ぶすり。
「ぎゃっ!」
カイトは制服を突き抜けて素肌の背中一点に激痛を感じて
自分でも驚く程に叫んでしまった。
休み時間にカイトの叫びで一瞬止んだ喧騒は
再びざわめきを取り戻す。
カイトは椅子に座ったまま何事かと後を振り向くと
シャープペンシルを持ち無愛想に立つルカがそこにいた。
「お、お前……、何してくれるんじゃ!?痛いじゃないか!」
今握ってるシャープペンシルを唐突に背中に突き刺したのは
間違いなく彼女なのだろうが、ルカは無表情に話を続けた。
「授業終わったら―――」
「へ?」
「あんたの家に行く事になったから、よろしく」
「なんじゃそら!? お前、そんな突然、俺の断りも無くだな―――」
「メイコも一緒だから」
ニヤリとした顔でルカが言うと
キラリと歯を輝かす笑顔でカイトは応えた。
「あはは、我が家はいつでもウエルカムさっ!」
「なんじゃそら……」
ルカはこの分かりやすい
男の顔をじとーっと呆れた目で見るのであった。
Desk Top MyMaster!
―EP6―前編【憧れのお姫さま】
「なんか突然ゴメンねカイト君」
メイコが申し訳無さそうな表情を浮かべて言う。
「いえいえ!ぜんぜんっす!」
カイトは手の平をを左右に振った。
学校の帰り道、カイト、ルカ、メイコは一緒に
歩きながらカイトの自宅に向かっていた。
ルカの思いつきで突然カイトの家に行こうと
メイコとグミを誘ったのだ。
「グミちん、お茶のお稽古があるから行けないってさ」
ルカはつまらなさそうに言うとメイコがなだめる。
「まあまあ、グミちゃんも残念そうにしてたじゃない」
「ちえ~っ。せっかくコイツを自慢したかったのに~……」
ルカは手持ちカバンを開くとIAがピョコリと顔を出した。
「わっ!お前!何を持って来てるんだ!?」
カイトが驚くのを見るとIAはにっこり笑い、お辞儀をした。
「はじめまして、カイト様、メイコ様。
私はボーカルキャラクターロイドV3型、IAです。
マスターからいつも皆さんの事を聞いていて
いつかお会いしたいと思っていましたので
ご挨拶できて光栄です」
流暢な言葉使いにカイトメイコは「お~~っ!」と
声を合わせて感心した。
「ふふふ、私のPC、ノートだからこのコを持ち歩き出来るのよ」
ちょっと得意げな表情でルカは言う。
「わ~~っ、なんかスゴイね!自然な喋り。
ウチの舌足らずな双子達もコレくらい喋れたら……」
メイコは興味津々だ。
「確かに、発声がはっきりしてるな―――」
カイトはミクの発声と比べIAの声が人間の話し方に
とても近しい事に素直に感心した。
「なんだか照れちゃいますね。お二人にそう褒めて頂けると
とても光栄に思います」
IAが小首をかしげ嬉しそうに言うと、すました顔で
得意げにルカは言う。
「ま、私のトレーニング(調教)のせいもあるかも」
「はい。マスターのトレーニングの賜物です」
ハキハキとIAが答えた。
「・・・・・・ふ~~ん。随分と従順なんだな。お前のボーキャラ」
IAをジロジロと見つめながらカイトが言うと
ルカは鼻をふふんと鳴らした。
「そうね、このコは素直でとっても良いコよ。あんたんちのコは
ずいぶんと生意気そうだけど?」
「どわっ!お前、なんつー失礼な!って、なんで知ってるんだよ!?」
みるみると顔が赤くなるカイト。、
「あら、ストリーミング放送で観てたの、あんたとあのコのライブ」
「うん、私も観ちゃった☆」
ニコニコしながらメイコも会話に入ってきた。
「どえ~~っ!」
赤面したままずっこけるカイトを見て、ルカはくすりと笑う。
「カイト君とルカは仲が良いんだね」
カイトとルカのやり取りを見てメイコが笑いながら言うと
カイトとルカは声を合わせ、手の平をヒラヒラさせて否定する。
「い~や、ぜんぜん!」
それを見てメイコは更に笑いながら言うのだ。
「ほらね!」
住宅街のごく普通の一般的な一軒家がカイトの家だ。
三人は玄関に入り直ぐ前にある階段を昇る。
