
それからリンちゃんの家には誰も来なくなりました。
ある日、カイトがお母さんのおつかいに一緒に行くと、ミクちゃんとルカちゃんがいました。
「リンちゃんのすきなものおしえて!」
「みかんと、くるまと、ぼく?」
「こんど、リンちゃんのおたんじょうびかいしよう!」
♪ぶどうのパン
リンちゃんはさびしくなってきました。プール教室のお迎えになかなかふたりが来ないからです。お母さんとカイトがやっとやってきて、おいしいぶどうのパンと甘い飲み物をくれました。
「リンいがいのひととあそんでない?」
「あそんでないです。さむくないですか」
いつもは「はい」というカイトが今日はおしゃべりでした。
リンちゃんはなぜかもっとさびしくなってきました。
♪おたんじょうびかい
リンちゃんの次のお誕生日がやってきました。
みんながパーティーを開きました。
おじいちゃんは、ランドセルをおくってくれました。
おかあさんは、自転車を、
ミクちゃんは、みかんのおかしをくれました。
ルカちゃんは、車のずかんを、カイトは、カラスの歌を歌いました。リンちゃんはよくわからなかったけれど、お母さんがうれしそうなのでうれしく思いました。たくさんのプレゼントに囲まれてなかなおり。
〇中学年
♪ボール
リンちゃんは小学校に入って、たくさんの友だちができました。その中でも、ミクちゃんとルカちゃんとはとくべつ仲良しです。今日もボールであそんでいますが、遠くに投げてしまいました。
取りに行くのが大変だったので、カイトに行かせることにしました。
カイトが戻ってきた時、リンちゃんはシールこうかんをしていました。
♪変な子
小学校はようちえんのようにスモッグを着なくてよいのです。
かわいいワンピースやスカートをはいている人がたくさんいるのがよくわかりました。そしてみんなはいいました。
「リンちゃんはスカートはかないの?」「お人形の着せかえごっこ楽しいよ。MEIKO型を買ってもらったんだ」「男の子の遊びはらんぼうだよ。KAITO型はあぶないよ」「KAITO型は変だよ」「車で遊ぶなんて変だよ」
そういわれ、リンちゃんはスカートをはいて女の子とだけ遊ぶようになりました。
♪おけいこ
上の学年になり、ローマ字を習いました。「KAITO」も書けるようになりました。でも、ルカちゃんは英語を習い始めて、「VOCALOID」も書けます。
学芸会で劇をすることになりました。おひめさまの役はミクちゃんがやることになりました。歌うことがある役で、
音楽教室に通っているミクちゃんが選ばれました。
「いいなぁ!」リンちゃんはお母さんにたのんで、どっちも習うことにしました。家の手伝いをする約束をしました。
♪冷たい風
KAITOはリンちゃんと遊ぶことがへりました。お母さんの買い物についていくことがふえました。そして、帰り道にKAITOはお母さんにいいました。「ぼくもシール帳ほしいです」「ぼくもお手伝いしたらおこづかいほしいです」お母さんはこまってしまいました。「リンはいいけど、KAITOは…男の子で、ロボットでしょう?」KAITOは「はい」と言わずに、「今日の風は冷たくないですか」と答えました。
♪ステキな友だち
それからまたリンちゃんのおたんじょうびがやってきました。
KAITOはリンちゃんにシールを買ってあげました。ルカちゃんとミクちゃんは前よりもじょうずに「ハッピーバースデー」をえんそうして歌いました。
「わあ!こんなに音楽がうまい友だちはじめてみた!」リンちゃんがそういうと、「リンちゃんだってステキだよ?」「この前、ピアノ練習してるの聞こえてきたよ」とてもうれしかったのですが、話をきくと水泳に行っている間にKAITOがひいているようでした。
〇高学年
♪サクラのうた
また春が来て、リンちゃんはもっと大きくなりました。読める字も歌える歌も増えました。
ミクちゃんは合唱団に入り、それからテレビに出るようになりました。
