第三章~探索の誤り~
1
翌日から王は兵を率いて、歌姫の延命の術を探し始めた。
勿論、幼馴染の女騎士もその兵のうちに含まれている。
おそらく、彼女の本意ではないだろう。
王のため、と参加はしたが、本当にこれが正しい選択だったか悩んでいる。
王や多くの兵が国を離れてしまって、本当に良かったのだろうか。
今なら何をしてもおかしくはない王に、従い、ついて来てしまって、本当に良かったのだろうか。
そんな彼女が思い悩でいたそんな時、
「陛下」
一人の年老いた騎士が、王に訪ねた。
「何だ」
王は馬を止め、用なら早く済ませろ、と老騎士を見た。
王が止まり、周りの兵士の馬も止まる。
ほとんどの視線が、老騎士に集まった。
「病を治す術を探すためだけに、これだけの兵が必要なのでしょうか。戦を起こすわけでも無いのですから」
「俺は彼女のためなら何でもするつもりだ。例えそれが、戦であろうとも」
「陛下、それはなりません…!」
「貴様、この俺に逆らうつもりか」
王が老騎士を睨み付け、二人の間には沈黙が流れる。
「そ…そうです老騎士殿、何を仰るのです!」
凍った沈黙を引き裂くようにして、一人の兵士が口を開いた。
王のご機嫌取りなのは、見ていて直ぐに分かった。
その兵士に、数人の兵士達が続く。
「王に逆らうなど…」
「貴方は王に忠誠を誓ったのではないのですか!?」
「どうか、お考えを改めて…」
そうして止めようとする兵士達を、老騎士は振り払う。
「黙れ若造共!主君が道を誤れば、それを正すのが部下の役目であろうが!!」
「………!」
彼の言葉は、苦悩する女騎士の心に、深く突き刺さった。
それが事実で、自分がやるべき本当の事であったから。
それに今まで気づけなかった、自分が悔しい。
何て馬鹿だったのだろう。
しかしそれは王にとって、余計なことのようだった。
彼の表情は冷たくなっていく。
「殺れ」
彼の一言で、兵士達の槍が、老騎士を貫く。
槍が体から抜かれると、彼は落馬し、事切れた。
酷い、何て事を…!
言葉にならないその言葉が、自分の中で谺する。
自分が思っていた以上に、彼は変わってしまっていた。
「…陛下」
蒼い色の睫を伏せて、彼女は王の顔を見、そして言葉を失った。
その時の彼の顔は、今までに見たことが無いほどに、冷酷なものだったからだ。
そうやって立ち尽くしていたら、急に王が此方を振り向いた。
あまりにも急に振り向くものだから、彼女は驚いてあたふたしてしまう。
いつもの調子ならば、王も彼女をからかうのだが、そのときは違った。
慌てているのを気にも留めずに、淡々と言葉を紡ぐ。
「俺はお前を信じてる。お前は俺を裏切らない、と」
それだけ言うと、彼はまた馬を進めた。
それと同時に、周りの兵士達も馬を進め始める。
――俺はお前を信じてる。
その言葉が重く伸し掛かる。
王を止めなければならない。けれど、王の期待を破ることなど出来ない。
どうすれば良いのか、本当に分からなくなってしまった。
【小説】或る詩謡い人形の記録
大分長い間、投稿してませんでしたね;;
第三章突入しちゃいました。はい。
王様段々大変なことになってます。
私の妄想ですが…
前のバージョンで、2ページ目。
相変わらず文才無くてすみません…orz
アドバイス等あれば、お願いいたします。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想