ここは、とある城下町。一般的な城下町とはなんらかわらず、王様が街を治め、平和な毎日が過ぎていく。城は民衆に解放され、道場や、食堂、図書館、大浴場などが民衆に利用されていた。
その城は代々続く王に引き継がれ、幾度かの修繕がなされていたものの、基礎はその城が建設された当時のままであり、城の備品も歴史あるものが多かった。
そして、古くから残る城には怪談めいた話がついて回るように、その城についても例に漏れない怪談話が城内、城下でささやかれていた。王様が鷹揚な性格だったため、それらような話はとくに規制されることもなく話の種として広がったのである。
その怪談1つに、こんな話があった。
「城の図書館の奥の所蔵庫には、呪われた本があるらしい。その物語を読んだ人間は夢にとらわれて、目をさますことができないんだと・・・」
1番目アリス
メイコはとある城下町の娘。父親は城に使える騎士団の隊長。城の道場の師範も務める
母親はメイコが幼いときに弟を連れて離婚。
メイコの剣術の才能は城下でも随一。
父親に連れられていった城の道場で、見習い兵との戯れで剣を振るってみたのがきっかけである。
それからメイコはめきめきと力をつけ、いまや男性でも彼女に敵うものはいなかった。
ある日のメイコと兵士の雑談
「メイコ、こんな話しってるか?この城の図書館の奥の所蔵庫には、呪われた本があるらしい。その物語を読んだ人間は夢にとらわれて、目をさますことができないんだと・・・」
「ふっ、あははははは!ばかみたい!よくある怪談じゃないの!」
「いやいやいや。ほんとだって。なんたって俺の従兄弟の叔父の娘の友達のばあさんが
ある日突然眠ったまま目を覚まさなくなったんだ。で、そいつが言うにはばあさんはそうなる一週間前に図書館から古びた本を借りて・・・いてっ」
「あんたねー、そんなことばっかいっるからいつまでたっても私に勝てないのよ」
「なっ、関係ないだろう」
「あるわね。そんなチャラついた気分で剣ふるってるやつなんか、私の敵じゃないわ。秒殺よ秒殺。ま、確かにここの図書館古いし、そんな話もあるかもねー。ハイ、休憩終了!もう一戦いくよ」
「オイオイ、勘弁してくれよ・・・」
「くっそ・・・、もう1回だ!!」
「おほほほほほ、さっきはもう勘弁してくれとかいってたくせにー?でも、今日はここまで」
「いつもより早くないか?ははーん、さては俺におそれをなして・・」
「2合目で剣たたき落とされた奴がなにいってんの。今日は図書館に寄るのよ。しまっちゃうでしょうが」
「メイコが本だと!!まずい槍が降る。俺も早く帰らな・・・ぐあっ」
「今度は真剣でやろうかー?父さんに頼まれてんのよ。それに私だって本くらい読むわよ・・・ちょっとは」
「例のあれ、探してみたらどうだ」
「はいはい、向いたらねー」
図書館。父親に頼まれた本を借り終える。
『結構はやく済んだなー。もうちょっと、道場にいてもよかったかも』
先ほどはああいったが、じつはそれほど本は嫌いではない。貸し出し録には意外とメイコの名が記載されていたりもするのだ。
『ついでだし、私もなんか借りてこ。あっちの奥とかノーチェックだったな』
書庫奥。電灯が切れており、薄暗い。なにげなく一冊の本を手にとる。
タイトルはー
「ア・・・うーん・・・なにこれ。時がにじんでて全然読めない」
中を見てみても、汚れがひどかったり、にじんでいたりで内容を把握することはできなかった
ページを繰りながらメイコは文句を言う
「なにこれー!!管理怠慢だわ。こんなんじゃダメね。どんな話なんだろ。・・・・・・・・あ、でもこの単語だけなんとか読める。ア・・・リス?登場人物の名前かな?どっちにせよダメね」
「閉館の時間です。館内の方々、外にでてください」
「やっば。」
本を元の場所に戻して、出口へ急ぐメイコ。
メイコの父は戦でたてた手柄の褒美として宝剣を王様から賜っていた。一般に宝剣は戦いに使うためのものではなく、飾りとして使うためのものだが、それは違った。すらりと伸びた刃は鋭く、切れ味は兵士に支給されるようなものとは比べものにならない。束の装飾もシンプルな美しさにとどめられていた。ひとつだけ目立つ特徴といえば、つかに紅い宝石が添えられていたことである。
メイコはその剣に訳もなく魅せられていた。
戯れにメイコと父の間に交わされた約束。「もし私より強くなったら、この剣をやろう」
だが、ある時父親が急死する。人食い熊がでるという山に、その駆除に出かけた際に襲われた部下をかばって死んだのである。
メイコの元には例の剣が部下の謝罪と共に届けられた。無惨な姿になった父の体もメイコはみてしまう。メイコは出て行った母の兄夫婦の元に身をよせることになった。兄夫婦はメイコが剣術を行うことをひどく嫌う。
相変わらず城の道場に入り浸るメイコだがだんだんとその性格は変わっていった。
父親が存命の頃は、乱暴なところも多かったが、さっぱりとした誠実な性格で、皆に慕われていた。しかし、父親がなくなり、叔父達の嫌みにさらされるにつけ、だんだんと口数も減りその乱暴さばかりが目立つようになってしまった。友人だった見習い兵士達も、メイコの父親を死なせてしまったという引け目からか何もいえなくなってしまう。
(場面イメージ:父親の喪があけ、道場に入るメイコ。メイコの表情は浮かない。メイコが道場に足を踏み入れると、にぎやかだった道場内が一気に静まりまえる。「・・・誰か。相手して」メイコの呼びかけに一人の兵士が応えるが、剣を振るうメイコの様子はあきらかに以前と違う。あっさりとやられてしまう兵士。倒れた兵士にしばらく剣を突きつけ、冷たい目で見下ろすメイコ。「なにが父さんの部下よ」そう吐き捨てるとメイコは道場を後にした。)
(場面イメージ:「・・・小麦を1キロ。あと、リンゴを2つと、ポテトを5つ。」「メイちゃん・・・、大丈夫かい?」「いいの。・・・ほっといて」そういってにらみつけると、店の主人は萎縮したように黙り込む。「どいつもこいつも・・・。顔をあわせりゃ『大丈夫?』って!何もしらないくせに!)
さらに、極度に動物を嫌うようになる。殺したりはしないものの、動物が彼女に近寄ると暴力をふるうことが出てきた。
(場面イメージ:城下の公演に座り込むメイコ。その足下に猫がすりよってくる。「・・・なによ」メイコはよけようとするが、猫は放れようとしない。「来ないでったら!!」猫をけりつける。逃げていく猫。「・・っ。父さん・・・」)
ある日、叔父夫婦から、見合いの話を持ちかけられる。メイコは拒絶するが、二人は聞く耳をもたない。部屋にこもるメイコ。例の宝剣を抱いてベッドに。
「なによ・・・。なんなのよ・・・。ほっといてよ・・・。こんなとこ、もういや・・・」
そのままメイコは眠りに落ちる。
聞こえてくる声
「そんなに、その世界が嫌?なら僕の世界においでよ。ここでは何をしてもいいんだよ?君の好きな世界にするといい。」
目の前に扉。メイコは剣を抱いたまま、声に誘われるままに扉をくぐる。
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