『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』



猛り狂うように咆哮を上げる、巨大なドラゴン。

変化の瞬間に飛び乗ったのか、いろははドラゴンの右肩で鬣にしがみついていた。

予想だにしていなかった事態に、茫然としていたルカ。だがふと我に返って、大慌てでグミの元へと吹っ飛んでいった。


「ぐっ、グミちゃん!?何よあれ!?……なんなのっ、あのドラゴン!?」


ルカの激しい問いに、グミは揺さぶられながらなんとか声を絞り出した。


「……リュウトの音波術、『火竜変化音波』……通称《ドラゴラム》……!!特殊音波で全身の細胞を変化させて、全長50m越えの巨大なドラゴンに変身する超ド級の大技!!変化時のパワーはリリィの3倍、最高速度はがくぽの4倍を誇る、正真正銘『TA&KU』最強の化け物よ!!!」

「なっ……!?」


想定外のスペックに、またも唖然とさせられたルカがドラゴンのほうを振り向いた瞬間―――――


『ヴヴヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


凄まじい咆哮を上げながら、ドラゴンが殴り掛かってきた!!紙一重でよけるルカとグミ。

するとその部分の地面が、粉々に砕け散って天空高く吹っ飛んでいった。


「うわ………!!」

「やっば……!!ルカちゃん、近距離についたら間違いなくぶっ飛ばされるよ!!」

「わ、わかった!!皆さがって!!」


ルカの一言で、全員が距離をとる。

その中で、ミクがただ一人攻撃の態勢に入っていた。


「!!ミク!!」

「『Solid』なら……私なら奴の腕を落とせるはず!!……『Solid』!!」


灰緑色の髪が揺れ、全てを切り裂く斬撃音波『Solid』がドラゴンの左肩を襲う。


―――――が。ドラゴンの右肩に直撃した『Solid』は―――――その皮膚にかすり傷一つ付けることなくはじかれた。


「え……ええ!!?」

『ならこれならどうかしらね―――――メイコバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアストッ!!!』


驚愕のあまりへたり込んでしまったミクの隣で、メイコが出力全開のメイコバーストを放出する。

……が、そのメイコバーストすらも―――――ドラゴンの皮膚に当たった瞬間、弾かれて四散していった。


「うっそ……。」

「メイコさん!!ミクちゃん!!あいつの皮膚は地球上のどんな金属よりも固く作られてるの!!音波術じゃ太刀打ちできないよ!!」


グミが必死に呼びかけるが、メイコは猛然と前に走り出した。


「!?メイコさん!?」

「だったら直接攻撃しかないっしょ!!―――――ハッ!!」


更に加速をかけるメイコ。ドラゴンが猛スピードで拳を振り下ろすが、紙一重でかわして逆にその腕を踏み台にして登ってゆく。

腕を蹴り、胸を蹴り。そしてドラゴンの頭よりも高く跳んで―――――


「イェェェェェェェェェェェェェエガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!!!!!」


叫びながら右拳を、ドラゴンの左肩に叩き付けた!!半径5mほどの範囲が抉り取られ、肩に風穴が開いた。


「やった!!メイコ姐!!」


ミクが嬉しそうな声を上げるが―――――ルカは厳しい表情で突如走り出した。

様子が―――――おかしい。

苦痛の表情を浮かべたまま、右腕を抑えたメイコが頭から落下していく。


「間に合わない……!!ミク、行って!!」

「え!?あ、はい!!」


咄嗟に『Light』を発動し、超高速でメイコを受け止めた。

安堵したのもつかの間―――――


「きゃあああああああああああああああああ!!」


ミクが悲鳴を上げた。

ルカが駆け寄ると―――――そこにはミクに抱きかかえられた、悲惨な姿のメイコがいた。

右拳は粉々に砕け、金属製の骨が皮膚を突き破って飛び出している。回復しない限り、右腕は使い物にならなかった。


「リン!!レン!!回復お願い!!」

『O・K!!』


駆け寄ってきたリンとレン。そしてグミもついてきた。

メイコはちらりとグミを見て、苦笑いを浮かべた。


「ごめん、グミ……あんたのアドバイス、真面目に聞いときゃよかったね……いたたたた……。」

「メイコさん……!!」


目に涙を浮かべるグミ。

それでもルカは―――――気丈に叫んでいた。


「だ……だけど!!これであいつの左腕はもう使い物になんないし、戦況は変わっ…………!?」


そういいながらドラゴンに向き直った瞬間、その顔は驚愕に包まれた。

ルカの目に飛び込んできたのは―――――まるで触手のように生えてくる組織が、ドラゴンの肩の風穴を埋めていく様子。

自分は夢を見ているのか。そう自問自答したくなるような再生能力だった。

ルカはかなり焦った様子で、グミに振り向いた。


「グミちゃん!!なんか……あいつになんか弱点ないの!?」

「…………欠点なら……。」


重苦しい表情で、グミが呟いた。

ほんの少し期待した表情で、ルカがグミを見つめるが―――――

グミは少し申し訳なさそうな顔で、口を開いた。


「……あの子、まだ自分で自分の力を制御できないの……!!」

「……は!?」

「あいつは変化すると、自分の力に―――――強大なドラゴンの力に振り回されて理性を失うの!!一度変化したら、『リュウト』の意識も理性も全部吹っ飛んで、ただただ戦闘本能に任せて暴れる化け物になっちゃうのよ!!」