「わ~!なんか男のコの部屋ってちょっとドキドキするね!」
メイコがワクワクした表情で言うとすかさずルカがつまらなさそうな
顔で首を振る。
「コイツの部屋なんか、そんなに面白いモノなんか無いよ」
「・・・・・・お前、ほんと失礼なヤツだな・・・・・・」
2階のカイトの部屋のドアノブに手をかけた瞬間カイトは
ピタリと止まり、心の中で確認した。
『ミクにはPCでメールを送って友達が来るのを事前に知らせて
置いたし、変な事はしてないハズ・・・・・・だよな』
「早く開けてよ」とルカに催促され、カイトはドアを開けた。
「お、おにいちゃん……、お帰りなさい」
机の上のモニター後からモジモジと、顔を赤らめてミクが現れた。
少し大きめの白いYシャツ姿で、下にはスカートも穿いてない。
顔面蒼白するカイト。
これは明らかに、いつものミクの悪フザケだ。
ルカとメイコはそれを見てドン引き。
「・・・・・・あんた、一流のヘンタイね。ボーキャラにこんな事させて」
「おにいちゃんって・・・・・・言わせてるの?普段から・・・・・・」
「おにいちゃんを責めないで!」
Yシャツの裾をきゅっと手で掴み、顔を赤らめてミクは言う。
「ち、ちが、あわわわっ」
ミクの悪フザケなのを説明しようにも、慌ててしまい
それが更にカイトを不審者のように思わせる。
その様子を見たミクは我慢できず腹を抱えて
ケタケタと笑い出した。
あっけにとられるルカとメイコは顔を見合わせて
それがミクのイタズラであることに気づく。
「―――冗談で良かった……。あんたがそういう趣味だったら
ガチで引くところだわ」
「ま、まあ、人には色んな趣味があるからね……」
ルカとメイコは胸を撫で下ろしながら言った。
「はい!マスターの最近の趣味はミニスカ☆ナースです!」
屈託の無い顔でミクがハキハキと言うと
カイトはベットに転がっていた枕で顔を隠した。
☆☆☆――――
「はじめまして、ボーキャラV2の初音ミクです。
いや~、すみません。ついつい出来心でイタズラしてしまいました」
「お~~~っ。なんか個性的だね、このコ」
メイコは関心してミクを見ていた。
ミクをはじめとしたボーキャラは工場で量産されて
店頭に並び、ユーザーが選んで買うのだが、初期設定は
ほぼ一緒で、ユーザーが好みの性格にエディットすることが出来る。
たまに神マスターがいて、表示されている以上の性能を設定操作で
発揮する場合もあるが、カイトの場合、相当なPCオンチで
かなり設定をイジり回してしまい、結果、このような
個性的な性格のミクが完成したのである。
「あ、そうだった。ほれ、君も挨拶しようか」
ルカはカバンからノートPCとIAを抱きかかえ
机の上にいたミクの隣にIAを並べた。
「は・は・は・は、はじめ、まして……。わた、わたしは
IAと申します……」
先程の流暢な挨拶は何処へ、IAの声は急にしどろもどろになる。
「なに、どしたの?IA?」
ルカはこんなIAを初めて見る。カバンに入れていた時に
どこかぶつけて故障させてしまったのかと心配した。
「い、いえ!大丈夫ですマスター!」
慌てるIA。ルカはいよいよ心配する。
「私はミクだよ。ヨロシクねIAちゃん」
ミクが右手を差し出すとIAは服で手を慌てて拭き出して
ミクの右手を両手でブルンブルンと大振りで握手した。
「か、感激ですっ!ミクさんっ!いえ、ミク様ぁ!
こうしてアナタにお会いできるなんて!」
目を爛々と輝かせIAはミクの手を離さない。
「あはは……、そ、そう?私も会えて嬉しい―――かな?」
ミクはこのIAのテンションに困り気味なようで
カイトをちらりと見たのだが、枕でまだ顔を隠したままだ。
「ミク様ぁ!私、私……、ミク様のだぁ~いファンなんですっ!
特にカイトさんとライブ……。んっもう~最高ですっ!
も~、ミクさんのモジュールや仕草が可愛くって、カワイくて!
第二回目のライブの時!USBケーブルに足を引っ掛けて
転んじゃったミク様ぁぁ……。ああ!忘れられませんっ!
