手紙 CRAWL
―ある日、手紙が届いた。差出人は、昔別れたまま忘れかけていた懐かしい親友からだった。


久しぶりだね。君が手紙をくれなかったのも、僕らのせいならそれでもういいんだ。
君の願いは叶って、代わりに僕は全てを失くした。

君と似た人を見かけたとき、思い出の詰まった場所に足を向けたとき。
たった一粒の思い出を見つけるたび、心が騒いだ。

今度君が僕のところへと戻ってきたら、僕の秘密をあげるよ。暗くなるだろうけど。

覚えてる?君と通りを抜ける風に触れた時、夕方が落下した時のこと。
あのときの思いは、君と別れた後に捨ててしまったから、枯れてしまったよ。
でも、君に対する想いはまだ、枯れてはいないんだ。
だから、君の髪を揺らすように祈って、風に歌うよ。

さよなら。 さようなら。 また、だね。 それじゃ、ね。 いつか、ね。
ありがとう、もういかなくちゃ。

そんなやり取りをしていたときは聞けなかったけど、君なりの答えは見えた?
それはまだ?  まー、そうだよね。じゃあ、夕方は拾った?

あの時僕は、頼りない背中に背中に手紙を書こう。震える字に気付いてくれるかな?
そう、思ったんだ。

ごめんね。こんなに遅くなって。書きたいことを整理していたら、遅くなってしまったんだ。もし良かったら返事が欲しいな。
いつでも帰ってきてね。


そう書かれた手紙に晴れた終わりの日、涙で水をあげた。
新しい生活に行き詰っていたこともあって、1度親友のところに帰ってやり直そうと決めた。何もかも失ったとしても、歩く足は残されている。それが、はじまり。
落ちて種となった自分の思いを拾うために、君のまつげをぬらすように雨をこぼすために、
今まで居た場所に鍵をかけて、僕は歩き出した。

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  • 非営利目的に限ります

手紙 CRAWL

古川PのCRAWLです。

閲覧数:201

投稿日:2010/07/11 22:35:21

文字数:745文字

カテゴリ:小説

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  • あめ。

    あめ。

    ご意見・ご感想

    お、おひさしぶりです。
    パソコンさんが直ったので来ました。
    なんだか不思議に心が温かくなりました。
    文鳥さんはわたしの心の栄養源ですなんて言っちゃったりして^^
    だらだらとすみませんでした。
    それでは。

    2011/08/07 13:05:24

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