私は、宝物を入れているハコの中にある、紙飛行機の数を数えた。
「今日で十通目だわ」無意識に顔がゆるむ。
 少しずつ増えていく宝物は、今迄で一番楽しいことだった。・・・・あなたもそう思ってくれてるのかな・・・・?
 手紙を読んでいると、収容所がどれぐらい酷いものか分かる。彼はなんでもないことのように、文の中に書いているけれど、一番恐ろしいと思うのは、それがあたりまえのことのように言っていること。私はこんな体だから、小さい頃から「私より不幸な人はいない」と思って生きてきた。でも、もしかしたら、私はかなり幸せなのかもしれない。たしかに、この生活が好きとは言えない。それでも、両親が隣にいて、優しい人たちに囲まれている、私は幸せ者だ。
 ・・・・ねぇ、あなたは私に“はじめて”をたくさんくれるのね。文通なんてはじめてだし、こんな気持ちになったのもはじめてなの。嬉しいけど、苦しいよ。
「リン」
 ママの声がして、私はさっと紙飛行機を隠した。
「な――何?入ってきて」 
 ガラガラ、と、ママが入ってきた。
「元気かなって思ったのよ。ケーキ焼いたの。いる?」ママが手に持っていた、ピンクの箱を、少し持ち上げた。
「いる!ありがとう!」私は即答した。
「お医者様には内緒よ」ママは笑った。
「やったぁ」私はルンルンで呟いて、体を起こした。
――そのとき。
 隠したはずの紙飛行機が、ポトッと床に落ちた。私はあせって手を伸ばしたけど、ベッドの上からじゃ届かない。私は少し身を乗り出した。
「リン?どうしたの?」ママが声をかけた。
「あ――ううん、何でもない――」
 私は急いで答えたけれど、ママがベッドを回って、私が身を乗り出しているほうに来た。そして、私が取ろうともがいている紙飛行機を、ひょいっと取り上げた。
「あっママ――」
「何、これ?」ママは紙飛行機を開いて、中身を読み始めた。
 ママの表情がだんだん険しくなっていく。私は必死で言い訳を考えた。“収容所からここまで、これが飛んできた”とか?ありえないわよ!もっと何かないの!?どうしよう・・・・!
「・・・・マ――ママ?」私は無言のママを見た。
 ママは、はぁ、と大きくため息をついた。
「あなたが病院を抜け出しているのは、知っていました。お父さんの仕事場に行っているのも、ちょっと前にリンがお父さんの仕事場のことを話題にしたから、もしかしたらと思ってたわ。でも、あそこに収容されている男の子と、文通をしているなんて・・・・お父さんが知ったら」
「でも――でも、パパが知らなければいいんでしょう?」私は必死で言った。「ママはパパに行ったりしないよね?ね?」
 ママは紙飛行機をチラッと見て、また私に視線を戻した。
「仕方ない子ね・・・・」ママは苦笑いした。「はじめてのお友達だもの。お母さんはリンのお友達について言う権利はないわ」
「本当!?」私は大きい声を出した。
「ただし、病状が悪化すれば話は別です。お父さんにお話します」
「やった。ありがとう、ママ。大好き!」
 ・・・・危ないトコだった・・・・。もしあなたが私からいなくなったら、って思うと・・・・。

      ――あなたがいるならそれだけで
              生きている意味がある。
         光の差さないこの部屋で、
               未来は輝いていたよ――

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  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

囚人―Prisoner―06#一光

ママをいい人にしたかったんです。
ママは私の中で、ルカさんのイメージw

閲覧数:738

投稿日:2009/06/07 11:05:12

文字数:1,405文字

カテゴリ:小説

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  • 華音

    華音

    ご意見・ご感想

    囚人P様
    なんと!?
    そんなに気に入ってもらえるなんてっ
    きゃーーーーー(*ノω<*)
    顔がwゆるむwwwww
    日記で紹介して頂けるなんてっっっ
    きゃーーーーーーー((絶叫w
    私も囚人P様の作品はダイスキなのですよー!

    もちろん!ぜひ!日記で紹介しちゃってください!!
    ありがとうございました!!!

    2009/06/11 20:53:12

  • 囚人P

    囚人P

    ご意見・ご感想

    何度もコメントスイマセん><

    ホントにこのシリーズ大好きです☆実は更新楽しみにしてたりしますww

    今度日記で紹介してもよろしいでしょうか??

    乱文スイマセン汗

    2009/06/08 23:13:17

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