素気(すげ)ない風が粛々と葉末(はずえ)にすがる雨露(あめつゆ)をさらう
街の明かりが彳(たたず)んだ夜の暗がりを静かに摘んでゆく
薄暮に霞む後影 行人(こうじん)織りなす街路の淡彩
古い市門に消えてゆくあなたの背(そびら)を目で追った
踊るに似たるその歩み隆(りゅう)ときまって甚だ可憐で
宵に急かされ駈け出した さざめく春から逃げるように
この世界に価値はないと馬鹿にして嘆いた声ですら
愛し子をあやすように世界が笑って恕(ゆる)すのだ
そんなことに気づかぬ儘、児戯にも等しい詩を書いた
近づくことを諦めて、側に来て欲しいと呼ぶように
嗚呼、あなたのように生きたなら、僕はこんな化物なんかにならずにいられたのでしょうか
悲涙を湛えぬその目はこの世界をどれほどに美しく映してるのでしょうか
求めた時はもう遅いといつも知るんだ
人生が二度あるならこんな詩なんて書かないさ
愛すべき厭う日々に、ほんのささやかなる復讐を
あの日あの時勧めた小説をあなたは読んだのかい?
この痛みが分かち合えたら……なんて思ってしまったんだ
嗚呼、あなたのようになれたなら、これほどにもこんな物語で泣くことはないだろうな
暗くて只々不快でつまらないと言えてしまうあなたの生き方がしたくて
そんな陳腐な感情こそに焦がれてたんだ
頻々うち煙る雨小径、悲しみが滴りてなお空ろ
化物にせめての枕花 遥けし星霜の後
嗚呼、あなたのように生きたなら、僕はこんな化物なんかにならずにいられたのでしょうか
悲涙を湛えぬその目はこの世界をどれほどに美しく映してるのでしょうか
ずっと世界を嫌ってたこの感情の正体が憧れだと今更気がついて
慰めなんかじゃなかったこの素晴らしき世界をこんなにも愛してると知ったから
傷つき見下しながらでも歩いてゆくんだ
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