鏡を見てギョッとする事がある。凄い寝癖が付いてたり、顔に畳の痕が付いてたり、だけど、だけど…これは無い!鳴兎に噛み付かれた首筋に思いっ切り痕が残ってる。『蚊に刺された』とか誤魔化すには無理があるかも…って位。これって、キスマークと言うかもう歯形の域だよね…一体どう言うつもりで…。
――コンコンコン。
いきなりノックの音が聞こえて飛び上がりそうになった。え?!誰?!ど、どうしよう?!
「浬音?」
「ひ…密さん?!」
どうしよう?!どうしよう?!密さんにはこの痕見られたくないし…でも帰れとも言えないし…!
「あの…どうぞ…。」
苦し紛れに電気を消してみたけど、まともに顔が見れない…鳴兎のバカ鳴兎のバカ鳴兎のバカ…!
「浬音、あの…。」
「あ、あの!ごめんなさい!」
「え…?」
「その…さっきは話も聞かないで逃げちゃって…密さんは悪気があった訳じゃ
ないのに…私…。」
「いや…黙ってた俺のせいだ。ちゃんとお前には話して置くべきだったのに…。
すまない…。」
「もう良いですって、私も反省しますから…ね?」
密さんは随分申し訳無さそうだった。何かしょげてる大型犬みたいでちょっと可愛いかも…。ついつい頭に手を伸ばして撫でてしまう。俯いたまま顔を上げなくて、何だか泣いてる様な気がして、恐る恐る顔を覗き込むと、密さんの手がそっと頬に触れた。
「正直焦った。」
「え?」
「あんな顔させて…もう、どうしようかと思った。絶対嫌われたと思ったし…。」
「そんな事…!」
「ん?」
「密さんを嫌いになんかなりません!」
言葉が途切れて、目が合って、顔が近付いた。
「むぐっ…?!」
どうしてか自分でも判らないけど、思わず手で口を押さえてしまった。
「あ…いや…その…び、びっくりして…。」
「ごめん、ちょっと調子乗った。」
フォローするにも弁解するにも何て言って良いか判らず、密さんは部屋に戻ってしまった。何か物凄い自己嫌悪に陥ってしまう…私のバカ~~!!!
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