†プロローグ†
―全てを飲み込んでしまうかのような、深い闇が支配する時間―
みんなもう寝てっかなぁー。
・・・ん~、確実に寝てんなぁ。ちょっと置いてけぼり食らった感じがするわー。
ブイーン。
聞こえるのは冷蔵庫の静かな機動音だけ。
苦笑しながら今までの事を思い浮かべてみた。夕飯を食べ終えた後、学校の帰りに衝動買いした漫画を十数巻ぶっ続けで読破した。それなりに時間はたっていて当たり前である。
まぁ、いいや。それよりも早く寝ないとな。いくら春休みだとしても、午前中ぶっ続けで寝てると怒られるしな。
あくびをかみ殺して、思想している間に歯と顔を洗い寝間着に着替えた少年。――灯也(トウヤ)は、寝台に入った。そしてふと、こんな事を思い出した。
真夜中は合わせ鏡のように世界が重なる刻なんだ。その刻に意識を手放し、魂だけの姿となった者は、重なった他の世界にトばされてしまう事があるんだよ。
と、×××が言っていた事を。
・・・・あれ?これ、誰が言って、たん、だっけ…?ダメ、眠…ぃ
睡魔に誘われるまま、眠りの渦に沈んでいく中、灯也は声を聞いた気がした。
「ソンな心配そうな顔するなよ、少年。必ずトばされる訳じゃないし、むしろ、トばない事の方が圧倒的に多いんだ。・・・・ん?もしトばされた?そうだな。まず、絶望するな!俺みたいに、良い世界にトばされる事もあるからさ。ま、住めば都、ってヤツだ。・・・とりあえず、確実に生きる事だけ考えてろ。そしたら、まぁ・・・死なねーから」
その声の主は生きるだの死ぬだの、重い単語を並べて無邪気に笑っていた・・・気がする。
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