約束よ、と彼女は呟いた
泣きながら僕は首を振った
困ったように微笑んで
それでも彼女は言葉を紡いだ

もし灰のように崩れてしまうのなら
最後まで見届けて下さい
もし塩の柱になるのならば
あの日の海へ帰して下さい
どんな最期でも貴方の手で
私という存在を葬って下さい

眩しすぎる昼下がり
彼女はそういって笑う
たおやかに、穏やかに
それでも僕は生きていてと泣いた

もし醜く腐りゆくのなら
桜の下へ埋めて下さい
もし花のように散り逝くなら
あの日の空へ放して下さい
どんな最期でも貴方の手で
私という存在を葬って下さい

優しくも残酷に
全てを置いていくのなら
せめてその心を下さい
そう呟いた僕に
彼女は驚いて
はらはらと涙零した

変わらない昼下がり
そっと指を絡めて
いつか訪れる結末に
怯えながら震えながら

僕ら最期のキスをした

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

昼下がりの約束

約束と願い。
ただ、一つだけ欲することを許してくれるなら、あなたの心を下さい。

間近に迫る命の終わり。交わされた、誰かと誰かの約束。

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投稿日:2010/06/09 22:53:09

文字数:369文字

カテゴリ:その他

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