切り開いてその胸
引き剥がしてその皮
そしたらきみを知れる気がして
愛の鋭利さをもって
柔らかに強かにその肌を滑れば
滲み出すその赤い嘘
掻き分けて心の在り処探す
あったはずの手のぬくみも
白く透き通るその顔も
もう僕に向けられることはない
そのわけを知りたくて見つけた
ああ これがきみの心壊したんだね?
切り開いてその胸
引き剥がしてその皮
そしたらきみを知れる気がしたんだ
でもおかしいな
手はぬるつくばかりで
視界は滲むばかりで
きみだった肉を漁る
いつかは掠れてくるだろう
前髪をいじるその癖
夜遅くのただいま
こびりついた黒い痕
飛び散った思い出も
鼻をつんざく生臭さも
全部愛しかったきみの一部
切り開いてその胸
引き剥がしてその皮
そしたらきみを知れる気がしたのに
僕の手できみは
汚れてくばかりで
きみだった肉が腐る
左心室の血を取って
刺さった針を採取して
縫い付けてはまた切開して
ぼくにできることは
傷だらけのきみの
傷を知ることなのに
なんでなんでなんでどうして
傷を増やしてしまう
切り開いてその胸
引き剥がしてその皮
そしたらきみを知れる気がしたんだ
でもおかしいな
手はぬるつくばかりで
視界は滲むばかりで
きみだった肉を漁る
心は彼方へ在ると知る
帰らないきみ
きみの脱け殻抱き締め叫ぶ
わがままも、
ぬくもりも、
いとしさも、
さびしさも、
おもいでも、
抱き締めて熱を帯びたら
そのときにまた会おう
愛しきみよ
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