アイ・ストーリー
第一話「青色の絆」 続きの続き
放課後。今日は秋彦先輩に悪い事しちゃったなぁ。
さっき謝りに行ったけど、秋彦先輩は既に帰ってしまった後だった。
「明日……うん、明日ちゃんと謝ろう!」
今日の私は何だか自分でもおかしいと思う。何でだろう?
「ん~……何か天気悪いなぁ。雨でも降るのかな……。」
原因は多分……いや、多分じゃない。原因はKAITOだ。
そうだ、そもそもKAITOが私に隠し事なんてするからいけないんだ。
帰ったら今度こそ何処に出掛けているのか、吐かせてやる!
KAITO……覚悟しなさいよ……フフフ……。
数分後……。
「……何で私、こんな所に居るんだろう……。」
私はよく行くスーパーの中に居た。それもアイス売り場の前だ。
アイスはKAITOの大好物で、暇とお小遣いがあれば
いつもアイスを食べてる。
アイスを食べるKAITOを見てると、私まで何故か幸せな気持ちになれる。
……じゃなくて。私が言いたい事は、つまり……そう!
『アイスを囮にしてKAITOに隠し事を白状させよう!』作戦だっ!
決して、アイスが特売だったから「いっぱい買って帰ったら
KAITOきっと喜ぶだろうなぁ~」……なんて思ってないヨ!!
「あ……雪?」
買い物を終えて外に出ると、雪が降っていた。
しかもちょっと吹雪いてる。
「うわぁ、ついてないなぁ……。傘持って来なかったよ。」
ぼやいていてもしょうがない。私は雪の中を歩き出した。
「雪か……。そういえば、KAITOが家に来た日も雪だったな。」
あの日も私は一人だった。そんな私の前に現れたKAITO。
空のような、海のような……青い髪と瞳が綺麗なKAITO。
時々意地悪な事を言うけど、いつも私を優しく見守ってくれるKAITO。
私はKAITOに出逢えて良かった。
お父さんとお母さんが居なくても寂しくないと
少しだけ、思えるようになった。
……いつもKAITOが私の隣に居てくれたから。
私は……KAITOが好き。大好き。
青い髪も、瞳も、優しい歌声も……。
……でも、KAITOは私に何か隠している。
誰にだって、隠し事の一つや二つはある。
それは分かってる……けど……。
『悲しい』
何だろう、何かすごく……『悲しい』。
具体的な理由は分からない。でも、何だか、胸が『苦しい』。
お父さんとお母さんに会えない時の『寂しい』とは少し……違う。
そう思うと、私の頬に涙が伝った。嫌だな、私……。
歩きながら泣くなんて……。誰かに見られたらどうするの?
涙で目の前が滲んで、よく見えない。早く涙を拭かなきゃ……。
私は涙を拭こうとハンカチを取り出そうとした、その時。
「きゃあっ!?」
ドスン!という音と共に、私の目の前は暗くなった。どうやら雪で
足が滑って後ろに転んだらしい。
でも、何だか違和感がある。思ってたより痛くない……っていうか
何か柔らかい……?
「マスター、大丈夫ですか?」
「カ……KAITO!?」
KAITOは私の身体の下敷きになる形で庇ってくれていた。
「ちょっ……KAITOこそ大丈夫なの!?私、重かったでしょ!?」
「……はい、実はちょっと。マスター、もしかして太りました?」
「なっ……!?」
KAITOの奴、人が気にしてる事を……!
「ふふっ、嘘ですよ。マスターって本当、分かりやすい人ですね。」
「……KAITO~~~……。」
KAITOはクスクスと笑う。意地悪な時のKAITOだ。
「……あ……?マスター……。」
「何よ。」
「何処か痛むんですか?」
「何で。」
「だって……マスター、泣いてる。」
「えっ!?いや……これは、その……そう!雪よ!
雪が目に入ったの!!」
「雪?あぁ……そうですか。」
我ながら苦しい言い訳をしたが、KAITOは納得したようだった。これ以上
突っ込まれたくもないので、私は別の話題を振る事にした。
「と、所で!KAITOは何でこんな所に居るの?」
「え?あ、雪が降ってきたのでマスターを学校まで迎えに行ってたんです。
朝、雪の事をマスターに伝えそびれちゃったから。マスター
傘持って行ってないなーって。」
「えっ?KAITO、学校に来てたの?全然知らなかった。」
「はい。どうやら僕はマスターが学校を出た後に着いたみたいです。
入れ違いになっちゃいましたね。」
KAITOの無邪気な笑顔を見てると、何だか気が抜けてくる。
いつもの優しいKAITOだ。
「あ~、良かった……。いつものKAITOだ。」
「えっ?」
「いや……KAITO、最近私に隠れて何かやってるでしょ?