あの時のミク様のおパンツが画面いっぱいに映って―――
あー、思い出しただけで鼻血、いや鼻オイルが……」
IAの鼻から血のようなモノが流れた。
それをポケットから取り出したハンカチで押さえる。
「あははは……。そりゃ……、どーも……」
第二回目のライブ中継。ミクは調子に乗って
ジャンプターンをしたときに背中のケーブルを足に引っ掛けてしまい
転んで尻餅をついたのだがその際、ミクのパンツが画面いっぱいに
映ってしまい、大恥をかいてしまったのである。
「私、ミクお姉さまにお願いがあるんですが……いいですか?」
急に真面目な顔になりIAはミクの目を見つめた。
「え?!な、なに……?」
「ミクお姉さまのコス……。ちょっと、見てみたいな~~なんて!」
「え……、まあ……いいけど―――」
「おっしゃー!では早速っと……」
ミクの手を引きIAはモニターの裏側、ミクの部屋に行くのであった。
「―――、まあ、仲良くやっていけそうね。あの二人」
「あんなIA、初めてだわ……。ところでカイト。
あんた何時まで枕を被ってるつもり?」
カイトはまだ枕で顔を隠している。
「もー、いいじゃない!ミニスカ☆ナースのコスプレくらい!
今度、私がやってやんよ!」
半分呆れ顔、半分怒り顔でルカが言うと
カイトは枕を床に落として思わず赤らむ顔で彼女を見つめた。
「……、ふん!冗談よ」
「あはは!私、ルカちゃんのナースコスプレみた~い」
メイコは無邪気に言うのであった。
「こ、これがミクお姉さまデフォルト・モジュール……。萌え萌えです!」
目を輝かせてIAはミクの衣装を見ていた。
「萌え萌えって……、まあ、そうね。これが一番しっくりくるかな」
「あ~~、素敵な肌触り……。くんか、くんか」
IAはミクのコスを引き寄せて鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
「ぎゃー!匂いを嗅ぐな~~~!!ド変態!!」
ミクはIAから衣装を取り上げた。
「あ~ん、お姉さまったら~~」
「な、なんなんだあんたは!!」
二人のドタバタをよそにカイトとルカ、メイコはやっと
本日の本題について話し始めていた。
「まあ、それでさ、みんなで折角だから一緒にボーキャラ達に
歌わせようかなんて考えたワケなのよ」
「絶対たのしいよ!一緒にやろうよ!カイト君」
「まあ、そうだね……、考えとくよ」
あまり気乗りしてないカイトにルカは少しイラついた。
「ちょっと!何か不満でもあんの?」
「い、いや。そんなんじゃないんだけど……」
カイトはミクのいるモニターに視線を送った。
いつも創作活動の際はカイトとミクは二人で考えて
行動をするから、自分ひとりで決めたらミクがきっと
怒ってしまうだろうなと考えていたのだ。
「ほらほら、ルカ!あんまり強引に誘っちゃダメ!
カイト君にはカイト君なりの考えがあるんだから」
「……カイトの癖に―――」
ルカは口を尖らせてカイトを睨んだ。
「で、でも前向きに考えるよ」
「ほんと!?それなら良かった」
「……でさ、メイコさん―――」
「メイコでいいよ」
「ん、じ、じゃぁ……メイコ。作曲の事で聞きたい事があるんだ」
「なになに?いいよ、私に分かることなら。
あーそうだ!今度、うちに来る?シンセもあるし双子もいるし―――
コーラご馳走するよ!」
「う、うん!是非……」
二人のやり取りを黙って聞いてるルカ。
なんだか置いてけぼりにされたかのようだった。
でもそんな雰囲気を悟られないように
ルカはいつものポーカーフェイスで二人の会話を
自然に聞いてるフリをしていた。
【後編へつづく】
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I dont think i would be able to hide anymore
Falling in love with, just you
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木のひこ
今から始まる
今年のマジカル
ミライのステージ
ワクワクみんなで
楽しく歌おう
ララララララララ
みんなぁ
お弁当
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時給310円
■Vocal : 初音ミク, 鏡音リン
■Music : ユラメ
■Guitar:Sayu
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嫌なこと隠して
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晒して 見せてる
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■出だし
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■1A
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■1B
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