愕然とした。それはもはや弱点などではない。確かに欠点ではあろうが、その欠点は敵を殲滅するという目的のみにおいては逆に長所とも成りえる。


「何とかあいつを止める方法は!?」

「専用の鎮静剤を銃で撃ちこむか、あいつのスタミナが切れるまで待つしか……!!」

「その鎮静剤はどんなの!?」

「あのバカ学者たちの企業秘密であたし達にも教えてくれなかったからわかんないの!」

「じゃあスタミナ切れを待って―――――」

「それも無理よ!!あいつのスタミナは……暴走状態のまま、飲まず食わず不眠不休で1週間は戦えるほどなの!!底なしなんだよ!?」

「じゃあどうすればいいのよ!!このままじゃ町が……みんなが!!」


そこまで言って、ルカは我に返った。グミも泣いていたが、自分も泣き叫んでいたことに気付いたからだ。


「あ……ごめ……私……気が動転しちゃって……。」

「……あたしも……ごめん……何の役にも立てなくて……。」


兎にも角にも、これでメイコはしばらく戦闘不能、最高威力の『Solid』がはじかれた時点でミクの能力もほぼ通用しないと判明したようなものだ。

そしてリンとレンはメイコの回復にかかりきり。ルカは『最後の希望にはしたくないけど悔しいことにいつだって最後の希望になりえてしまう馬鹿』に声をかける――――――。


「カイトさん!!何とか足止めしt」

「言われずともぉい!!卑怯プログラム発動!!来い!!エクスイカバ―――――――!!!」


謎の掛け声と同時に、カイトが地面からスイカバーの刀剣・『エクスイカバ―』をたたき出した。その刀身は、なぜかいつもよりも長く、そして冷気を発している。


「え、なんか長くない!?」

「はっは―――――!!スイカバー30本分のスイカバー成分とこの冬の冷気が、エクスイカバーに力を与えるのだ!!」

「何その謎理論!!?」


ルカのツッコミもむなしく、カイトが先ほどのメイコのように猛然と突っ込んだ。

当然ドラゴンの拳がカイトを襲う。だがカイトはよけずに、卑怯プログラム『絶対バリア』を展開して受け止めた。


「おっとぉ!!こいつは重い!!だがだが足元がお留守だぜ!?『約束された勝利の氷菓』エクスイカバー!!やつを凍らせてしまいな!!」


左手でバリアを展開し、拳を受け止めたまま、エクスイカバーをドラゴンの脚に向かって投げつけた。

ギン、と金属質な音がして、エクスイカバーがドラゴンの脚に直撃する。

強固な皮膚に刺さりこそしなかったものの、当たった部分からまるで氷山に閉じ込められるかのように凍ってゆく。


『ヴヴォオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


凄まじい咆哮を上げるが、氷はドラゴンの脚を、尻尾を、胴体を包み込んでゆく。

慌てて右肩に乗っていたいろはが近くの木に飛び降り、ドラゴンに向かって何か叫びかけたが、ひたすらもがくだけでドラゴンは反応したようには見えなかった。

身動きできないまま、ドラゴンは氷の中に閉じ込められていった。


「どうだ!!これがこの俺の実力さ!!ルカちゃん、こんなもんでいいかい!?」

「予想以上よ……なんとかそのまま持たせて!!」

一見ふざけては見えるが、その実ルカたちの持つ音波より一つ上のランクの音波『潜在音波』であることには違いない。ミク達が全く太刀打ちできなかった相手を、無力化させてしまった。

ルカは歯痒かった。どれほど鞭の技を究めたところで、相手が巨大ではできることに限界がある。


(私にも……敵を直接叩ける力が……音波があれば……!!)


そんなルカの心境も知らず、カイトはエクスイカバーを拾ってさらに氷を厚くしている。


「このままガッチガチに凍らせてやんよ!これで身動きできないだろう!はっはっはっはっはっはっ!!」


カイトが馬鹿笑いを続けていると、突然グミが叫んだ。


「カイトさん!!油断しちゃダメ!!忘れないで!!」

「忘れるって……何をさ?」


ぽかんとするカイトの後ろで、氷がほんの少し軋んだ瞬間、グミは半ばあきらめたような表情で言った。



「そいつは……『火竜』なんだ……!!」



―――――直後。

つんざくような轟音と共に、氷が砕け散った。

仰天したカイトが振り向くと、天に向かって伸びる火柱が氷を内部から砕いていた。


『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!!』


氷を割って表れたのは、渦巻く炎を吐きながら飛び立とうとする―――――『火竜』。


「みんな………!!逃げてぇ―――――――――――――――――――っっ!!!!」


グミの一言で一斉に全員が走り出すも―――――



『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』



凄まじい咆哮と共に、火炎を纏った旋風が―――――ルカたちを襲った!!


