「昔々 そのまた昔 とても気丈な姫がいました。
漆黒の御髪と瞳 つややかな赤い唇で
そんな彼女が しなやかで気高い彼女が
ただの護衛に 恋をしてしまいました」
「なんで、それが悪い事なの?」
細く震え 消えた台詞に
貴方は苦い微笑み浮かべ そっと頭をなでてくれた
ふいに伝わる彼の優しさ そして高鳴るそれは悲しさ
決して叶わぬこんな思いは 深い帳に囚われていて
穏やかな声が紡ぐ 悲しい恋の物語には
よくあるような ハッピーエンド
「幸せに なりましたとさ」と
そんな彼らの 行く末はどうでもいいけど
はたして本当に 幸せになれるのかな
淡い恋を秘める姫君 相手は歳の離れた護衛
髪も瞳も異なるけれど 抱く愛の温度は同じ
「さあ、もう寝ましょう」という彼に
「幸せになりたいな」と言った
額にキスの雨が一粒 望みを全て洗い流して
キライにならないで
ずっと私の 傍にいて
痛む胸に響く言ノ葉 どうかどうか 名前を呼んで
そんな幼いこの想いは きっと貴方には届かない
「おやすみなさいませ、姫様」と
貴方は扉を閉めて行った
飢渇<きかつ>した身に求めた毒は 喉の奥まで焼きついていて
どうか、甘くささやかないで
甘くささやいていて
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