閉ざされた部屋の人形 愛しい貴方の帰りを待つ
薄暗い部屋の中で 扉が開く瞬間を待つ
閉ざされた部屋の人形 なれど愛しい貴方は
薄暗い部屋に明かりを灯し 生きている人とキスをする

私は人形 ただの操り人形
目の前の光景に ただ唇を噛み締めた

閉ざされた部屋の人形 愛しい貴方の腕の中
気がつけば部屋の中には 生きている人の姿はなく
閉ざされた部屋の人形 瞳伏せて貴方は
生きている人の帰る日を 私を抱いて待ち続けた

私は人形 一人では動けぬ人形
何故に戻らないのか? 生きている人を待ちわびつつ
私を腕に抱いたまま 愛しい貴方の涙が零れる

ある日彼女はやってきた 年老いた老婆
愛しい貴方がいないうちに 人形の私に魔法をかけた
「戻らないのならば お前が奪っておしまい」
私は力を得た 一人でも動ける力を

けれど私は動かなかった 動けるはずの人形
年老いた老婆はいぶかしみ 人形の私に問い掛ける
「何故に動こうとしない? お前ならできるのに」
私はただ微笑んだ そしてこう呟いた

「奪ってしまってどうするのです?
 あの人は生きている人を待ち続けています
 私はその人の代わりになどなれません
 私では 愛しい人を幸せになど出来ません」

例え動けてもそれは人形でしかなく
愛しい人の求める人には 決してなれるはずもなく

「それならばこうしよう 動こうとしない人形よ
 桜の花が散り終える頃 再びここに訪れよう
 その頃までにもし 生きている人が戻らぬのなら
 そのときこそは魔法をかけて お前を人間にしてあげよう
 そのときこそは奪っておしまい お前が愛したその人を」

年老いた老婆の誘惑に 人形は静かに頷いた
それでも動かぬ人形は 老婆の去ったそのあとに
閉ざされた部屋の中の人形は 一言ぽつりと呟いた

「あぁ願わくば そうなりませぬよう
 私自身の幸せよりも 愛するあの人の幸せを」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【曲募集中!】童話

閲覧数:75

投稿日:2009/05/23 02:13:33

文字数:802文字

カテゴリ:歌詞

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