「うあああああああああああ!!!」

「があああああああああっ!!!」


次々と火炎に飲まれ、地面に倒れ伏していく。ルカも必死に交わしていたが、渦を巻き先回りする炎はあっという間にルカの体を包んだ。

致命傷こそ追わなかった。アンドリューらの作ってくれた体は、焔に巻かれても溶けもしなかった。

だがそれでも、全身を焼かれ、もはや動くことはままならなかった。


「う……く……!!み……ミク……グミちゃ……みんなぁ……!!」


ずりずりと腕だけで体を引っ張り、仲間の元へとゆくルカ。

誰一人として命を落としたものはいなかったようだったが、どっちにしろ動けないのは一目瞭然だった。


「……ね……ルカ姉……これ……やばくない……?」

「……………やばい……かもね……。」


何とか体を動かして、ドラゴンのほうを見たルカ。

すると――――――――――


『ヴォオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


ドラゴンが―――――ルカ達とは反対方向に向かって飛び立とうとしている。

その方向は―――――町の方向!!


「あいつ……!まさか町を襲うつもりじゃ……!!」


それを見たルカはもう、倒れてなどいられなかった。

体が動かない。鞭もすべて焼かれた。だがそれでも―――――この16年間守ってきたものを焼かれること―――――



『――――――――――させてたまるかああああああああああああああああっっ!!!!!』



ルカが凛然と突っ込もうとした瞬間―――――





「リュウ!!それはさすがにだめぇ―――――――――――――――――っ!!!!」





離れたところで見ていたいろはの叫び声が響いた瞬間―――――ドラゴンの動きが止まった。

そしてその直後―――――



「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」



これまでとはどこか違う鳴き声を上げたかと思えば―――――急速反転していろはの体をつかみ、天空高く飛び去って行った。


「……え?」


思わず気の抜けた声を上げて倒れ込むルカ。

まるでそれまでの喧騒が嘘のように、広場は静まり返った。


「た……助かった……?」


リンがそれとなくつぶやいて、カイトがそれにうなずいた。

そんな中、グミだけが疑問の表情を浮かべていた。


「リュウトが……自分の意志で退いた?まさか……どうして……?」





いろはを抱えたまま町のはずれまで飛んできたドラゴン。

そしていろはを投げ出すと、小さくつぶやいた。


「……イ……ロハ……スマナ……」

「!?リュウト……あんた意識が……!?」


突如ドラゴンの姿は蒸気とともに掻き消え、疲弊した様子のリュウトが地面に倒れ伏した。

そしてまるで、寝言のようにつぶやいた。





「いろはちゃ……君は……僕が……守―――――」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

仔猫と竜とEXTEND!! Ⅳ~殲滅の音波竜・リュウト!!~

進撃のドラゴン!!
こんにちはTurndogです。

恐竜の子が音波の力で超大型竜人に変化してしまう!!なんということでしょう。
そして無駄にハイスペック。めーちゃんの「狩人拳(※)」がほぼ無意味同然の硬さってどうなん?
自分で作っておいてこれは勝てない気がしてきたwwwまたみんなパワーインフレすんのかなあ。それともディフェンスインフレ?
因みにここでドラゴンのことを『リュウト』と呼んでないのは暴走しているが故にこのドラゴンはリュウトじゃないからですね。

どうでもいいけど「仔猫と(ry」の構成を作ったころから『進撃の巨人』を読み始め、書きだしたころからアニメを見始めたので、若干ドラゴンの変身や変化解除、あとパワー的な意味でめーちゃんの直接攻撃に進撃ネタがあふれてますwww

次回、グミちゃんがこのバケモンの説明に回ります。つまりグミちゃんが主役!グミちゃん(`・ω・´)カッコヨス!!

※狩人拳とは?
めーちゃんの最強の拳技。∠( ゜Д゜)/←この体勢から「∠( ゜Д゜)/イェェェェェェェェェェェェェェェェェェェガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」の掛け声とともに敵に風穴を開ける大技。
♪獲物を屠る∠( ゜Д゜)/めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!!!

閲覧数:366

投稿日:2013/06/01 16:48:38

文字数:5,619文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    めーちゃん、さらなるパワーアップのために!
    大魔王を貫いた「龍拳!!」が必要ですな!
    そのためにはまず、大猿にもなる尻尾をつけて、一人称をオラにして、亀仙人、神様のもとで修行をしないとだめですが……
    もしくはドラゴンに育てられつつ、滅龍魔法を覚えるか……

    2013/06/12 19:23:13

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      待て待て待て待てwwwww
      そこまでやったらめーちゃん本物のバケモンになっちゃうかr(ぐしゃあ

      2013/06/12 20:45:05

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