身体が鉛の様に重い…頭が殴られたみたいに痛い…喉がカラカラに渇いてる…。
「…み…ず…。」
「ん…?水?」
「んく…んっ…はぁ…はぁ…。」
唇に触れる柔らかい感触と、喉を伝う水の冷たさに、ぼんやりと意識が引き戻される。ゆっくりと目を開けると額に冷たいタオルが置かれた。
「…気が付いた…?」
「鳴兎…。あ…私…っ!」
ベッドから起き上がると途端に眩暈が襲って上体がぐらりと傾いた。
「急に起き上がるな…ほら、横になって…。」
鳴兎は私をベッドに戻すと落ちたタオルを額に乗せた。光加減かな?顔色が酷く悪い様に見えて、そっと手を伸ばした。
「ごめん…。」
「何で謝るの?」
「俺のせいだから…俺が…あんな事しなけりゃ浬音がこんな目に遭う事も無かった
のに…。」
「鳴兎のせいじゃ…!」
サラサラした金色の髪をそっと撫でる。気のせいじゃなくて鳴兎は真っ青だった。随分心配掛けたんだろうか、今にも泣き出しそうな顔を俯かせていた。と、急にドアの開く音がした。
「浬音さんから離れて下さい。茅ヶ崎さん。」
「ハレル…さん?」
「浬音さんがこんな目に遭ったのも、元を糾せば茅ヶ崎さんの軽率な行動が原因です。
同じ様な事が繰り返されない為にも今直ぐ浬音さんから離れて下さい。浬音さんも、
今後止むを得ない時以外近寄らない方が良い。」
ハレルさんの言葉が容赦無く突き刺さった。鳴兎は押し黙ったまま私の手をそっと布団の中に戻すと消え入りそうに笑って立ち上がった。
「落ち着いたようですから、私はこれで失礼します。」
「鳴兎…!」
言う事を聞かない身体を無理矢理起こしたけど、足がもつれてまともに立つ事すら出来なかった。
「浬音さん…?!」
「…もうすぐ密さんが戻ります。身代わりウサギはお役御免ですよ。」
「鳴…!」
「Je ne veux pas vous blesser…」
「え…?」
鳴兎はまるで呪いの様な言葉を残して、振り向かずに出て行った。
DollsGame-85.花梨-
Le seul amour
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