窓から差し込む光が鬱陶しかった。
すごく、すごく、嫌だった。

僕を見て、マスターは脅えた顔をした。
ちょっと震えていた。

僕はそんなマスターに手を伸ばした。
耳もとから、あごのラインをなぞって、唇にそっと触れた。
僕の唇とは全然違った。
柔らかいんだね、マスターの唇。

ちょっとだけ、泣きそうになった。

君が僕を拾ってくれたおかげで、
僕は今まで見たこともないような世界を見れた。
夕暮れの公園があんなに楽しいんだとわかった。
公園で食べるアイスクリームはすごくおいしかった。

いや、違う。

マスターと食べるアイスクリームは、すごくおいしかったんだ。

ソファで寝るのが寂しかったから、こっそりマスターのベッドに
忍び込んで抱き枕みたいにマスターを抱きしめて寝た。
こんなに柔らかくて、優しくて、暖かいものを僕は知らなかったよ。

マスターのおかげで、僕はいろいろなことを知った。
こんなにきれいな世界を僕は知らなかったよ。

ねえ、マスター。

僕にとって、マスターは唯一なんだ。
でも、マスターにとって僕は唯一じゃないんだよね。
ボーカロイドだから。………わかってるよ。

でも、わがまま言っていいかな?

「マスター」

彼女は脅えていた。
そりゃあ、そうだよね。こんなに笑ってるんだから。
僕だって、なにがなんだかわからないんだ。

走馬燈みたいに記憶が巡って、

今はとても

とても君を抱きしめたい。

僕はぎゅっと腕を握った。

「……やめ、って!」

彼女は全力で振り払おうとする。
それが……許せなかった。

「マスター」

そのまま僕は、マスターを押し倒した。
マスターはびっくりして、目を丸くしていた。
僕はなにもせず、ただ彼女と視線を合わせていた。
潤んだ瞳がきれいだった。

「たぃ、と…やめて」

泣かしたいわけじゃない。
傷つけたいわけじゃない。
ただ、マスターにこうして、見ていて欲しいんだ。
僕だけをただ、見ていて―。

「……ますたー、僕のこと、嫌い?」

「…たぃと…」

「…ねぇ、ますたー、ぼくのこと、きらい?」

僕はコートにアイスピックを忍ばせていた。
「きらい」って言われたら、………どうするつもりなんだろう。
ぼくはマスターをきずつけたいわけじゃないのに。
なんで、
ぼくは、
ぼくは、
ぼくは―。

ぼくはこんなこと、したくないのに。

「ねえ、ますたー」

僕の顔は無意識のうちに笑みを浮かべていた。
顔が勝手に動いてるような、そんな気がして気持ち悪い。

「ねえ、ますたー」

我慢していたものが、すべて表に出てしまう。
僕を制御していたなにかが、すべてはずれてしまっているのだろうか。

制御していたプログラムが、全部《エラー》を警告している。

僕は言葉を告げる。

「ねえ、ますたー」


「ぼくは、あなたのことを愛しています」


マスターの瞳が揺れた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

優しい傷跡 第11話「告白」

「キラキラの世界」って曲、いいですよね^^
最近、ずっとこればっかり聞いてます。
切なくって大好きです。

閲覧数:1,248

投稿日:2008/11/28 21:05:01

文字数:1,215文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    これから、更新は週末にしようと思います^^;
    でもいいアイディアが浮かんだら、一気に書き出すつもりです。

    久々すぎてストーリーがわかんなくなってきた…。
    私も一気に読んで来ます!><

    2008/11/29 09:02:44

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