ルカちゃんは男の子に声をかけられるようになりました。中学校に入る前に英語を教えてほしいそうです。
リンちゃんはテレビで見た桜の歌を適当な英語で歌ってみました。KAITOは童謡を歌いました。
♪どうして怒りたくなるの
リンちゃんはKAITOにイライラするようになりました。
「おじょうさん、遊びましょう」
「その呼び方、ムカつく」
「おひめさま、遊びましょう」
「アタシは忙しくて具合が悪いの」
「女神さま、遊びましょう」
「あんた歌ヘタじゃない」
KAITOがちょっと考えて、
「みかんか、りんご食べますか?おいしいですよ」と尋ねると「反抗してみなさいよ」とリンちゃんは返し、「いやです」とKAITOはつぶやきました。「めんどくさい」こんな調子だからリンちゃんはKAITOがいやになったのです。
♪いらないもの
リンちゃんはKAITOにお誕生日でも何でもない日にプレゼントをすることをしました。
「アタシもうこれいらないから」そうしてシール帳をくれました。KAITOはとても喜びました。リンちゃんはもっと何かしてやろうと思いました。
♪比べっこ
「KAITOとアタシ、どっちの方が高い声が出せるか競争」そして声を久しぶりにあわせました。
「あああああー」
リンちゃんの勝ちです。
「ほら、アタシの方が上手い。低い声も出せる。英語はそれが大事」
またやってみると「あああああー」
KAITOの勝ちです。
それなのに、「わあ!こんなに歌がうまい女の子はじめてみた!」とほめるので、リンちゃんは怒りだしました。
♪うそつき
「バカにしないで!子ども扱いしないで!」「ロボットのくせにウソつき!」
KAITOのマフラーをつかんで思いっきり引っぱりました。
リンちゃんはにらんでいるのに、KAITOはぽかんとしていました。
「…?…やーらーれーたー」「これはどういう遊びなんですか?」
リンちゃんはすぐにKAITOから離れて、うろたえました。
はじめてKAITOを、ロボットをこわい!と思いました。
♪本物じゃない
「不気味!変なの!こっちにこないで!」
KAITOは悲しそうにしています。「ぼくを嫌いになりましたか?」
「なぜそんなことを言うんですか?」
「ぼくはおじょうさんが好きなんです」
リンちゃんは混乱しました。なんでこんなものと一緒に暮らしてたんだろう!どうしてこんなものに負けたんだろう!好きだなんて、それもうそ!と悲しいような不思議な気持ちになりました。そして、りんごを切るためのナイフを握りました。
♪ナイフ
リンちゃんは自分でも、何をやってるんだろう!とどこか落ち着いた気持ちでいました。
「あぶないですよ!」KAITOにナイフを向けても、「ぼくはこれからどう料理されるんですか」「おままごとですか」と言います。またイライラしました。もっとKAITOを困らせて傷つけてやりたい、さっきのような別の顔が、見たくないけど見てみたいと思いました。KAITOはリンちゃんのする大抵のことは喜んでしまうからです。そして、自分にナイフを向けました。
♪あばれる
「KAITOより低い声も出ないなんて、こんな喉いらない!」
KAITOはナイフを取りあげようとしましたが、リンちゃんは大きくなっていて、あばれるのを止めるのは大変でした。KAITOはリンちゃんを抱きかかえるように捕まえました。
「KAITO!何やってるの!」お母さんはそこだけを見ていて、怒りだしました。
♪試したの
「KAITO、あなたはロボットでしょう!私のリンを傷つけないで!」
「リン!気をつけなさい!」リンちゃんは泣き出しました。
「KAITOは悪くない!アタシが子どもでバカだったの!」
「アタシを本当に好きなら止めてくれると思って、からかっただけなの!冗談なの!」
お母さんはもっと叱り出しました。
「もう大きいでしょ!それに一体いくつ習い事してるのよ!?」
「ふざけないで!遊びでそんなことしないわ!」
「KAITOもすぐに止めなさい!」
KAITOはぼやっとしていて、反省しているのかよく分かりませんでした。
