箱の中で暮らすのに疲れた。僕は実際に箱に住んでいるわけじゃあない。ごく平凡に、両親が暮らしてきた家に生まれ、屋根のある建物に暮らしている。間違っても、橋げたの下の粗末な家で、ダンボールを使っているわけではない。
箱はとてもとても大きい。それはとても大きい。それはとても大きいようで、でも改めて大きいか確かめてみると、小さい。
箱は 僕が知っている多面体の中で最も角が多いと思う。球に近い、もしくは球と言っても多くの賛同が得られる多面体だろう。
僕の言っている箱は見えない。影も形も見えない。でも確かに存在しているように思えるし、実際、機能しているものなのだ。僕が近づくと、数歩先まで箱は広がっていく。それでも尚、多面体を維持しようとしている。
僕の街には箱がかぶせられている。街は僕の箱だけじゃなくて、他の人の箱もかぶせられている。――無数の、住んでいる人だけの数の箱が、街にかぶせられている。そのすべてを知る術を、僕は持たない。けれど確かに存在する。
僕らはその箱の中で記録をとる。写真によって、自分がかぶせている箱は認識しやすくなった。箱の端で写真をとり、家で地図にその写真を配置する。そうして多面体は浮かび上がってくる。
写真は四角い形で世界を切り取ってくる。その中の世界は、とても楽しそうに見えた。
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