私はいつものように病院を抜け出した。
・・・・もう、ここから生きて出られないのかもしれない。私はそう考えていた。もしかしたら、収容所に着く前に、あなたに会う前に、私はもう何も感じなくなるのかもしれない。でも、それなら・・・・。パパの言うことを聞くわけじゃない。でも、最後にあなたに心配だけはかけたくないから・・・・。
青い青い、いつもと同じ空の下を歩く。もうこれも最後なのかなぁ・・・・。
収容所は、いつもと同じで暗い。柵の向こうに彼の姿が見えた。私が小さく手を振って、少し笑う。彼も小さく手を振って、少し笑う。
私は紙飛行機を飛ばした。彼はそれを受け取った。私は大きく息を吸って、口を開いた。いつもと違って、声を出して。
「・・・・遠くに行くのよ、だからバイバイ」
涙が出そうだ。彼の顔をまともに見れない。だってもう、涙は見せれない。
頭が真っ白になった。君の言葉だけが、苦しい言葉だけが、頭に残ってガンガン響く。のどの奥がアツくなって、痛い。僕はどうしようもなく、馬鹿みたいにその場に突っ立っていた。
「・・・・バイバイ・・・・」
彼女は向きを変えて、立ち去ろうとした。彼女を止めようとは思わなかった。彼女が“遠くへ行く”のを止めようとは思わなかった。これが正しいのだ。ただ、“さよなら”は言いたくなかった。僕はやっと言葉を発した。
「待つよ!いつまでも待ってるよ。・・・・君が来る、その日まで。手紙も大事に無くさずにいたら、また、逢えます・・・・よね・・・・?」
精一杯だった。今の僕が言える、精一杯だった。君は僕の言葉を、背中を向けたまま聞いていた。――聞き流していたのかもしれない。
君がどんな表情で、僕の言葉を聴いていたのか分からない。でも、あのとき、君の体が震えていたのを僕は知っている。
君は何も言わずに、走り去った。いつものように、君の姿が見えなくなるまで背中を目で追った。角を曲がり、淡いピンクのワンピースが見えなくなった。その瞬間、膝に力が入らなくなった。
ゴツゴツした石の混ざった黄土の地面に、手足をつく。我慢していた涙は、止めどなく溢れ出てきた。ズボンのポケットから、あのときのハンカチが出てきた。余計に涙が止まらない。
いつかこんなことになるのは、分かっていた。分かっていたはずだった。なのに涙が止まらないんだ・・・・。どんなに苦しくても、悲しくても、ずっとずっと涙だけは我慢できたのに、今はもう無理だ。苦しい、苦しい、苦しい。悲しくて、体がバラバラになってしまいそうだ。
少しだけ見えていた光が、プツンと消えた。ただ、それだけのことだ。元々少ししかなかった光が消えたって、大した差じゃないはずなのに、僕の中でそれは、大きな差になってしまった。勝手に僕が、馬鹿なことを夢見ちゃったから、眼から流れるアツいモノが止まらない。止まらない、止まらない。どうしようもない。これほど泣いた日はない――・・・・。
あの時殴られた傷より、あの時蹴られたあざより、あの時失ったものより、ずっとずっと苦しい。痛い。君がいれば、どんなことでも我慢することが出来たのに。どんなに苦しいことも、笑顔に変えられる気がしたんだ。なのに、君がいなくなってしまったら、僕が存在する意味がなくなってしまうよ・・・・。
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