だから何か避けられてる感じがしてさぁ……。」
「……!!」
KAITOは突然私に詰め寄ってきた。
「ち、違うんです!マスター!誤解です!」
「わ、な……何?」
「マスターを避けてた訳じゃないんです!実は……!」
そう言いながらKAITOは持っていた紙袋から何か取り出した。
「それ……マフラー?」
KAITOが手に持っていたのは、KAITOのトレードマークと同じの
青色のマフラーだった。
「これ……マスターにあげようと思って……。
内緒で編んでたんです。ミクにやり方教えてもらって……。」
「あ……じゃあ、出掛けてたのって……?」
「はい……。ごめんなさい、マスター。始めからちゃんと
理由を話しておけば良かったですね。」
「え……あ、いや……別にいいの。私が勘違いしただけだし……。」
「でも……マスターに不安な思いをさせてしまいました。
ごめんなさい、本当にごめんなさい……。
僕はVOCALOID失格です……。」
今度はKAITOの方が泣きそうだ。KAITOは変な所で子供っぽい。
「ちょ、ちょっと!泣かないでよ!ほら、マフラーするから!」
私はKAITOからマフラーを引っ手繰ると、首に巻いた。
「あ……温かい。」
「ほ、本当ですか!?良かった!!」
途端にKAITOは満面の笑顔になった。……KAITOも結構分かりやすい。
「KAITO……何で私にマフラーを?」
「えっ?何言ってるんですか、マスター。明日はマスターの
十六歳の誕生日じゃないですか!」
「……へ?」
誕生日……。あぁ、そういえば……。
「去年は市販の文房具だったでしょう?この前、リンやミクに会った時に
その事を話したらものすごく怒られて……。だから今年は手作りで何か
プレゼントしたいなって……。」
う~ん、私は別に気にしなかったけどなぁ。
「そっか。……ありがと、KAITO。大事にするね!」
「あ……は、はい!」
やっぱり、KAITOは優しい。
私とKAITOは並んで歩き出した。
「あ、そーだ!KAITO、今日はスーパーでアイスが特売だったから
いっぱい買ったんだよ!」
「え!本当ですか!?やった~!!
あ、じゃあじゃあ、明日のマスターの誕生会はアイスとケーキの
コラボで決まりですねっ!」
「そ、そうだね……。」
KAITO、アイスが食べ放題で本当に嬉しいみたい。
きっと、このマフラーを編んでる間は我慢してたんだよね。
「ありがとう、KAITO……大好き。」
私はKAITOに聞こえないように、そっと呟いた。
「……あ、マスター。」
「ん?なぁに?」
「明日は食べ過ぎないようにした方がいいですよ。
でないと、また太っちゃいますよ~?」
KAITOがまたクスクスと笑った。
「……………。」
前言撤回。KAITOはやっぱり……意地悪だ。
第一話「青色の絆」 完
アイ・ストーリー 第一話の続きの続き
アイ・ストーリー 第一話「青色の絆」一先ず完成です!
しかし自分で考えておきながら……これは長いなと思った。
多分、いや、絶対読みづらい+分かりづらい(謝)。本当ごめんなさい!
第二話はまだ考え中……。ですが、簡単に予告しておくと
『メンテナンスの為、KAITOと美冬は奏が勤める研究所を訪れる。
MEIKOやミクといったお馴染みの面々の中、其処には
何故かリンの姿だけが無く……!?』
と、こんな感じの話になる予定です。後、KAITO視点の文章になるかな。
では、お楽しみに!←初メッセージを頂いて浮かれてる(笑)。
追記:第一話本編・番外編→完成。
第二話本編・番外編→完成。
Lied→一応、完成。
コメント7
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ご意見・ご感想
氷雨=*Fortuna†
その他
エドリックさん、感想ありがとうございます!
萌えて頂けて、嬉しいです(笑)!
文章……上手ですか?……お褒めの言葉、感謝ですっ!><
そうですよね、私は優しいKAITO『も』大好きですっ♪(プロフィール参照)
ブクマもありがとうございます!
2009/05/06 02:42:00
氷雨=*Fortuna†
その他
かごめちゃんさん(笑)、感想ありがとうございます!
痛い妄想にお褒めの言葉を……!!感謝ですっ!><
尊敬される程の事では……好き勝手に書いているだけですから(照)。
でも、嬉しいです!!ありがとうございました!(>∀<)ノシ
2009/04/27 22:21:26
かごめん
ご意見・ご感想
とっても素敵なお話ですね^^
頭の中に情景が浮かんで、とても微笑ましいです!
私は小説がかけないので尊敬してしまいます。
読み進めるのが楽しみです!
2009/04/27 21:45:13
氷雨=*Fortuna†
その他
神楽さん、感想ありがとうございます!
実は次の日のKAITOは合計、◯十個のアイスを食してもへっちゃらだった……
なんて、オチだったり(笑)。
アイ・ストーリーで色々妄想してくださって、嬉しいです。(>∀<)ノシ
2009/04/25 20:00:48