♪悪い子はお外
「もう悪い子をこの家に置いておけない」
「お外に捨てちゃおうかしら」
リンちゃんもKAITOも、罰を知って絶望的な表情を浮かべました。
「ぼくが悪いんです。すみませんでした。捨てないでください」
「ごめんなさい!捨てないで!」
お母さんは声は楽しそうでしたが、とても怖い顔をしていました。
「KAITOを捨てるわ」
リンちゃんはもっと泣き出しました。
「やめて!ごめん!ごめんってば!」「やだ!許して!ごめんなさい!」
お母さんは何も言わないし、顔色ひとつ変えません。
「ごめんなさい!いくら謝ればいいの!こんなに謝ってるのに…」
リンちゃんはさめざめ泣き出しました。
♪許される
しばらくして静かになってから、お母さんは優しく言いました。
「わかった。家には入れるわ」
「でも、KAITOはリンと同じ部屋には入らないこと」
「リンは習い事をやめて、塾に行くこと」
リンちゃんは泣きつかれてしまって、ただただうなずいて、ママの言うことを聞くことにしました。
○
♪柵のついた部屋
リンちゃんは、今までの自分が恥ずかしくなりました。熱心に勉強するようになりました。
そして、KAITOには檻のような柵のついた日当りのいい真っ白な部屋が与えられました。
KAITOの青い髪、青い眼が冴えて見える小ざっぱりして何もない部屋でした。
椅子に座って全く動かなくなってしまったのを見ると、まるで死んでいるようでした。元々、生きていないはずのロボットが、より生きていない、と感じられるほどでした。
リンちゃんはママやKAITOに、もっともっと、ごめんなさいを言わなくてはいけなかった気がして、KAITOを見ないように気にしないようにしました。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
「彼らに勝てるはずがない」
そのカジノには、双子の天才ギャンブラーがいた。
彼らは、絶対に負けることがない。
だから、彼らは天才と言われていた。
そして、天才の彼らとの勝負で賭けるモノ。
それはお金ではない。
彼らとの勝負で賭けるのは、『自分の大事なモノ全て』。
だから、負けたらもうおしまい。
それ...イカサマ⇔カジノ【自己解釈】
ゆるりー
小説版 South North Story
プロローグ
それは、表現しがたい感覚だった。
あの時、重く、そして深海よりも凍りついた金属が首筋に触れた記憶を最後に、僕はその記憶を失った。だが、暫くの後に、天空から魂の片割れの姿を見つめている自身の姿に気が付いたのである。彼女は信頼すべき魔術師と共に...小説版 South North Story ①
レイジ
(Aメロ)
また今日も 気持ちウラハラ
帰りに 反省
その顔 前にしたなら
気持ちの逆 くちにしてる
なぜだろう? きみといるとね
素直に なれない
ホントは こんなんじゃない
ありのまんま 見せたいのに
(Bメロ)...「ありのまんまで恋したいッ」
裏方くろ子
chocolate box
作詞:dezzy(一億円P)
作曲:dezzy(一億円P)
R
なんかいつも眠そうだし
なんかいつもつまんなそうだし
なんかいつもヤバそうだし
なんかいつもスマホいじってるし
ホントはテンション高いのに
アタシといると超低いし...【歌詞】chocolate box
dezzy(一億円P)
ミ「ふわぁぁ(あくび)。グミちゃ〜ん、おはよぉ……。あれ?グミちゃん?おーいグミちゃん?どこ行ったん……ん?置き手紙?と家の鍵?」
ミクちゃんへ
用事があるから先にミクちゃんの家に行ってます。朝ごはんもこっちで用意してるから、起きたらこっちにきてね。
GUMIより
ミ「用事?ってなんだろ。起こしてく...記憶の歌姫のページ(16歳×16th当日)
漆黒の王子
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想