『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:22


「一気に寂しくなったわねぇ~」
デジカメを手の中で遊ばせながら、未来は窓際で暇そうにぼやいた。文化祭も終わり、楽しさの余韻を打ち壊すような期末テスト期間に突入した昨今、ジャマ研にはテスト勉強の為に顔を出すいつもの面子が揃っていた。
「未来ちゃん、何撮ってるの? 」
「んー。野球部とサッカー部の捏造ショット」
「・・・最近密かに流行ってる妙なものはお前か」
ちょうど部室に顔を出した岳歩が呆れ顔で現れた。仕事関係の書類を手にしている、どうも未来達と同じように部室でやろうと足を運んできたようだ。
「今日は人が少ないな。1年はどうした」
「1年っコらは凛ちゃんの為に双子んちで勉強会だってぇ~」
「何処でやっても同じだろう、あいつらの場合は」
「あはは、でもたまには良いんじゃないですか。久美ちゃんと漣君一緒だし大丈夫だと思いますよ」
「まぁな。それで、3年達は」
「此処最近は来ませんよ~。テスト期間中だし、受験もそろそろ本腰でしょう~」
文化祭後の部活で、3年の引退の話が正式に岳歩の口から告げられた。皆寂しそうな表情を浮かべたが、これで別れという訳でもないだろうと留佳のざっくばらんさが場を和ませた。それからすぐにテスト期間に入ったので今のような状況が出来上がっている。
「まぁ受験のタイミング的にはこの流れは妥当だな」
「でもさすがにこうも一気にそんな感じになると・・・やっぱり少し寂しいですね」
「そう言ってやるな。吾妻も来年そうなんだから予習のつもりで留めとけ」
拍は少し寂しそうに笑った。
「そういや、お前達。文化祭の時何処に居たんだ? 」
文化祭の一般公開の日、岳歩は学園内の巡回係にあたっていたため、行く先々で部員達にも顔を合わせていた。しかし2年の2人だけは見つける事が出来なかったのである。
「ちゃんとクラスに居ましたよ。ただ表に出なかっただけで」
「吾妻は解るが、石川はそういうタイプじゃないだろう」
「だぁってぇーっ、表なんかに出て風紀に見つかったらとんでもない事になるじゃないですかぁー」
どうにも未来は出来る限り気配を消し、生徒会の記録係とは別にデジカメを持ってクラスイベントに現れる生徒達を盗撮していたらしい。未来のクラスはお化け屋敷迷路で、デジカメの暗視機能を使い、お化け役をしながら片手にはシャッターに繋いだケーブルレリーズを動かしていた。対する拍のクラスは授業で習ったプログラムを応用して作ったタッチパネル式のゲームで来る人達を楽しませていた。そのため拍は裏方でそのプログラムの制御を行なっていたため姿が見当たらなかったのである。
「吾妻に関しては解ったが、石川が見当たらなかった原因はそれか」
「いっやぁ~、おっかげでおっもしろいもん撮れちゃいまして~♪ 」
そう言ってうれしそうに笑う未来に、2人は顔も知らない誰かに同情を向けていた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

拍が少し席を外したタイミングを見計らい、岳歩は未来に声をかけた。
「おい、石川。この間頼んでいたヤツ、出来たか? 」
「えぇ、そーら勿論。はい」
鞄の中から取り出したのは写真屋で現像した時にもらうのアルバムだった。それをそのまま岳歩に手渡す。
「しめて3000円」
「まけろよ」
「200円既にまけてこの値段です」
岳歩はそれ以上言わず、大人しくその金額を払った。
「そーれにしてもなーんでほのめかしちゃいけないんですかー」
「金払ったんだ。全く知らない振りしてそのまま黙ってろよ」
「えー、フラグくらい立てさせてくださいよー」
「生憎、他人に手を出されてよろこぶ趣味はないんでな。そういうお前に一つ忠告しておいてやろう」
今貰ったアルバムに目を通しながら、
「世の中には弱点のない人間なんていねぇよ。持っててわざと見せつけて上手く隠すとんでもない狐だっていんだからな」
「・・・何ソレ。先生、自分のこと言ってるんですか? 」
「俺は別にお前と草薙以外にバレていない自信があるからな」
「バレてる時点でアウトじゃね? 」
「そこら辺はまぁお前達を信頼してってところだろ。まぁ・・・お前達以外にバレてるらしい奴はもう一人居るんだが」
「えっ、誰々!? 」
「それがさっき言った狐だよ」
要領を得ないと横で抗議する未来を尻目に岳歩はそれ以上は何も言わず、ちょうど戻ってきた拍が不思議そうに視線を向けてきた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「そういえば先生。期末テストが終わったら先輩達の引退なんですよね? 」
「一応そのつもりではいるぞ。大体この時期まで部活動してる事自体がおかしんだ。本来なら何処も夏で引退だからな」
「でも櫂人先輩はそれ系の進路を希望されていた筈ですよね」
「あー、あいつはな。草薙は放っておいても大丈夫だし」
留佳と櫂人は決して成績は悪くないが故、性格に眼を瞑られている部分が多い。でも決して協調性などが悪い訳ではなく、ただ周りが振り回されるだけの話で内申にはほとんど響かないのである。
「あっ、それならていあーーーん! 」
元気よく挙手をして未来が窓際から視線を移した。
「どうせなら12月入るし、クリスマスやろうよっ。先輩達も受験前の息抜きって感じでさー」
「未来ちゃん写真撮りたいんでしょう」
「言わずもがなでしょ~。無論そこら辺は手を打ちますけどね~♪ 」
「3年連中がOK出したらやれば良いさ。その代わり周りに迷惑かけるなよ」
「あいあいさー☆ 」
返事をした未来の瞳は悪戯に満ちた輝きが溢れているのを見て、2人は解らない程度の小さな溜息を吐いた。

to be continued...

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • オリジナルライセンス

『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:22

原案者:七指P 様
お預かりした設定を元に書かせて頂いております。
拙いながらではありますが、楽しんで頂けたなら幸いです

文化祭後のちょっとした間な感じ
後夜祭とか文化祭後の部活の片付けの光景とか考えたんだけど・・・
うん、ベタになるな・・・(とくに後夜祭
なので今回は2年と岳歩だけで話を展開してみた
相変わらず拍薄いけどね( ̄Σ ̄)
私の中で勝手に色々組み合わせや設定が膨らみつつある今日この頃
ちなみに文中で使った「最近密かに流行ってる妙なもの」は私の苦手ジャンルです(笑
好奇心って勝てないよねwww
狐に関しては・・・まぁ何処かで書けたらいいな、未来で!
はて、誤字脱字誤表現とか・・・無いとイイな(本当後から出てくるから泣きたくなるわぁ

閲覧数:91

投稿日:2012/12/08 01:53:19

文字数:2,360文字

カテゴリ:小説

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