第十二話 ―日の丸印の―
「みんなに問題です!!」
ミクが手をあげる。
道行く人の視線がミクに集中した。
「どうぞ。ミク姉」
リンがミクを指した。その表情からは、恥ずかしいからやめてくれというのが伝わってくる。
「武蔵といえば、私にとって欠かせないものがあります。それはなんでしょう?」
「ハルちゃんに合う素晴らしい風景に決まっt…[ゴンッッ!]
「えー…。バカイトは無視して…。ほかに」
「ガリガリ君」
「この時代に合ってません。レン君の発言はカットしておいてください」
「あ、サツマイモとか」
「ルカさん惜しい!そういう感じ!」
「芋なの?」
リンが首をかしげる。
――かわいいなぁ。
自分の姉でいながら、こういうことを思うのはどうかとレンは考え直す為にリンから顔をそらす。
「野菜かな!」
「ミク姉、『近い』の範囲広いよ」
「ミク姉の好きな野菜ってあれしかないだろ」
「「ネギ」」
ミクは満面の笑みで
「だいせいかーい!深谷ねぎだよ!!」
「で…それが?」
「食べたいです」
「ミク姉らしすぎる」
さすがのレンも呆れた。
「いいんじゃないの?お店を探しましょう」
人形屋に行った後、メイコは僅かにではあるが、暗くなった。
カイトはそれを気にしているようなのだが、それにはルカしか気付いていない。
「やったあ!レン君、地図!」
「はい」
こういうのを見るとミクはやはり16歳であると感じる。
「流石にネギ屋とかはないね」
「あっても繁盛しないだろうね。ミク姉ぐらいしか来ないからね」
「そうだな」
「うどん屋とかなら上にネギとか添えてあるじゃないかしら」
「さっすがルカさん!えーと、うどん屋うどん屋」
ミクは地図を指で辿っていく。
「そういえば、煮ぼうとうも有名ね。私好きなのよ」
メイコがふふっと笑う。
「昔から変わらないよな。めーちゃんの笑い方ってさ」
「同じ人だから…。普通は変わらないわね」
「俺はその笑い方好きだけどな」
「?」
カイトがボソッと言ったため、メイコは聞き取れなかった。
「まだこの辺にはないみたいだから、もう少し先に行かないとだめだわ」
ミクがレンのカバンの中に地図を突っ込む。
「地図、出しとかなくていいの?」
「大丈夫、覚えたから!」
そう言ってミクは親指を立てた。
おまけにドヤ顔付き。
「そこまですごくないから」
レンが手で制する。
「…ハルちゃん、どうかしたかい?」
カイトがハルの視線の先を見る。
「あ、いえ。十万石饅頭という看板が出ていたので、気になって…」
「リンも確か饅頭好きだったよな」
カイトがリンに向き直る。
「え!うん。てか、何で知ってるんですか?」
「前に遊郭に来た事情をレンから聞いたんだ。まだ4人で旅をしているときに、リンが饅頭のお店を見つけて大はしゃぎしてたそうじゃないか。そこからのごたごたで俺たちに会ったんだろ?」
「そうなんです…。ちょっとあたしがいらぬことを口走ったばかりに、レンは大惨事になったしまったんです。改めてごめんね?」
「あ、あぁ」
意外なリンの振りにレンは少しばかりびっくりした。
「時間も時間ですし、お茶にしたらいかがでしょう?」
ルカが手をあげる。
「「賛成!」」「でも、ネギも食べたい!」
ミクとリンが真っ先に手をあげる。
「じゃあ俺も」
レンが手をあげる。
「俺もだ」
カイトもレンにならって手をあげる。
メイコとハルが顔を見合わせ、2人とも手をあげた。
「じゃあ、決定ですね。支払いは上級大将の担当で」
「平和だから俺はここにいることが出来るんだからな?分かってるか?」
「わかんなーい」
「わかりたくもなーい」
ミクと双子の子どもならではの攻撃。
「さ、早く入りましょ」
「そうですね」
メイコとハルとルカがさっさと入っていくのをみて、ミクとリンとレンとカイトも入っていった。
「いらっしゃいませ!」
日本語は上手いのだが、外国の人だと分かる店員が迎えてくれた。
入るとすぐにカウンターらしきものがあり、奥で少し飲食できるようになっているが、3席しかない。
とても小ぶりな喫茶店、といったところだろうか。
しかし、天井は高いためそこまで窮屈とは感じさせない。
「Long time no see!」
突然の後ろからの声に、7人は驚いて振り向いた。
そこには金髪の女性と男の子が立っていた。
「An!Oliver!It was fine?」
6人の頭の上にはクエスチョンマークがついている。
「Yeah. Of course.How about you?」
「As you see!Oliver,Got bigger.」
金髪の男の子は、緑髪の店員に撫でられて、照れくさそうであるが、嬉しそうだ。
「ちょっと!他のお客さん待たせて何してるの!」
「あ、兎眠さん。すみません。Come in.」
「全く。どうぞ、好きな席にお座りください。ご注文の際は、机の上のベルを鳴らしてくださいね」
そういうと、紫色の髪の女性は奥に入っていってしまった。
「ちなみに、さっきの会話ルカさん分かった?」
レンがルカに尋ねる。
「えぇ。もちろんよ」
「え!すごいねルカさん!!」
「ありがとう。リンちゃん」
「「じゃあじゃあ、さっきの会話日本語に訳してよ!」」
双子がルカに迫る。
「わ、分かったから。近いわ二人とも」
「「うん」」
「久しぶりね!、アン!オリバー!元気だった?、ええ。もちろんよ。あなたは?、見てのとおりよ……って感じね」
「へー…」
「ルカはどこでそんな言語を学んだの?」
今度はメイコが尋ねる。
「留学させてもらったんです。メイドになる前に。留学先でウェイトレスというものがあって、それがいいなと思ってメイドになったんです」
「それは俺も知らなかったな」
「話す気になりませんもの、カイトさんには」
「ひどいな」
「ちなみに、私もすこーしならオランダ語分かるよ!」
「ミクは姫様だからな」
「でも、脱走してきてた所為で少ししかわからない」
「「「「「「でしょうね」」」」」」
「何ともミク姉らしくていいんじゃないか?」
レンがフォローする。
「フォローは不要よ」
ルカはその間、金髪の男の子を見つめていた。
――どこかで見たような……。
思い出せそうで思い出せない。
次回へ続きます。
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