4月15日

 程よい風で学園内外のソメイヨシノの花びらが舞っている。そろそろ桜花の季節も終わりのようだ。
 女子だけの特別授業が終わって、ハク先生が数名の生徒に囲まれお喋りをしている。ネルはといえば、終わるや否や窓を開けてケータイのカメラを起動していた。男子がグラウンドでサッカーをしていたのだ。
 1年・2年次のホームルームはそれぞれ3階・2階で、お目当ての男子を見るにも頭部ばかりだったが、3年の教室は1階なので、横顔も正面からのショットも思いのままだ。
 ネルのお目当てはもちろんレン。ただ、レンは少々すばしこい。ケータイカメラくらいでは、なかなかフォーカスが決まらないのだ。レンの動きに時めきと苛立ちを同時に覚えるネルだった。
「あ、パスもらった。そこで止まって!」
リクエスト通りに行くはずがない。
「こっちに向かってくる!お願い、顔を上げて!」
カメラ目線になる余裕などあるはずもない。というか、ネルがケータイカメラで狙っていることなど知る由もない。
挙げ句、
「きゃー、シュートしたー!」
シャッターを忘れて見入ってしまっては、カメラに収まるはずもなかった。

「わっ」
「きゃっ」
誰かに驚かされ、拍子にケータイを落としそうになった。
「なっ、なに、…リンか。びっくりさせないでよ、もう」
「撮れましたか~♪」
いたずらっぽい笑顔で尋ねるリン。
「べ、別に何も」
取り繕うネル。
「ケータイくらいじゃダメなんだよね~、あんなにちゃかちゃか動かれるとさ」
「と、撮ったことあんの?」
「我が弟ですからね~、なんぼでも」
あくまでもいたずらっぽい。
「れ、レン君が動いているとき?」
「ううん。寝顔とか」
「ね、寝顔…」
ネルは一瞬のうちにあらぬ想像をしてしまい、赤面してしまった。その表情を盗み見、こみ上げる笑いの感情を必死に押し殺しながらリンは話を続ける。
「ところでさ。前に、例の曲のダウンロードの話したじゃん」
「あ、ああ、あれ」
ネルは動揺を抑えるのに必死。
「したから。ダウンロード」
カードメモリを差し出すリン。
「この中に入っているから。カードは明日でいいよ」
「え?あ、ああ、ありがと」
リンはネルに笑顔を見せるとネルもとを離れ、サイとメテを捕まえてお喋りを始めた。一方のネルはメモリを半ば呆然と見つめていた。「あらぬ想像」は、よっぽど「あらぬ」ものだったに違いない。
 窓から花びらが一枚舞い込んできて、メモリを持つネルの手に偶々収まったが、そのときネルは気づかなかった。

 帰宅したネルは、メモリをパソコンに入れた。ところが音楽ファイルは入っておらず、代わりに画像ファイルがひとつあるだけだった。怪訝に思いながらもファイルを開く。
「…!!」
 それからのネルの行動は速かった。
 まず、名刺サイズでその画像を2枚プリントアウト。一枚は生徒手帳用、もう一枚は机上のフォトスタンド用。次に、A4サイズを一枚。机の抽出の中に。最後に拡大印刷のソフトを起動し、A2の大きさで印刷。ネルのプリンタはA4サイズ用なので、A2だと4枚に分割されて印刷される。その4枚を丁寧につなぎ合わせて、ポスターの完成。そのポスターを、ベッドで横臥した時に真正面に来るように貼った。

 間もなく日付が変わる時刻。
 パジャマに着替え、明日の準備も全て済ませて、ベッドの布団に潜り込む。壁にはポスター。
「寝顔…」
 昼間と同じ想像をしてしまい、同じく赤面したネルだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説 桜ファンタジア】 オトメゴコロに愛の手を

桜ファンタジア制作委員会というのがあって。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=nxq2li06a3xwwxam

そこに参加してるんですけど、
流れで小説?を書いてみたりしました。
日記形式になっています。リンレンが卒業したら、このシリーズは終了予定。
終了するのかな(^▽^;)

桜ファンタジアの設定資料です。小説の前にご一読いただくと嬉しいです(^^)
http://piapro.jp/a/content/?id=h3yv7v4kqyo0w4zl

第一弾はコチラ。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=psy4l7int2vczb3o
第二弾。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=kymckf21vtqdghnb
第三弾。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=vyk2aoxjsrbwln5p
お暇でしたらば笑って読んでやってください <(_ _)>

閲覧数:348

投稿日:2008/03/08 22:19:44

文字数:1,442文字

カテゴリ:小説

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