大人は無責任に「夢を持て」と言う。
15歳になった途端に、大人は将来を突きつけてくる。
まだまだ人生始まったばかりでこの先の人生を決めろなんて、無理ってもんだろ。
小学生の時、親はメジャーリーガーを夢見て少年野球をあてがうも、
俺はサッカーの方が好きだった。
バットを体の一部として受け入れる事が出来ず、少年野球も退団。
そのまま中学へ進学。
一緒にサッカーで遊んでいた友達は思い思いの部活で目標を決め、
俺はと言えば、
現実を思い知った野球部なんて入部する気もなく
いろんなものを見失った。
「人生まだまだこれから」なんてテレビのセリフもむなしい。
自分のいるべき場所、自分を必要としてくれる場所を探して右往左往。
分かってくれない大人に反発する勇気もなく、
自分の部屋だけが、ネットの世界だけが、世界の全てになる。
ホーラーゲームをやりながら、殺していくのはゾンビではなく自分自身。
「何もかもがちっぽけでやりきれない」
膝を抱えてうずくまっていた頃に彼らと出会った。
ネットの中で出会った彼らは、伸びやかで気持ちの良い歌を歌っていた。
ネットの中で出会った彼らは、熱い夢を語っていた。
ネットの中で出会った彼らは、どんな事にも詳しかった。
俺は気が付いた。
ちっぽけだったのは俺が見ていた世界。
小さな枠に囚(とら)われていたのは俺の方だった。
俺は自転車にありったけのお金と服を詰め込んで、
旅に出る。
見つかるかどうかも分からない。
無為な時間を過ごすだけかもしれない。
それでも何かを見つけられる。
大人の言う「夢」や「将来」を。
進路を求める教師から、期待を押し付ける両親から、
何もできない答えられない自分から、
逃げていると認める事すらできなかった俺にさようならを言おう。
俺は今夜、旅に出る。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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(平成26年度版)15の夜

これはマスター氏の朗読枠用の為に作った原稿です。

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投稿日:2014/11/03 21:19:19

文字数:756文字

カテゴリ:小説

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