「無題」
「俺のこと、殺してみろよ。」
見知らぬ誰かに、銃を投げつけられた。いきなりそんなこと言われても。
「なあ、殺してみろよ。」
「・・・あの~、どうすればいいですか?」
僕は、ここ一週間ほど、頭痛に悩まされている。たぶん、絶対、アイツのせいだと思う。銃を無理やり持たされて、それからずっとアイツはあとをつけてくる。ただの変態ストーカーだ。男が男にストーカーって・・・。警察に行っても、他人扱いで、僕が「ほら!あそこにいるでしょ?!」と言っても、見向きをしないで、「いないじゃないですか。」と終わらせる始末だ。「銃をみてください。」と言ってポケットをあさるが、なぜか警察に行くときに限って銃は消える。
今日は、大雨だった。バイトの帰り、僕はビニール傘を買った。雨だから、いつもより天気が暗くかんじた。外灯をみては、ほっとした。アイツは、一度僕の前に現れてから、それきり、はっきりとした姿を見せない。その不気味さが、僕を悩ませる原因のひとつだ。家に着いて、雨で濡れた靴下を脱ぎ捨て、濡れた服を脱ぎ捨て、キレイな服を被り、濡れた靴を乾かしていた。僕は、一人、ぽつんと部屋にいた。
開けっ放しのカーテンから見えるのは、窓ガラスを覆うように流れる雨だ。たまには、こういう景色もいいかもしれない。そう思った僕は、窓に近づいた。外をみると、視界は悪いが、確かに、アイツが家の外に立っていた。もう許せない。僕は、部屋を飛び出し、捕まえようとした。頭痛が僕を苦しめる。玄関を出ると、そこにアイツはいなかった。無駄に濡れた体を、タオルで拭こうと洗面所へ向かう。
「どーなってんだよ。」
鏡の前に、アイツが立っていた。アイツは、僕をみて不気味に笑いながら言う。
「もう、俺のこと殺す気になった?」
頭痛が、僕を苦しめる。誰も助けてくれない。僕は銃を握り締めた。
アイツの額に銃を突きつけた。アイツの喉を通る唾が憎い。ヤツは、笑った。
僕のまわりに、砕けた鏡と血が散乱していた。
鏡に映るのは全て、同じ顔をした僕だった。
血まみれのヤツはそんな僕をみて、嘲る。
「殺してみろ。」
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